自動物流道路、27年度までに実験開始へ★続報

自動物流道路、27年度までに実験開始へ★続報

岸田首相が中間取りまとめ受け関係閣僚会議で表明、30年代半ばまでの運用スタートも

国土交通省は7月25日、既存の道路インフラを活用し、自動で荷物を輸送する「自動物流道路」の実現に向け、必要な機能や克服すべき課題などを議論する有識者らの検討会(座長・羽藤英二東京大学大学院工学系研究科教授)が策定した中間取りまとめを公表した。

トラックドライバー不足などの課題克服のため、10年度をめどに実現を目指す方針をあらためて表明。「人手不足解消の観点から最も効果的と考えられる区間として、長距離幹線輸送での設定を検討すべきである」と指摘し、具体的には物流量が最も多く大動脈の東京~大阪間での設定を念頭に、関係者間で議論をしていくよう提案した。

併せて、まず先行ルートで運用を開始、徐々に延長する段階的な運用開始も含めて検討するよう言及。その際は「大都市近郊の特に渋滞が発生する区間から構築すべきだ」と強調した。

また、実用化の前提として、実験線を早期に整備し、技術やオペレーションの検証を進めるよう要請。新東名高速道路の建設中区間(新秦野~新御殿場)を活用、することなどを検討するよう提案した。

政府が同日、首相官邸で開催した「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で、岸田文雄首相は自動物流道路について、2027年度までに実験線で実験を開始し、30年代半ばまでに第1期区間で運用を始める方針を表明。他のドローン物流などと合わせて「こうした革新的取り組みに官民連携で体系的に取り組んでいく」との決意を示した。


自動物流道路のイメージ(関係閣僚会議の資料より引用)


関係閣僚会議で発言する岸田首相。その右は斉藤鉄夫国土交通相(首相官邸ホームページより引用)

需要に応じて荷物送る「バッファリング機能」装備を想定

中間取りまとめは、自動物流道路について「道路空間を活用して専用空間が構築され、デジタル技術を活用して無人化・自動化された輸送手法により物流を担う新しい物流形態として、自動物流道路を構築することが必要」と説明。

「需要とマッチし、誰もが使いやすく・使いたくなる物流形態を実現し、これまで長年解決できなかった標準化やモーダルシフトなど、物流の課題解決につなげるきっかけとすべきである」と意義を訴えた。

機能として、24時間稼働するとともに、輸送と保管の両機能を統合し、荷物を一定程度溜めておいて需要に応じ順次荷物を送り出せる「バッファリング機能」を備えることを主張。

パレタイズされた荷物を積載できるようにし、自動荷役を可能にするため、幅1100×奥行き1100×厚さ144~150mmの土台(ベース)を使い、荷物を載せて運ぶことを主張。この土台には荷物管理用の IC タグやバーコードを装着できるようにすべきだとの見解を盛り込んだ。

また、鉄道や内航海運、航空など他の物流モードと円滑に接続、連結できるようにすることも必要と説明している。

具体的な荷物搬送の手法は、同様にカートが自動で荷物を輸送するシステムの構築を検討しているスイスの事例を引用し、今後検討を進めていくよう要請。道路の地下や中央分離帯などどの部分を活用するかについては、現段階では明言を避けている。

このほか、自動物流道路の運用には再生可能エネルギー由来の電力を使うなど、脱炭素化を推し進めることも列挙した。

(藤原秀行)

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