将来宇宙輸送システムが3Dプリンターで宇宙輸送機の推進薬タンク製造へ

将来宇宙輸送システムが3Dプリンターで宇宙輸送機の推進薬タンク製造へ

金属積層造形の世界最先端技術有する企業など3者と連携、開発速度向上を期待

将来宇宙輸送システムは7月30日、英国で3Dプリンター製造を手掛けるWAAM3D、WAAM(金属同士をつなげるアーク溶接の手法を応用し、溶接中に凝固した金属を積層していく手法)技術で世界的な知見を有する英国のクランフィールド大学、日本で金属AM(積層造形)に取り組んできた愛知産業の3社と7月19日に業務提携したと発表した。

4者は業務提携に伴い、3Dプリンターによる宇宙輸送機の推進薬タンクの製造を目指す。さらに、各社の知見を共有し、その他の部品や構造物についても製造の検討を進め、アジャイル型での開発を実現させたい考え。積層造形などの技術を駆使することで、より緻密な3D形状を造形できると見込む。


(左から)愛知産業・井上博貴社長、将来宇宙輸送システム・畑田康二郎社長兼CEO(最高経営責任者)、WAAM3D・フィロメノ・マルティナCEO


愛知産業での3Dプリンターによる製造の様子。提携に先んじて、将来宇宙輸送システムと愛知産業の2社で提携し、機体の後部構造のモックアップを製造した

3Dプリンターを利用することで製造期間を短縮し、速やかに製造・試験・修正などを繰り返すことが可能になるため、開発速度の向上が期待できるとみている。

加えて、3Dプリンターでは一体形成が可能なため、従来は部品ごとに形成し、別途組み立てする必要があったが、管理や組み立てといった面でも効率化できると見込む。さらには、自由度の高い造形によって最適形状を実現し、機能面の向上と同時に軽量化も実現できると想定している。

WAAM3Dはクランフィールド大学からスピンオフしたベンチャー。WAAM装置の自社開発に加え、製造のための素材づくりまで一貫したサービスを提供している。同社の技術は宇宙産業のほか、石油・ガス産業、鉱業など、幅広い産業で活用されているという。

クランフィールド大学はWAAM技術の世界的知見を有する研究機関で、金属AM研究に15年以上の実績がある。同大学の溶接・積層造形センターは、各種アーク溶接機だけでなく、複数のレーザー加工装置、造形中・造形後の応力コントロールや解析が可能な設備を有する世界最大規模の金属積層造形施設の1つで、材料開発、冷間加工、 先進プロセス、部分製造などの研究を行っている。業務提携では、同大学の研究活動の一環として、同大学の有する知見を推進薬タンクの製造に反映させる。

愛知産業は設立以来80年、技術商社として溶接・溶解・溶融の世界の最先端の技術を日本市場に紹介してきた。金属積層造形の技術においても国内でいち早く取り組み、装置の販売だけでなくジョブショップとしても日々装置を使用し経験を重ねている。

(藤原秀行)※いずれも将来宇宙輸送システム提供

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