【独自取材】オリックス・清田物流事業部長就任インタビュー(前編)

【独自取材】オリックス・清田物流事業部長就任インタビュー(前編)

「『健康促進』切り口に多様な人材が活躍できる施設を実現」

オリックスで物流施設開発を推進する物流事業部長に3月1日付で就任した清田(せいた)衛氏はこのほど、ロジビズ・オンラインのインタビューに応じた。

清田部長は物流業界の労働力不足解消にデベロッパーの立場から貢献していきたいとの抱負を述べた。その一環として、今年3月末に埼玉県松伏町で完成した「松伏ロジスティクスセンター」で打ち出した従業員の健康管理をサポートする新たな取り組みを軌道に乗せることに強い決意を見せるとともに、成果が挙がれば他の施設に展開していく可能性もあるとの見方を示した。インタビュー内容は2回に分けて紹介する。


インタビューに応じる清田部長

税理士事務所やコンサル会社といったネットワークも情報収集に活用

―まずはこれまでのキャリアを教えてください。

「1992年に入社して以来、ずっと不動産部門一筋です。93年から当社グループ第1号の分譲マンションを手掛けるなど、基本的には2005年くらいまで分譲マンションを担当してきました。06年以降は環境エネルギー本部で再生可能エネルギーの地熱発電を担ったりしました。物流施設に携わっているのは2年半ほどですが、開発に際してはこれまでの多様な経験を十分生かすことができていると思います」

―4月に埼玉県松伏町でお披露目された「松伏ロジスティクスセンター」は、御社で初めて従業員向けにフィットネス施設を導入したり、歩数や睡眠時間を記録できるウエアラブル端末とスマートフォンを活用した健康管理プログラムを無料で利用できるようにしたりと、現場で働く人たちの健康推進を重視したユニークな物流施設です。反応はいかがですか。

「メディアに取り上げていただいたこともあり、かなり反響はありました。企業が人集めのためにここまでやるのか、と受け止められた方も多かったようです」

―そもそもなぜ健康推進に焦点を当てたのですか。

「ここ2年くらい、物流企業を回っていると人が集まらないと悩まれている方が非常に多く、デベロッパーとしても課題に対応していく必要があると社内で議論を重ねてきました。どうすれば働く人のモチベーションが上がるかを考えた時、健康という切り口があるのではないかと気づき、チャレンジしてみました」

「日々の歩数管理など健康推進をお手伝いすることで、物流施設で多く勤められている女性に加え、シニア層の男性にも働く場として注目していただけると思いました。男性シニア層がパートタイマーとして従事できる場所は意外と少ないとの印象があります。仕事の前後に体を動かして気分転換ができる上に、コミュニティーづくりのきっかけにもなれば、多様な方々が活躍可能な施設を実現できるのではないか」

「もちろん、実際に設備などを本格的に使っていただくのはこれからです。トライアンドエラーを重ねて、どういう問題やご要望があるのか、そこをどうブラッシュアップしていくのか検討していきます。もしうまく行けば、成果を見極めた上で別の物流施設に展開したり、物流以外の施設に取り入れたりする可能性はあるでしょう」

―立地に関しても独自の視点があるようですね。

「幹線道路の国道16号にアクセスしやすいのが特徴です。物流施設と言えば高速道路のICに近いとのイメージが強いですが、運送事業者の中には一般道で都心にアクセスしたいとお考えになるところもあります。当社としてはIC近隣の開発だけにこだわらず、さまざまな選択肢を検討していきたいと思います」

―用地の獲得競争は激しさを増しています。事業環境もますます厳しくなっているのでは?

「確かに優れた用地を取得するのは非常に厳しいですが、当社は03年から物流施設を開発しています。大きく目立つ存在ではありませんが、物流業界でご存じの方には信頼をいただいています。3PL事業者、荷主企業、EC事業者とそれぞれの立場で物流施設に求められる機能が少しずつ異なってきますから、総合金融企業として有している全国の顧客ネットワークや税理士事務所、コンサルティング会社といった情報ルートを生かして多様なニーズに応えられる用地の取得に努めます」

「最近用地獲得の対象として注目されている市街化調整区域は行政との交渉をはじめ、開発に至るまでの難易度が高く、やりますよと言って簡単にできるものではありません。その分、当社は早い段階から市街化調整区域での開発を手掛け、行政の方々にも信頼いただいています。過去の実績が強みとなっています」

―かねて言われている建て替えニーズについてはどう展望していますか。

「18年度に当社が手掛けてきた物流施設を見ると、昨年7月に完成した『厚木Ⅱロジスティクスセンター』(神奈川県厚木市)や、今年10月の完成を予定している『小牧Ⅱロジスティクスセンター』(愛知県小牧市)はまさに建て替え案件です。お客さまのニーズを踏まえて古い建物の解体から当社が手掛け、用地をお借りして物流施設を開発するという手法は今後も力を入れていきたい」




「松伏ロジスティクスセンター」(上)に設けられたフィットネス設備(中)。他にも、ウエアラブル端末とスマートフォンを活用して従業員の健康管理を無償でサポートする仕組みを導入した(下) ※上の写真はオリックス提供。下の端末はイメージ

新規供給が需要を喚起する新たなステージに

―19年度の開発ペースはどう設定していますか。

「基本的には例年と変わらず着実に行こうと考えています。3大都市圏を中心にできれば年間3~4カ所程度の用地を確保したいですね」

―最近でも千葉県流山市で大型物流施設が複数棟建設されるなど、供給が盛んです。こうした現状をどうご覧になりますか。

「この2年くらい、新規供給が新たな需要を喚起する新たなステージに入ったんだなとつくづく思いますね。ECに関しても新たに物流施設を借りられるプレーヤーが出てきました。ECはまだまだ市場が伸びる余地がありますし、われわれデベロッパーにとって今後も絶対に無視できない存在です。EC事業者の方々が必要とされるようなスペックの施設開発を目指さなければいけません。従来多く手掛けてきた延べ床面積が1万坪程度の案件に加え、今後は2万坪、3万坪といったスケールのものにもチャレンジしていきたい。地域としては国道16号の内側がターゲットですね」

―圏央道周辺では物流施設の開発が集中した影響で空室率が上昇しました。テナント企業の獲得に苦労している施設もあると聞きます。御社としては開発対象エリアとなりますか。

「供給が大量にあった割には床が順調に消化されてきていると感じています。最近は取り扱う荷物の種類などに応じ、圏央道を含めて物流施設のエリアが明確にカテゴリー化されてきたのではないでしょうか。それに伴い賃料水準も主要エリアごとに異なってきています。当社としても圏央道沿線で良い物件があれば検討したいとは思っていますが、それぞれのエリアで前提条件となる賃料水準を大幅に超えてまで無理に用地を購入しに行くようなことは避けるべきでしょう」

(藤原秀行)

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