DeNAがAIやIot活用した商用車の交通事故削減支援サービス開始
インターネット関連サービス大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は6月4日、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した商用車向けの交通事故削減支援サービス「DRIVE CHART(ドライブチャート)」を同日始めたと発表した。
タクシーやトラックの運転席に、JVCケンウッドと共同開発した車内外を撮影する専用車載器を設置し、GPSや加速度センサー、画像認識技術を駆使してドライバーの動きから運転の特性を分析。運行管理者がドライバーへ効果的なアドバイスをできるよう後押しする仕組みだ。
初期費用は1台当たり5万円で、月額の使用料などは利用台数に応じて変動する。
東京都内で記者発表したDeNAオートモーティブ事業本部長を務める中島宏常務執行役員は「事故の9割はヒューマンエラーで起きており、ドライバーのミスを減らす抜本的対策が必要。“事故ゼロ社会”の実現に向けてわれわれができることはまだまだたくさんある」と強調。
将来は個人向けにもサービス展開を目指す考えを明らかにするとともに、昨今社会問題となっている高齢者の暴走事故抑制にも貢献したいとの姿勢を示した。併せて、タクシーやトラックの運送業界とも協力していくことに意欲をのぞかせた。
タクシーやトラックの運転席に取り付ける専用車載端末
ドライバーの目や鼻、あごの動きを画像認識、わき見など察知
新サービスは、運転と道路のそれぞれの現状を同時にチェックし、急ブレーキや急加速、あおり運転、速度超過などを行うとリアルタイムで検知。併せて、ドライバーの目や鼻、あごなどの動きも画像で随時チェックし、わき見などを察知する。めがねやマスクを付けていても表情を認識できるという。今後は居眠りを確認できる機能も追加する予定だ。
画像認識の様子。外向きカメラ(上)と内向きカメラで行う(DeNA提供)
ドライバーの目や鼻、あごなどの動きを画像認識する様子(DeNA公開動画)
撮影した危険運転の映像データはクラウド上に蓄積。運転データを基に個々のドライバーの問題点を指摘したリポートを作成できる。
中島氏は「リアルな映像を用いてコーチングし、運転行動の根本的な改善につなげられるため、既存のドライブレコーダーに見られる効果のリバウンドがない」と説明。将来は収集した運転のビッグデータの分析結果を交通の円滑化や道路補修、防犯といった面で活用、安全な街づくりに貢献していくことを視野に入れている。
DeNAが京王自動車(東京)や日立物流、首都圏物流(同)などの協力を得て、2018年4~10月に実証実験を行った結果、過去5年間の同時期の平均と比較すると、事故率がタクシー100台で25%、トラック500台では48%減ったという。中島氏は「全体では衝突回避自動ブレーキ(AEB)に匹敵する効果が見られた」と解説。事故に伴う車両修繕費用や賠償金もトータルの暫定値でタクシーは45%、トラックは90%の削減につながったとの見解を示した。
記者説明会後の記念撮影に応じる(左から)京王自動車の石井正己常務取締役運輸事業本部長、DeNA中島氏、神奈川県タクシー協会の伊藤宏会長、横浜市経済局の立石建成長戦略推進部長
(藤原秀行)