シンガポールの非営利団体などと実施、供給環境整備に期待
商船三井は9月18日、海運の脱炭素化を推進するシンガポールの非営利団体「Global Centre for Maritime Decarbonisation」(海運脱炭素化グローバルセンター、GCMD)、ノルウェーの肥料大手Yara International(ヤラ・インターナショナル)系のYara Clean Ammonia(ヤラ・クリーン・アンモニア、YCA)とともに、アンモニアを船から船へ移送する「Ship-To-Ship」(シップトゥーシップ、STS)の実証実験を9月13~14日に実施、成功したと発表した。
燃焼時にCO2を出さないアンモニアは次世代のクリーンエネルギーとして注目度が高まっており、船舶燃料としての利用も検討されている。洋上で船から船へアンモニアを移送するSTSは、燃料としてのアンモニアを供給船から船に補給する際のオペレーションと同じものになるという。
実証実験は、陸上から船にアンモニア燃料を供給するインフラが整っていない現状、STSによる燃料の補給が最も近い将来に実現する補給手段であることを念頭に行った。
今回の実証実験は、アンモニアの生産量が多く将来的にアンモニア燃料供給ハブとして期待されるオーストラリアのピルバラ地域のダンピア港沖で、商船三井のLPG(液化石油ガス)/アンモニア輸送船「Green Pioneer」(グリーン パイオニア)と、英国に本拠を置く液化ガス輸送会社Navigator Gas(ナビゲーター ガス)が保有するLPG/アンモニア輸送船「Navigator Global」(ナビゲーター グローバル)の間で2度にわたり、4000㎥のアンモニアを移送した。
STS実証実験を行った商船三井の「Green Pioneer」(右)とNavigator Gasの「Navigator Global」
重油やLNGなどでは既にSTSの実績を重ねているが、アンモニアでのSTS実績は例が少なく、重油やLNGの際とはリスクやオペレーションが異なることが課題だった。
トライアルに先立ち、Green Pioneerの用船者で、実証実験に投入するアンモニアを提供したYCAや他のプロジェクトパートナーとタッグを組み、GCMDのインパクトパートナーとして商船三井海技員がトライアル期間中に船上から技術的な指導を担うなど、一連のSTSを安全に実施するため、GCMDとYCAに加え、コンサルタント、STSサービスプロバイダー、港湾当局、オーストラリア政府機関と協議を繰り返し実施。トライアルの安全な完了にこぎ着けた。
商船三井とYCAは2022年、アンモニアを含む脱炭素事業に関する覚書を締結、協業を進めてきた。今回の実証実験もその一環。
今回の実証実験は、GCMDが主導しパートナーと協力の上進めている、船舶燃料としてアンモニアを使用する取り組みの一つ。GCMDが23年に発表したアンモニアバンカリング実証実験と運用計画に関する安全性研究の結果に基づいて、リスクと安全性の研究を行い、STSに対する緊急対応手順を開発した。
STS実証実験参加企業による集合写真(ダンピア港沖)
(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用