ANA、人手不足考慮しグラハン部門にVR訓練シミュレーター導入

ANA、人手不足考慮しグラハン部門にVR訓練シミュレーター導入

業務効率向上、全国共通した訓練環境実現見込む

全日本空輸(ANA)は10月4日、VR(仮想現実)訓練シミュレーター「∀TRAS(アトラス)」を、ANAが就航している全国内空港のグランドハンドリング部門向け訓練に順次採用すると発表した。

まず羽田に導入し、その後は全国の空港に順次取り入れていく予定。

「∀TRAS」はANA Training Systemの略称で、ANAが現実と仮想空間を融合するクロスリアリティー(XR)コンテンツ制作の積木製作と開発した訓練シミュレーター。

VRで再現した空港内でグランドハンドリングに関わる業務を訓練できる。ANAの運航に携わるグランドハンドリング部門スタッフを育成する上で必要不可欠な訓練の一部を占める「プッシュバック/トーイング」「パッセンジャーボーディングブリッジ」「防除雪氷」「特殊車両走行」の4種類のコンテンツを搭載している。

これまでの訓練は習得の過程で「空港によって実際に実機・実車に触れられる時間にばらつきがあり、車両の取り扱い操作に慣れるまでに時間を要する」との課題を抱えていた。

「∀TRAS」を活用すれば充分な訓練時間を確保し、車両特性の理解促進や不安全な状況の模擬体験など、スタッフの習熟度を高め、対応能力、危険予知能力のさらなる向上につなげられるとみている。

また、これまでの訓練の一部をVRシミュレーターに置き換えることにより、実機の使用はなくなり、訓練補助要員を減らせる上、時間の制約も緩和できると想定。

訓練効率が向上し、人材育成の迅速化と訓練稼働時間の短縮が可能になると見込む。

例えば、「プッシュバック/トーイング」訓練では、従来、1回の訓練において4人(①教官②訓練生③訓練補助者2人)が必要だった。「∀TRAS」導入により半分の2人(①教官②訓練生)で実施できるようになる。

航空機、資器材の有無や天候にも左右されないことから、訓練環境整備のための予備日の設定も不要となるなど、訓練期間の短縮や訓練の調整の効率化を図ることができると期待している。

「∀TRAS」の代表的な機能
・各シナリオ選択 :「プッ シュバック / トーイング」「パッセンジャーボーディングブリッジ」「防除雪氷」「特殊車両走行」
・空港選択:「羽田空港」「那覇空港」「中部国際空港」「松山空港」 ※順次、全国の空港情報も搭載
・時間帯、天候選択 :(時間と天候は自由に組み合わせが可能)「昼」「夜」「晴天」「雨天」「曇天」「雪」
・機体選択 :「ボーイング 737,767,777,787」「エアバス 320,321,380」等、運航機種全て
・イベント発生機能 :不具合や不測の事態を強制的に発生させる機能
・採点機能 :経路や各シナリオにおけるチェックポイントに対して採点する採点機能

全国共通となる訓練環境を提供することで教育環境を向上させ、グランドハンドリング業界全体の人材不足解消を目指す。

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事