独自の冷凍保管サービスで物流市場に参入
物流施設をはじめとした不動産開発を手掛ける霞ヶ関キャピタルが低温物流市場に参入する。物流子会社にあたるX NETWORKが主体となり、「COLD X NETWORK」と名付けた新たな冷凍保管サービスを開始する。1パレット1日単位の従量課金制で冷凍貨物を自動倉庫に保管。さらには冷凍自動倉庫を全国に展開して、荷主企業に在庫配置の最適化を提案する。
冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」
1パレット1日単位の従量課金制
霞ヶ関キャピタルは9月30日、関越自動車道所沢ICから約3キロメートルの埼玉県三芳町に「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」を竣工した。1階に5℃の入出庫エリアと仮置き用の冷凍庫、2階から上にマイナス25℃のパレット専用冷凍自動倉庫(収容能力4190パレット)を据えた低温物流センターだ。
入出庫エリアと上層階の自動倉庫を垂直・水平搬送機で結び、冷凍エリアを完全無人化した。パレット積み貨物を冷凍自動倉庫専用パレットに載せ換える「パレットチェンジャー」も導入。フォークリフトでトラックバースと入出庫ステーション間を搬送するだけで入出庫作業が完了する。
霞ヶ関キャピタルが開発した冷凍自動倉庫は24時間稼働可能で、パレット規格に適合する製品であれば保管ができる。出荷特性に基づき常にパレットの配置を最適化することで高い処理能力を実現し、省人化を徹底した庫内オペレーションを組み立てた。
同社は2023年11月に、DXの知見を待つSREホールディングスと合弁で物流事業会社のX NETWORK(クロスネットワーク)を設立した。クロスネットワークは「所沢Ⅰ」の稼働を機に、新たな冷凍保管サービス「COLD X NETWORK(コールド・クロス・ネットワーク)」をローンチする。
まず11月中旬から、「所沢Ⅰ」の冷凍自動倉庫のスペースを一定の期間にわたり決まったパレット枚数分だけ確保する賃貸型サービスを開始する。既に収容能力の約半分にあたる2000パレット分は、SBSグループのSBSゼンツウから寄託を受ける予定だ。また、SBSゼンツウは同施設全体のオペレーションをクロスネットワークから請け負う。
続いて来年1月には従量課金制の冷凍保管サービスを開始する。冷凍貨物を1日単位、1パレットから自動倉庫に保管する。冷凍食品を扱う新規事業の立ち上げや繁忙期の一時保管、既存施設の移転・建て替えなどに伴うスポット利用を想定している。
パレット貨物の入出庫だけでなく、ケース単位の出荷や方面別の仕分けにも対応する。ケース出荷や仕分けの指示が入ると、自動倉庫が対象のパレットを掃き出し、ピッキングステーションに搬送。そこから庫内作業者が必要なケースを取り出し、残りを自動倉庫に戻す。将来はインターネット通販などのピース出荷にも対応していく方針だ。
「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」のオフィスフロア。
物流ビジネスのイメージを刷新することを目指した
霞ヶ関キャピタルは現在、コールド・クロス・ネットワークのサービス拠点として、「所沢Ⅰ」と同様の冷凍自動倉庫を備えた倉庫を、神奈川県川崎市(東扇島)2カ所、埼玉県越谷市、静岡県袋井市、名古屋市、大阪市(南港)、神戸市の計7カ所(予定含む)で開発している。今後、他の地域にも展開していく計画だ。
冷凍自動倉庫を広域に多拠点展開することで、荷主に在庫配置の最適化を提案する。消費地に冷凍倉庫の空きがない場合に一部の在庫を余裕がある地方の倉庫に一時的に仮置きしたり、あるいは地方の工場で生産した製品を、保管費が割安な現地の倉庫にぎりぎりまで置いておくなど柔軟な運用が可能になる。
庫内のスペースの予約や入出荷指示、在庫状況の確認などの管理業務はすべて専用サイト上の操作で完結する。今後は同システムを個別の倉庫管理だけでなく、必要な時に必要なだけ冷凍保管スペースを利用できるオンデマンドプラットフォームに育てていく考えだ。
冷凍倉庫の需給は慢性的にひっ迫している。スペースを確保するため、荷主はしらみつぶしに冷凍倉庫会社に電話をして空きを確認しているが、それでも条件に合う倉庫が見つかるとは限らない。そうした低温物流市場の現状を霞ヶ関キャピタルは社会課題と位置付け、独自のアプローチで解決を図っている。
冷凍倉庫を全国展開して在庫配分の最適化を提案
Interview クロスネットワーク 宮越 孝 取締役本部長
宮越氏
──親会社の霞ヶ関キャピタルが猛スピードで低温物流施設の開発を進めています。
「コールド・クロス・ネットワークの営業拠点として利用する施設だけでも、現時点で所沢に加えて7カ所の開発が決まっています。他にも条件に合う土地があればすぐに取得して開発を進めていく考えです。冷凍倉庫は今、圧倒的に不足しています。われわれが先駆者となって新しい施設をどんどん作り、多くの企業に当社のサービスを広く使っていただくことで、この現状を解消していきたいと考えています」
──不動産デベロッパーが物流市場に参入するのは異例です。
「確かに誰もやっていません。それをスピード感をもってやろうというのが霞ヶ関キャピタルのベンチャースピリットです」
──これまでの経歴は。
「国内及び外資の大手ECやコンビニ、ロボット開発企業などに携わり、ずっと物流に関わってきました。繁忙期に冷凍倉庫の庫内作業に駆り出されたこともあります。マイナス25℃の庫内で15分も作業をしていると、防寒着を着ているので体には汗をかいても、手の感覚はなくなっていきます。30分も経つと息もできないくらいしんどくなる。そんな過酷な現場の労働環境を変えたい。マイナス25℃の世界は全て自動化したいと考えて、当社に参画しました」
──単独施設の開発ではなく、冷凍倉庫を多拠点展開する狙いは。
「在庫の平準化です。消費の多い都市部において、冷凍倉庫は常に一杯です。新設するにも物流用地は限られているし、そう簡単には需要に追いつかない。一方で地方の冷凍倉庫には余裕があります。そこで当社が各地の冷凍倉庫をネットワーク化して、都市部の在庫を地方に移して全体を平準化する。それによって都市部でも常に在庫を受け入れられる環境を作りたい」
──クロスネットワークの設立にあたり、合弁事業の相手として、物流系の会社ではなくSREホールディングスを選んだのはなぜですか。
「SREにはお客さまとの接点となるサービスサイトの開発を担当してもらっています。物流の知見よりもむしろUI/UXのデザインやAI活用が問われるところです。複数のベンダーと話をしましたが、特にアイデアや創造性が優れていると感じたSREをパートナーとして選ばせていただきました」
「SREに出資してもらい合弁会社を作ったように、われわれは輸配送についてもパートナーを求めています。拠点間の幹線輸送と集配の二つのネットワークが必要です。既にいくつかお声掛けもいただいていますが、世界観やスピード感など、当社と親和性のある会社と一緒にやっていきたいと考えています」
お問い合わせ先
霞ヶ関キャピタル株式会社
https://kasumigaseki.co.jp/ COLD X NETWORK 公式HP
https://x-network.co.jp/ 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3丁目2番1号
霞が関コモンゲート 西館22 階
TEL:03-5510-7654
MAIL:Logistics_pr@kasumigaseki.co.jp