山梨県が幅広い分野で新事業の創出や成長・飛躍支援する「共創プラットフォーム」開始、物流にも期待

山梨県が幅広い分野で新事業の創出や成長・飛躍支援する「共創プラットフォーム」開始、物流にも期待

知事「イノベーション・エコシステム構築目指す」

山梨県は9月25日、スタートアップに限定せず、幅広い分野で新事業の創出や成長・飛躍を支援する新たな取り組み「事業共創プラットフォーム TRY! YAMANASHI!」を立ち上げたと発表した。

県はこれまで、有望な先端技術やサービスを持つスタートアップを支援する「TRY! YAMANASHI!実証実験サポート事業」を展開。43社を対象に採択し、実証実験のフィールド提供などに注力してきた。

さらに、スタートアップ以外の企業なども支援対象に広げ、地域課題の解決に挑んでいる人たちを応援していくことで、県の発展にもつなげていくことを目指し、新たな取り組みをスタートさせることにした。

県は同日、富士河口湖町の施設「アミューズヴィレッジ」で、新たな取り組みの意義や狙いをアピールするキックオフイベントを開催、本格的に背策をスタートさせた。 2024年度にまず、ロールモデルとなる新事業数件を創出することを目指している。

様々な企業の進出や関係者の連携強化を後押しし、25年度以降に県を「新たな事業が次々と生まれる『挑戦に近い山梨』」として定着させていきたい考えだ。これまでの「TRY! YAMANASHI!実証実験サポート事業」では、物流関係のスタートアップも採択されており、「事業共創プラットフォーム TRY! YAMANASHI!」でも物流領域の人手不足などの解決に資する取り組みの実用化につながることが期待できそうだ。


キックオフイベントに参加した関係者

県はリニア中央新幹線の開通を前に、「最先端技術で未来を創るオープンプラットフォーム山梨」を理想に掲げ、「TRY! YAMANASHI!実証実験サポート事業」を実施。採択企業に最大750万円の補助金を交付するとともに、実証実験が可能な場所や機会を提供するなど支援してきた。

同事業は24年で7期目を迎え、これまでに応募総数は306件に上った。物流関係ではドローンなどの先進技術を取り入れ、地方の物流ネットワーク維持を図っているエアロネクストや、配達依頼のマッチングアプリを活用した買い物代行を担うエニキャリなどが名を連ねている。

24年9月~25年2月が実証期間となっている第7期でも、農場に設置したセンターやカメラで集めたデータを生かし、農産物の収穫量を精緻に予測、出荷量を見込んで物流効率化につなげることを目指しているAGRIST(アグリスト、宮崎県新富町)が選ばれている。

「事業共創プラットフォーム TRY! YAMANASHI!」は、スタートアップやものづくりの領域だけに軸足を置かず、幅広い領域をカバー。様々なステークホルダーが組織の枠を超え、分野を横断して支援する体制を構築する。

新規事業の相談は随時受け付け、事業内容に応じて支援方針を検討、事業をブラッシュアップしていくことを狙う。選考を通過した挑戦者は月1回開催のイベントでピッチ(ショートプレゼンテーション)を行い、支援者と共創していくことを想定している。


「事業共創プラットフォーム TRY! YAMANASHI!」のイメージ

キックオフイベントに登壇した長崎幸太郎知事は、「TRY! YAMANASHI!実証実験サポート事業」の成果を強調した上で「この取り組みをさらに進化させ、スタートアップや『ものづくり』といった枠組みにとらわれず、本県を支えるあらゆる挑戦を支援する」と宣言。「本プラットフォームを通じて挑戦者と支援者の皆様がつながることで、山梨から新たな価値を生み出し続けるイノベーション・エコシステムの構築を目指していく」と抱負を語った。


登壇した長崎知事

ゲストとして、21年に料理人コンテスト「RED U-35 2021」でグランプリ(RED EGG)を受賞し、国内外の有名レストランで活躍した後、忍野村でレストラン「nôtori」を運営するシェフの堀内浩平氏、兄でソムリエの堀内茂一郎氏、障害のある人がともに働き価値を生み出せる社会を目指して様々な事業を手掛けているKEIPE(ケイプ)の赤池侑馬代表取締役が参加。山梨県には若者のチャレンジを応援する文化があり、新事業を始めやすい環境が整っているなどと語り、新たな事業のスタートを働き掛けた。


トークイベントの様子

県はキックオフイベントに併せて、県内の新事業に関するメディアツアーも開催。エアロネクストは小菅村で展開している、ドローンなどを生かした新スマート物流「SkyHub」(スカイハブ)のオペレーションを公開した。同社は注文した商品がドローンで届いた際、従来のように人を配置せず、注文者が直接商品を受け取る「置き配」に移行し、物流の効率化を図っている点などを紹介した。

また、キックオフイベントの会場にもなった独自の施設「アミューズヴィレッジ」内に、多様なバックグラウンドを持つ人が交流、新たなアイデアを生み出せるよう工夫しているスペースが備わっている点などを公開。今年6月に西湖でオープンした複合型レストラン「Restaurant SAI」で、県の素材の味わいを引き出す独自のメニューを出していることも発表された。

(藤原秀行)※写真はいずれも山梨県提供

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