三菱地所リアルエステートとニッセイ基礎研が共同調査、物流施設の選択ではBCP対応や従業員の健康配慮など重視
三菱地所リアルエステートサービスとニッセイ基礎研究所は11月27日、企業の物流戦略と物流施設利用状況に関するアンケート調査結果を公表した。
調査期間:2024年7~9月
調査対象:日本国内の主要荷主企業および物流企業4,486社
調査方法:郵送・emailによる調査票の送付・回収
有効回答数:234社
「物流施設の配置方針」について質問したところ、「各都市圏に配置」との回答が最も多く、「各地域(都道府県よりも小さい単位)」が続いた。
両社は、多くの企業は大都市圏ごとに物流施設を配置している一方、全国でビジネスを展開している大手物流企業や、製造業および小売業の物流機能の一部を担っている商社・卸売業などは、きめ細やかな物流サービスを実現するため、地域ごとに物流施設を配置していると分析している。
「物流施設(拠点)数の方針」に関しては、、「物流拠点の数は現状維持」が最多で、「物流拠点の数を増やす」、「物流拠点の数を減らす」の順に多かった。特に、物流企業は拠点数を「増やす(45%)」が「減らす(4%)」を大幅に上回った。
インターネット通販市場の拡大などに伴い、物流需要が堅調に推移していることを受けて、物流企業は物流拠点を拡大(増加)する意向が強いことがあらためてうかがえた。
荷主企業に対して「物流業務における主な課題」を尋ねた結果、「コスト削減のための在庫圧縮」がトップ。「トラックドライバーの確保」「輸送・配送時間の短縮」「倉庫内作業(包装・仕分け)人員の確保」「物流施設の自動化への対応」「働き方改革の推進」も目立った。
一方、物流企業は「トラックドライバーの確保」「倉庫内作業(包装・仕分け)人員の確保」「働き方改革の推進」が首位。次いで、「物流施設の自動化への対応」「従業員の安全管理対策の強化」が並んだ。
荷主企業、物流企業ともに、トラックドライバーの確保が喫緊の課題となっている状況が浮き彫りとなった。両社はドライバー不足とともに倉庫内作業人員の不足も重大な課題となっていると指摘。「こうした人手不足などを背景に、物流施設の自動化や働き方改革を積極的に推進したい企業が増えているようだ」と推察している。
「2024年問題」、影響は輸送コスト高騰が最多
「物流2024年問題」の影響に関しては、「輸送コストの高騰」が最も多く、次いで「集荷時間などの輸送スケジュール」が際立った。「特に影響はない」との回答は1割未満にとどまり、この問題の影響度合いの大きさを示していると言えそうだ。
また、同問題への対策状況について、「対策は実施しているが、まだ十分でない」との回答が第1位だった。対策に着手しているが、現状、まだ十分ではないと認識を持っている企業は、荷主企業で7割弱、物流企業で約6割に到達した。
「物流施設のスペック(施設仕様)についての方針」を荷主企業に聞いた結果、「重視」(「とても重視している」と「重視している」の合計)が6割を超えたスペックは、「BCP対応(免震等の構造)」「BCP対応(非常用発電機等の設備)」「トラックバースの多さ」「1.5t/㎡以上の床荷重」「5.5m以上の梁下有効天井高」「空調設備の充実」だった。
多くの企業が自然災害などへの対策を重視していることを示した。また、多頻度輸送への対応から、トラックバースの数も重視されているほか、多くの荷役運搬機械を設置する施設も増えており、一定水準以上の床荷重および天井高が求められていることが明らかになった。施設内で働く従業員の健康配慮から空調設備も関心度が高いようだ。
物流企業では、「重視」が6割を超えたスペックは、荷主企業で挙がったスペックに加えて、「10m以上の柱スパン」「環境対応(太陽光発電等の設備)」が見られた。
(藤原秀行)※いずれも両社提供