【現地取材】化学品を「デジタル納品」、スマホでQRコード読み取れば手続き自動完了

【現地取材】化学品を「デジタル納品」、スマホでQRコード読み取れば手続き自動完了

政府のフィジカルインターネット実現会議WGが千葉・市原で共同物流実証デモ公開

国土交通、経済産業の両省が主導している「フィジカルインターネット実現会議」の傘下で化学メーカーなど約80の企業・団体が参加している作業部会「化学品ワーキンググループ」(WG)は11月28日、千葉県市原市で、化学品の共同輸送実現に向けた実証実験の様子をメディアに公開した。

山九と三井物産グローバルロジスティクスが折半出資しているサンネット物流の「今津倉庫」(市原市)で、複数の荷主企業が出荷したと想定した貨物をパレットに載せて集約し、フォークリフトでトラックに積み込むデモンストレーションを実施。デジタル検品やドライバーによる端末上での出発報告なども行い、デジタル技術活用の可能性について検証した。

実証実験は机上の検証と実地検証で構成しており、まず机上検証で輸送数量が多い中京~北陸、市原~東北の2つのルートを設定、共同物流や混載輸送の効果を試算した。その結果を踏まえ、化学品メーカー4社と物流会社3社が実地検証に参加。今年7月にセットアップを始め、10月に市原市と三重県四日市市の間で定期幹線トラックを使い、実際に混載輸送の運用をスタート、12月4日まで行った。この日公開したのは実地検証で展開しているオペレーションの一部だ。

12月中に化学品WGの部会で成果を詳しく報告する予定だが、既に現時点で積載率や1台当たりの実車率が約2割改善できているという。国交省や経産省、化学品WGは数年以内に化学品業界で共同物流の社会実装を始め、2028年ごろをめどに同業界全体で共同物流を展開できるようにしたい考えだ。


各社の荷物を荷台にフォークリフトで混載するデモ

13tトラックの積載率は95%超え

実地検証に参加したのは化学品メーカーが東ソー、三菱ケミカル、三井化学、プライムポリマーで、物流企業がサンネット物流、三菱ケミカル物流(MCLC)、東ソー物流。

実地検証の混載輸送は市原側が三井化学とプライムポリマーが発荷主となり、物流をサンネット物流が担当。四日市側は三菱ケミカルと東ソーが発荷主を務め、物流をMCLCと東ソー物流が手掛けた。

化学品WGによれば、四日市側からは、MCLCが東ソー物流からの指定貨物を同社四日市拠点に集約し、MCLCの五井拠点(千葉)まで幹線輸送した。その後、MCLCが直接配送するパターンと、サンネット物流が集荷して納品先まで配送するパターンの2つに分かれた。

各エリアで荷主の荷物を集約し、MCLCとサンネット物流が、四日市発・市原発で平日の毎日1台ずつ共同運行型の定期幹線便を運行。エリア間で転送する在庫をベース貨物に仕立て、当日オーダーの荷物と混載することで、13tトラックの積載率は95%を超えたという。

実地検証では併せて、デジタル技術の活用で共同物流の業務を効率化することにもトライした。各社の輸送予定やトラックの積載率などを一元的に管理するシステムを試験的に2種類採用、効果と課題を試した。

内閣府が国家プロジェクトとして進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービスの成果物と位置付けられている、富士通の共同物流プラットフォームを化学品向けに調整し、各社の出荷要件や配車組みをプラットフォーム上に集めることで各社のシステムの大規模な改修を経ず、各社間で情報を迅速に共有、管理できるようにした。

また、サンネット物流が運用しているドライバー向けツール「S-Eyes NEXT」を活用し、出発や到着の時間、納入完了の報告といった輸送実績を記録、集計した。クラウドベースのため、インフラ整備の手間を省けるのがメリット。

納入伝票に掲載しているQRコードをスマートフォンから読み取れば、ドライバーは配送先住所などの必要や、納品に必要な情報を容易に取得できる。さらに、デジタル検品を導入しており、作業スタッフが製品を仕向地に収める際、納入伝票と製品自体に添付している2つのQRコードをスキャンすると、同じ製品かどうかをシステムが判別し、正しければスマホ画面に緑色で表示し、納入完了報告を自動で済ませることができる。異なる製品だった場合は、スマホ画面に赤色で表示、再確認するよう警告する。

S-Eyesで集めた輸送の実績に加え、各製品の出荷要件や配車組みの履歴をデータで集積し、積載率や稼働台数、混載率などを分析して共同輸送の実効性を評価している。政府が推し進めている、物流のデータ標準化の実例として注目される取り組みだ。


デジタル検品の様子。添付のQRコードを読み込めば、正しい製品の場合は緑色を表示、検品が自動で完了する

実証実験に合わせ、現地でメディアの取材に応じたデロイトトーマツコンサルティングの清水裕久スペシャリストディレクターは、実証公開日時点で「積載率が約2割向上、1台における実車率が2割向上といった効果が確認できている」と説明。

三井化学の依田馨デジタルトランスフォーメーション推進本部物流部長は「共同物流の実効性を示しながら活動を広げていきたい」と語り、今回参加した7社以外にも実証実験に加わるよう期待を示した。


会見するデロイトトーマツ・清水氏(上)と三井化学・依田氏


実験に参加した各社担当。左からプライムポリマー・河村俊志業務部デリバリーセンター副センター長、東レ・藤本賢史物流部物流第1課長、東ソー・百合英憲購買・物流部物流グループリーダー、三井化学・依田氏、三菱ケミカル・高谷秀史購買・物流本部企画戦略部

(安藤照乃、藤原秀行)

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