Space Compassが26年度以降に計画、「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の第1弾と位置付け
NTTとスカパーJSATが折半出資しているSpace Compass(スペースコンパス)は2026年度以降、複数の衛星が収集している地球の膨大な画像などのデータを、光通信技術を使って中継し地上に送る役割を担う静止軌道衛星(GEO)をアジア上空に打ち上げることを計画している。
打ち上げに成功すれば、日本を含む世界各地の画像などをほぼリアルタイムで取得できるようになると想定。例えば、海運会社が海外で海賊船の位置をレーダーよりも早く正確につかみ、対応できるようになるなど、さまざまな場面で活用が可能と見込んでいる。
GEO活用のイメージ
Space Compassは2022年7月発足。高速通信技術などに強みを持つNTTと、衛星運用などの宇宙関連事業を得意とするスカパーJSATが組み、Space Compassにより宇宙空間を活用して通信ネットワークを形成する「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」を実現することを目指している。GEO打ち上げはその第1弾となる「宇宙データセンタ事業」の重要な役割を担う。
「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」のイメージ
現状では観測衛星が取得したデータは地上局に直接伝送している。観測衛星は地球全体でデータを取得できるのが利点だが、地球上空を周回する際、特定の位置に静止せず動き続けるため、特定の場所にある地上の基地局へ円滑に通信できるタイミングが限られたり、通信容量に制約があったりすることが課題だった。
GEOは打ち上げた後、アジアの上空約3万6000kmにとどまりながら、GEOより低い軌道を周回する衛星と通信して画像などを収集。高速・大容量の光通信技術で日本の地上局に送り込むことを想定している。
Space Compassは従来の送信よりも10倍程度の通信速度を確保できるため、1時間以上、送信に要する時間を短縮できる可能性があるとみている。世界各位の船舶の位置を把握し、安全運航をサポートするといった展開が期待できそうだ。
宇宙統合コンピューティング・ネットワークの第1弾としては宇宙データセンタ事業と並行して、地上約20kmの成層圏に通信装置を搭載した無人機を飛ばし、低遅延で高品質な通信サービスを提供する「宇宙RAN事業」の準備も進めている。稼働できれば、災害で地上が混乱していても安定して通信したり、電波が届きにくいエリアに安定した通信環境を整備したり、ドローンをより安定的に飛行させたりすることが見込まれる。宇宙統合コンピューティング・ネットワークが構築、運用できれば物流の在り方も大きく変わる可能性がある。
宇宙RAN事業のイメージ(いずれもSpace Compass資料より引用)
(藤原秀行)