合弁会社設立、健康起因事故抑制狙い
ヤマトホールディングス(HD)とアルフレッサホールディングス子会社のアルフレッサの両社は2月6日、自動車運送事業者の従業員の健康管理支援と重症化予防に向け、合弁でオンライン診療を手掛ける新会社「MY MEDICA」(マイメディカ、横浜市)を2024年12月に設立したと発表した。出資比率は開示していない。2月7日にサービスの提供を開始する。
トラックやバス、タクシーなどのドライバーは専用のスマートフォンアプリで診療日時を予約、問診票に必要な事項を記入すれば、仕事の休憩時間などを使い、最短10分でオンライン診療を済ませられる。処方薬はヤマトの宅配で自宅や職場に届く。診療や調剤の費用はドライバー自身が負担する。
両社がタッグを組んでドライバーの健康状態改善を後押しし、国内で年間300件程度発生している自動車運送事業者の健康起因事故のリスクを減らしたい考え。
(両社提供)
トラックやバス、タクシーなどの自動車運送事業者は他業種と比べて労働時間が長く、年齢層も50歳以上が約半数を占めるなど、健康リスクが高い傾向が見られる。高血圧や糖尿病などの生活習慣病は自覚症状がなく、ドライバー自身、大丈夫と過信してなかなか治療を受けなかったり、治療を受けてもすぐに中断してしまったりするケースが多いため、重症化してしまうリスクが存在している。
政府が2021年6月から健康診断未受診の運転者による健康起因事故を行政処分対象に追加するなど、自動車運送事業者の従業員の健康管理は重要な経営課題になっている。
現状を踏まえ、ヤマト運輸とアルフレッサは2019年に医薬品流通研究会を立ち上げ、医薬品の新たな流通ネットワークの構築を推進。その一環として、ドライバーが医療を受けやすい環境を構築することが、生活習慣病などの未治療者・治療中断者の早期治療や重症化予防に有効と考え、オンライン診療サービスの開発に踏み切った。
ドライバーが所属する企業の上司や健康管理担当者もアプリを介して各ドライバーの健康状態や受信状況を確認できる。
ヤマトグループでトライアルを実施した結果、生活習慣病の治療を継続する割合が80%を記録するなど、忙しいドライバーでも受診しやすい環境を作り出すことに成功したため、他のトラック運送事業者らにも開放、利用を積極的に呼び掛けることにした。
東京都内で同日、記者会見したMY MEDICAの伊藤匡社長は「(ヤマトとアルフレッサで)自動車運送事業者の健康起因事故率の軽減という新たな問題に挑戦する」と強調。ドライバーに加え、事業者にとってもコストを極力かけずに従業員の健康管理と重症化予防が可能となり、再検査に関わる労務・人事系のセクションの業務負荷軽減と福利厚生充実につながるとメリットを強調した。
25年度中に200社への提供を目標にしていると言及、「健康起因による死亡事故ゼロの実現に少しでも貢献できるよう努力する所存だ」と決意を語った。
会見する伊藤社長
オンライン診療のイメージ
サービス概要
(両社提供)
サービス名称 |
MY MEDICA(マイメディカ) |
提供開始日 |
2025年2月7日(金) |
サービス内容 |
アプリをダウンロードするだけで、オンラインで診療予約・診療・服薬指導・おくすりの配送・会計までをシームレスに受けられる。 健康診断の再検査の案内・受診結果の取りまとめや受診状況の見える化もサポートする。 |
メリット |
<導入事業者> ・従業員の健康管理と重症化予防が可能 ・健康起因事故リスクの軽減 ・健康診断の再検査に関わる業務負担の削減 ・福利厚生の充実
<利用者> ・最短10分で診療と服薬指導が受けられる ・朝7時から夜21時まで※、土日も運営しているので、仕事や生活に合わせた受診が可能 ・薬は自宅や職場など、好きな場所で受け取り可能 ・無理なく治療継続ができる
※ 休診時間あり |
(川本真希、藤原秀行)