「いかなる時も顧客のサプライチェーンを維持する」

「いかなる時も顧客のサプライチェーンを維持する」
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物流関連主要団体・企業の2022年頭所感・あいさつ その2(抜粋)

インフラを支える「血液」として物流業界からの発信力強化を推進

日本物流団体連合会(物流連)・池田潤一郎会長(商船三井会長)

昨年も新型コロナウイルスの感染が治まらず、社会、経済全体がその対応に追われる1年でした。そのような中、東京オリンピック・パラリンピックが無事開催され、ワクチン接種が進むとともに国内感染者の数が徐々に減少し、緊急事態宣言がひとまず解除されるなど、先行きの不透明感は拭えないものの明るい兆しも見え始めた年でもありました。

物流を取り巻く環境は、感染症の影響でグローバルサプライチェーンの混乱が続く中、物流を止めないことに注力したことで、物流が重要な社会インフラであることがあらためて認識された1年でもありました。サプライチェーンの安定化までは今しばらく時間を要するものと考えます。

このような中、物流連では様々な活動を実施してまいりました。「物流を等身大で社会一般から見ていただく活動」として、会員企業のご協力の下、学生を対象とした物流業界セミナーやインターンシップをウェブ併用で開催し、人材育成と広報活動の強化を継続しました。大学での寄付講座や学内セミナーにおいても、より多くの学生に「リアルな物流業の実態と物流業の重要性」を認識してもらう機会を増やしました。

「社会インフラとしての物流機能強化」の取り組みでは、国土交通省などと連携し、総合物流施策大綱の方向性を踏まえ、官民物流標準化懇談会にて関係者の連携・協働による物流標準化について議論・検討を開始しました。

「国際的な課題への取組み強化」については、海外物流戦略ワーキングチームにおいて、ウェブを活用したASEAN(東南アジア諸国連合)各国の現地実態調査を行いました。「物流環境対策の取組み」では、コロナ禍にもかかわらずモーダルシフト取組み優良事業者賞に多数の応募をいただき、脱炭素社会に向けた物流事業者の取組みを社会に公表しました。さらに新たな取り組みとして、国や産業界のカーボンニュートラルに向けた動向を把握するとともに、陸運、海運、倉庫等、業態を超えてベストプラクティスを共有する情報交換会を立ち上げました。

本年は、これまで継続して行ってきた多様な活動が実を結び、物流業界の発展に役立つものとなるよう一層充実した取り組みを推進していきたいと考えます。物流業界における労働力不足は深刻化しており、規格の統一や共通基盤の構築、自動化やDXを活用した様々な取り組みにより生産性の向上を図ることが喫緊の課題となっています。また、サプライチェーンの根幹として安全は最重要の課題であり、地球温暖化対策、自然災害や感染症など有事の際にも対応できるサプライチェーンの強靭化へ向けた取り組みも必要と考えます。物流連としても官民連携、他産業との連携を一層強化するとともに、インフラを支える「血液」として物流業界からの発信力強化を推進していく所存です。

アフターコロナ見据え、「どのような状況でもやるべきこと」をしっかりと見定めよう

近鉄エクスプレス・鳥居伸年社長

新型コロナウイルス感染症は、世界中で全く予断を許さない状況が続いています。2022年はどのような年になるのか、先行きの予測が非常に困難な状況であることに変わりはありませんが、各国においては経済活動、社会活動の再開への動きが活発になることは間違いありません。

一方で、各国の入国規制は続き、人流が戻らない状況はしばらく続くと推測され、航空貨物輸送については21年と同程度の物量で推移する場合、昨年と同様なスペース不足に見舞われると思われます。

海上輸送に関して、船社の統計によると、22年度の海上輸送物量が前年比で8%増加の予想に対し、船腹の増加は5%とのことであり、また、今夏には北米西岸港湾の労働協約の更新が予定され、港湾業務に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。予想通りに物量が推移する状況で、北米西岸港湾の労使交渉が難航して港湾ストが実施された場合、サプライチェーンがさらなる混乱に陥ることは明白です。

2年前の2020年は、新型コロナウイルスの感染リスクが高まる中、KWEグループ全社員の皆さんには、エッセンシャルワーカーとして頑張っていただき、21年は世界の経済・生産活動が再開される中で、コロナ禍に端を発する世界規模の海上、航空の物流の混乱下において、お客様のサプライチェーンを維持するために努力していただきました。皆さんの「頑張り」と「努力」にあらためまして心から感謝を申し上げます。

2022年も昨年と同じような環境下、われわれの使命である「いかなる時もお客様のサプライチェーンを維持すること」を果たすため、皆さんには一層の努力をお願いすることになりますが、引き続き、よろしくお願い申し上げます。

皆さんの頑張りと努力のおかげで、当社の業績は好調に推移していますが、これは異常な状態下のことであり、早晩、必ず通常な状況への揺り戻しが起こるでしょう。ただし、人々の価値観も含め、コロナ前と同じ状況に完全に戻るかは定かではなく、アフターコロナを見据えて、それぞれの職場において「どのような状況でもやるべきこと」をしっかりと見定め、本年も仕事に取り組んでいただきたいと思います。

高齢化社会や健康・食・生活を支える事業の比率を高める

センコーグループホールディングス・福田泰久社長

今年4月から新しい中期経営計画がスタートします。現在、計画の最終まとめをしていますが、経営の基軸として事業の多角化をさらに進めます。核となる物流事業は、製造から販売までをつなぐ、あるいはそれぞれを支えるというものでした。これからはそれをさらに伸ばしつつも、物流の持つ中核機能や培ったノウハウを強みとして、販売機能である商事事業のさらなる拡大などに取り組みます。

また、「人々の生活を支援する」というグループの企業理念の実現に向け、高齢化社会、健康、食、生活を支える事業に加え、「ビジネスや産業を支援する」という観点も明確にして、グループの全事業に占めるこれら事業の比率を高めていきます。

その中で、グループ全社員の皆さんに期待することが2点あります。1点目は、「新しい発想、アイデアによる新商品・サービスの創出」です。今までと同じ、あるいはその延長だけでは、他社との差別化が図れず、厳しい競争を勝ち抜けません。労働時間だけでなく、仕事の成果に応じた報酬を受け取る制度も取り入れたいと思いますので、皆さんの積極的なチャレンジをお願いします。

2点目は仕事に加え、心身ともに豊かになれることにも打ち込んでほしいということです。皆さんが文化やスポーツ、趣味などいろいろなことに取り組み、それを会社もサポートする、そして人生いつまでも健康に過ごせる、そのような魅力あるグループにしていきたいと思います。
新型コロナ発生から2年になりますが、今年は感染防止と健康の確保を図りつつ、事業を正常な軌道に戻し、さらに伸ばしていけるよう、皆さんとともに知恵を絞りながら乗り切っていきましょう。

「生き残る種は変化に最もよく適応したものである」

三井倉庫ホールディングス・古賀博文社長

昨年を振り返りますと、経済・社会・生活、全ての局面でまだまだ制約が続いた状況でありましたが、当社グループはサプライチェーン上の様々な混乱や需給バランスの歪みなどに対して適切に対応できたことや、ベースとなる業務が堅調に推移したこと、そしてこれまで進めてまいりました粗利益改善やコスト削減などの施策による収益力の底上げなどにより、厳しい事業環境下でも底堅く収益を確保することができました。

本年は、5カ年の現中期経営計画の最終年であり、新たな中計のスタートを切る年となりますが、現在注力している【圧倒的な現場力の構築】【一気通貫の「統合ソリューションサービス」の構築】【ESG経営】、この3つの施策への取り組みは今後も継続してまいります。今後この3つをはじめとする様々な施策を実施していくに当たり、その下支えとなる取り組みとして「DX戦略」と「ESG経営」の2つを重視してまいりたいと思います。

物流のDXは、経済・社会活動にとって大変重要な役割を果たすものと考えます。DXの実現には自らが変化すること、そして変化し続ける姿勢を持つことが不可欠であるとの考えの下、当社グループのDX戦略に沿った各種取り組みや様々なプラットフォームとの連携、協創を通じて新たな価値を創出してまいります。「物流のDX無くして、お客様のDXは実現しない」という意識を強く持って様々な取り組みを進めてまいります。

「ESG経営」も「DX戦略」と並び、重要な取り組みとなります。これは私の持論なのですが、日本の企業には利益を求めることと同等に、社会的な責任も同様に果たしていく、という精神がそもそも根付いていると考えています。これからは企業と社会がお互い成長していくための取り組みが一層必要とされるようになるでしょう。物流を通じてお客様のサプライチェーンサステナビリティを支援する【三井倉庫のSustainaLink(サステナリンク)】サービスを昨年開始したのはまさにこの想いからです。

これまで提供してきた様々なサービスに、持続可能性という視点をさらに加えることで、環境リスク、労働力リスク、災害リスクといった物流を取り巻く様々な社会課題にも対応可能な物流体制を構築し、提供していきたいと考えております。

近年、グループの各社が協調し、各々の強みを十分に認識し伸ばしてきたことに加え、総合物流企業グループとして幅広い事業ポートフォリオを構築してきたことで、ベース収益とフロー収益がバランスよくマッチし、着実な成果を挙げており、業績については安定した状況が続いておりますが、足下をあらためて見た時、私の認識は「まだスタートラインに立っただけ」というのが正直なところです。

「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」という言葉にある通り、変化に積極的に対処し、自らを進化させていくことが厳しい競争に打ち勝ち、生き残っていくためには不可欠と考えています。「変化」は、私たちの「新たな価値」を生み出す大きな力です。

現中計の数値目標は既に達成し、盤石とは言えないかもしれませんが今後の持続的成長を支える財務基盤も強化できたと言えます。しかしあえて厳しく言えば、これまでの取り組みはとにかく「再生」を優先してきたもので、「真の成長」のために必要な取組みを次期中計では、より重視していきたいと考えています。

その取り組みの1つとして「従業員エンゲージメントの向上」を挙げたいと思います。仕事面だけではなく、従業員、そしてその家族の方々の生活の充実なくして、当社グループの持続的成長もあり得ないという思いのもと、取り組みをグループ全体に広げていき、真の意味での良い会社にしていく取り組みを進めてまいります。この取り組みの進展と、私たちが求める「新たな価値」の創造は、車の両輪のような存在と言えるかもしれません。

今後30年あるいは50年を展望した非常に大事な次期中計が始まろうとする本年、変化が激しい時代においても変わらない確固たる私たちの価値は何か? 社会における役割や提供できる価値、私たちにしかできない物流とは何か? そして何より「どのような物流企業を目指していくのか?」ということを愚直に考え、なすべきことを整理し行動してまいります。

これからも厳しい状況は続くかもしれませんが「物流を止めない」という社会的使命を果たし、「物流という重要な社会インフラを支える企業」としての誇りを持ってグループ一丸となって新たな時代を進んでまいります。

サステナビリティの課題克服へ「まずやってみる」勇気を

ニチレイ・大櫛顕也社長

2022年の年頭に当たり、私たちニチレイグループが持続的に成長するために取り組んでいく「サステナビリティ」の課題についてお話したいと思います。

昨年もコロナ禍の中、労働力不足やコンテナ不足などにより、調達や生産、物流が制約を受け、サプライチェーンでは様々な混乱がありました。その混乱の中での事業活動を振り返りますと、社会インフラを担うニチレイグループの役割、食と健康を支え続けるという責任の重要さを再認識した1年でありました。そのことは、ニチレイグループのミッション「くらしを見つめ、人々に心の満足を提供する」と、ビジョン「私たちは地球の恵みを活かしたものづくりと、卓越した物流サービスを通じて、豊かな食生活と健康を支えつづけます」についてあらためて考える機会につながったように思います。

それは、もう1つの視点で私たちの事業を捉えるということです。「私たち自身がどうありたいか」という熱い志だけでなく、そもそも「社会の一員として私たちはどうあるべきか、何のために存在しているのか」という社会からの視点です。

こういった視点を持つことには理由があります。それは持続可能な社会の実現、すなわちサステナビリティに対する社会的な要請が、これまでにも増して急速に高まっていることが背景にあります。

昨年11月に開催された国連のCOP26がかつてないほどの注目を集めたことは、記憶に新しいところです。持続可能な社会の実現に向けて、私たちニチレイグループはどのような貢献ができるのか、それが強く問われているものと認識しています。

ニチレイグループが地球の恵みを活かしたものづくりを続けていくためには、豊かな自然環境を守り、永続させていかなければなりません。そのためにはカーボンニュートラルの実現へ向けた取り組みや、食資源を大切に使い、保全する取り組みが不可欠です。また、お客様へ食をお届けし、人々の健康を支える長いサプライチェーンには、私たち以外にも大変多くの人々が携わっています。持続可能性の視点では、ビジネスパートナーなどのステークホルダーとの共存共栄を前提として、人権や労働の問題に対して真摯に取り組むことが肝要となります。

以上のような認識の下、今後は経営戦略にサステナビリティを組み込み、経済的価値と社会的価値を両立させていくことが、これまでにも増して重要になってくると考えています。

さて、サステナビリティの課題や、コロナ禍の影響を含む市場環境・調達環境の激変など、不確実性が高く、複雑で先の見通しにくい、いわゆるVUCA(ブーカ)の時代においても着実に事業運営を行っていくために、皆さんへ年頭に当たってのお願いを2つ申し上げます。

1つ目は、昨年の年頭挨拶の繰り返しとなりますが、「まず、やってみる」ことです。変化の激しい環境では、新たなことに次々とトライしていくことが必要となりますが、複雑性が増している状況ではつい立ちすくんだり、決断を先延ばしにしたりしてしまいがちです。また、新たな領域においては情報が足りず、正しい判断がつきづらいのではと思います。

しかし、早くチャレンジすれば、打開のためのヒントが見つかりますし、失敗すればそこから学びを得て次につなげることができます。まず勇気を持って最初の一歩を踏み出してみること、これが大切だと思います。踏み出す時は、1人ではなく仲間と一緒にチームとして取り組むことで、明るく自由闊達で、失敗を許容できる風土づくりにもつながっていくものと信じています。

2つ目は、「粘り強く対話する」ことです。先が見通しにくい時代においては、「正しい」と言い切れる場面が少なくなって来ています。正解の無い世界で、過去の延長ではない新たな未来を描くためには、多様な物の見方を養い、気付きを得ることが有効です。しかし自分の考えに固執していては、異なるアイデアを受け入れることができません。

対話の第1歩となるのは、まず「相手の話を聴く力」だと思います。自分と異なる立場の人、あるいは自分と違う意見を持つ人とのコミュニケーションを積極的に取り、相手の意見を一度ありのまま受け入れることから始めましょう。対話を積み重ねることで、チームとしての結束力やニチレイグループとしての変化対応力が向上していくものだと思います。

皆さん1人ひとりの行動が、まさにニチレイグループの活動そのものであり、それが社会に影響を与えていきます。今年は「まず、やってみる」「粘り強く対話する」という2つの姿勢を大切にし、日々の仕事に取り組んでいきましょう。

(藤原秀行)

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