【現地取材・独自】自動化・省力化技術が集結した関西物流展、過去最大規模で開催

【現地取材・独自】自動化・省力化技術が集結した関西物流展、過去最大規模で開催

規制強化の波乗り越え持続可能性向上図るソリューションに注目

「第6回関西物流展」(主催・関西物流展 実行委員会)が4月9~11日の3日間、大阪市内の「インテックス大阪」で開かれた。昨年の前回を上回る405社が出展し、過去最大規模で開催。物流に関する西日本随一の大規模展示会として、関係者の間ですっかり定着した印象だ。

会場には物流の持続可能性を高める技術やソリューションが多数登場。4月1日に一部が施行された改正物流総合効率化法(名称は物資流通効率化法に変更)など、物流関連法による荷待ち・荷役時間短縮の取り組みの努力義務化といった規制強化の波を乗り越えようとする荷主企業や物流事業者の注目を集めていた。

 
 


「インテックス大阪」の会場

ラピュタロボティクスは2023年に発売した自動倉庫「ラピュタASRS」をあらためてアピール。現在16社が採用しており、荷主は製造業をはじめ、日本出版販売などの書籍・文具関連企業、小売、EC企業など多岐にわたっているという。物流企業もアルプス物流をはじめとする大手3PLなどが取り入れている。

さらに、新たな製品として、重量検品機能付きのピッキング支援AMR(自律移動ロボット)のプロトタイプを初めてお披露目した。作業者がAMRに積んだコンテナにピッキングした商品を入れると、自動的に重量を測定し、オーダーと重量が食い違っている場合はエラーを表示して作業を強制的にストップする。ミスを防ぎ、精度の高いピッキング作業を行えるよう担保する。

ラピュタロボの担当者は「場合によっては出荷前の検品を省略できるのではないか」と省力化効果を見込んでおり、今秋に予定している販売開始を前に、既に採用を決めた企業もあるという。他にも自動フォークリフトの新モデルを公開した。


自動倉庫「ラピュタASRS」

オカムラは自動倉庫システム「ロータリーラックH」と、自律型搬送ロボット「ORV(オーアールブイ、Okamura Robot Vehicle)」を出展。ロータリーラックHは同社のロングセラー製品で、保管に加えて作業者の手元に商品を送るGTP(Goods to Person)型のピッキング作業や仕分けなど多目的に使用できるのが強み。

 
 

トレイ構造のため専用容器への積み替えが不要で、多様なサイズ・荷姿の商品を扱える。冷蔵・冷凍倉庫への設置も可能。さまざまな自動倉庫製品が市場に登場する中、オカムラの担当者は「変わらず引き合いは好調」と明かす。


ロータリーラックH

ORVは2022年に登場した独自のロボットで、かご車を牽引するのではなく、片側をつかんで持ち上げるのが特徴。自らルートを生成し、ガイドレスで倉庫内などを走行する。牽引方式と比べて旋回半径をコンパクトに設定しているため狭いスペースに適しており、来場した中堅・中小の荷主企業や物流事業者らの目を引いていた。


ORV

物流業界向けマテハンやシステムを扱っていた東芝インフラシステムズを4月、東芝が吸収合併したのに伴い、今回は東芝として参加。2023年より業務提携している中国・蘇州市のスタートアップMushiny(ムシャイニー)の棚搬送ロボットを公表。プロジェクターと組み合わせたピッキング支援をデモンストレーションした。

担当者は「当社が出資している関係もあり、ハードもソフトもシステムの細部まで把握して緊密な連携を取っているので、安心してお使いいただける」と胸を張る。

 
 


Mushinyの棚搬送ロボット

ロボットを従量課金制で提供しているプラスオートメーションは代表的な製品の1つ、ソーティングロボット「t-Sort」を今回もブースに設置、デモをアピールした。担当者は「当初、アパレル品を扱う企業を中心に関心を集めていたが、アパレル以外での導入も増えてきた」と笑顔を見せる。


t-Sort

YEデジタルは2024年に提供を始めた、物流に特化した生成AIソリューションを出展。トラックへの積載効率の高い荷物の積み込み方を試算したり、どの車両でどの出荷先の荷物をどのように積み合わせて運ぶべきかといった出荷指令データを作成したりすることが可能という。担当者は作業時間の短縮が強く求められている物流業界に浸透させたいと意気込む。

また、新製品としてビジネスユースでセキュアに使用できる会話型AI「AQUA DataFusion」を初めて披露した。例えばマテハン機器の保守メンテナンスに関わる情報を学習させて部品交換時期を知らせたり、コンタクトセンターで問い合わせに対応したりする業務を自動化できると想定している。

ハコベルは物流総合効率化法、貨物自動車運送事業法、下請法の物流に関係が深い3法の改正について、ブースで解説セミナーを実施。法改正で必要となる対応を踏まえて、同社のトラック受付・予約システムや配車管理システムを活用した業務効率化をPRした。


ハコベルのブース

オプティマインドは「Loogia(ルージア)」ブランドで展開している基幹サービスのAIを使った経路や配車計画の作成などをデモンストレーションした。担当者によると、物流業界の現状に危機感を持った荷主からの問い合わせが増えているという。

これまで物流企業に輸配送を任せてきた荷主は、物流改善のノウハウを持たず、業務内容も把握できていないケースがあるため、第三者のシステムを導入することで、ブラックボックスだった業務を物流企業と共有・可視化し、一緒に改善に取り組んでいくことができるようになると期待しているという。

KURANDO(クランド)は物流現場データ取得ツール「ロジメーター」、物流向けBIツール「ロジスコープ」、作業進捗・人員管理ツール「ロジボード」の3種類を紹介。並行して、この3つのツールを全て導入した三鷹倉庫(大阪市)の拠点責任者がブースに立ち、その効果や苦労した点などを説明するというユニークな展示を試みていた。

導入した拠点のセンター長は「これまでは責任者が現場を巡回し、各工程の進捗を把握して人の割り振りを調整していた。導入後は、誰もが画面を見て作業の進捗と終了時間の見通しを把握できるようになり、責任者の判断がなくても動けるようになった。責任者は作業が順調な日には現場管理以外の業務に時間を使えるようになった」と手ごたえを語った。

また、「取得した生産性のデータを元に週に1度社内で話し合いの時間を設けたり、荷主との相談も数字を用いて行えるようになったりと変化を実感している」と述べた。BtoBとBtoCの各1拠点から導入をスタートし、徐々に拡大させることを目指しているという。

(川本真希、藤原秀行)

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