優れた交通アクセスと人材確保に荷主や施工者も期待大
プロロジスは7月5日、新たに茨城県つくば市でアパレル通販大手ZOZO専用の物流施設「プロロジスパークつくば2」の開発計画を発表した。同社を含む関係者からは交通の要所であることや、庫内作業効率化に活用できる可能性のある先端技術の研究機関が数多く集積していることなどを踏まえ、同市が将来的に新たな物流適地となる可能性が高いとの見解が相次いで聞かれた。
同社がつくばで手掛ける案件は「つくば2」のほか、稼働中の施設が1棟、計画中が1棟の計3棟に上り、4棟目にも意欲をのぞかせている。同社が今後さらに事業機会を確実に捉え、物流集積地としてつくば市の価値を高めていけるかどうか手腕が試されそうだ。
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「プロロジスパークつくば2」起工式後の記念式典であいさつするプロロジス・山田社長
物流が呼び水になり住宅や商業施設の開発も
つくば市で現在稼働している先進的な物流施設は「プロロジスパークつくば1-A」1件のみで、物流適地として広く知られている埼玉県三郷市や千葉市、相模原市などに比べれば数は劣る。しかし、圏央道や常磐道へのアクセス優位性を生かしたエリアカバー力は東京都心から北関東、仙台、中部、関西と極めて広域にわたるのが特徴だ。
プロロジスの山田御酒社長はそうした点を踏まえ「つくば市の交通・立地は素晴らしい。今後も“広域物流戦略拠点”としての成長・発展が期待できる」と評価。「物流施設開発が呼び水になって住宅や商業施設が集積していく雰囲気を感じる。ゆくゆくは(プロロジスも物流施設を開発している)千葉ニュータウンのような街になるイメージを持っている」と見通した。
加えて「つくば市という新しいエリアでの開発を通じて、当社がつくば市の目指しているコンセプト『みどりの森』の一員として地域に貢献できるよう頑張っていきたい」との考えを表明。同業他社に先駆けてマーケットを創出することでより一層の付加価値を追求していく姿勢を強調した。
「つくば2」と既に稼働中の「つくば1-A」、今年9月に完成予定の「プロロジスパークつくば1-B」はいずれもZOZOが入居。プロロジスのリピーターとなっている。そんなZOZOも荷主企業の立場から庫内労働力確保などの面でつくば市の持つ潜在能力は高いと熱い視線を送っている。
「プロロジスパークつくば2」完成予想イメージ(プロロジスニュースリリースより引用)
ZOZOフルフィルメント本部の大蔵峰樹執行役員は「つくば市のインフラや住みやすい環境は人材確保でもアドバンテージがあるだろう。まだ周辺には物流施設が少ないだけに先行して投資を進めることで雇用・事業の拡大につなげたい」と言及。
また近隣の大学や研究機関がロボット開発に力を入れていることは、庫内作業の省力化・省人化を推進する上で情報交換・連携などを通じてプラスに働くとみている。
「つくば2」内に省人化の実験プラントを設置することも構想の一つに挙げ、ここで得られたノウハウを今後展開していく物流施設で活用する可能性も示唆。「後続(の物流施設開発)案件は中期経営計画の見直しによって保留・検討となっているものの、完全無人化倉庫の実現という観点から意義があると認識している」と施設整備プロジェクトの再開に含みを持たせた。つくばを基点に新たなタイプの物流施設が誕生する可能性もありそうだ。
ZOZOの大蔵執行役員
建設作業員は延べ5万人、労働力の安定確保にも着目
前述のプロロジスの3施設は準大手ゼネコンの西松建設が一貫して工事を担当しており、施工者としてメリットの大きさに着目している。
同社の髙瀨伸利社長は「つくば2」の建設工事で延べ約5万人の作業員を投入すると試算。これはつくば市の人口約24万人の5分の1に相当することから「継続的な案件開発で地域の雇用や経済にも貢献できるだろう。当社としても建設作業員が不足する中で安定・確実な労働力の確保を図ることができる」と期待を寄せる。
西松建設は2004年にプロロジスの案件を手掛けて以来これまで15棟(延べ床面積67万8000平方メートル)を完成させてきた。さらに現在建設中の「つくば1-B」、今回受注した「つくば2」を加えると17棟(86万2000平方メートル)に拡大する。プロロジスの開発案件における施工者としての地位をより盤石にしそうだ。
デベロッパー、荷主、施工者の3者がそれぞれの立場からそろって高評価を示したつくば市。新たな物流適地として存在感を高めていくには行政、地元経済界なども巻き込んでいくことが求められる。
西松建設の髙瀨社長
(鳥羽俊一)