24年度調査結果、「運送当日に業務キャンセルも費用支払わず」など事例紹介
公正取引委員会は6月24日、2024年度に実施した荷主と物流事業者間の継続的な取引に関する実態調査の結果を取りまとめた。
荷主3万社、物流事業者4万社向けにそれぞれ調査を依頼し、荷主は50.5%の1万5159社、物流事業者は31.5%の1万2592社から回答を獲た。
その内容を踏まえ、独占禁止法上の問題につながる恐れがある行為を行っていた荷主646社に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。
業種の中で最も多かったのは「協同組合」(10.8%)、「飲食料品卸売業」(10.2%)、「建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」(8.2%)の順だった。
また、行為の具体的な内容は「不当な給付内容の変更及びやり直し」(53.4%)、「代金の支払遅延」(15.8%)、「買いたたき」(12.9%)の順に多かった。
「不当な給付内容の変更及びやり直し」では、
・「定期便として発注した運送業務を集配送当日にキャンセルしたが、物流事業者が負担した車両の手配に要した費用を支払わなかった」(飲食料品卸売業)
・「自組合の選果場から自組合の小売店舗までの農作物の運送を委託しているところ、当該物流事業者との間であらかじめ取り決めていた出発時間について、選果場における突然の設備故障のため一方的に遅らせる変更をしたが、その変更に伴い物流事業者が負担した追加費用(待機中の運転手の人件費等)を支払わなかった」(協同組合)
――などのケースを列挙。
「代金の支払遅延」は、
・「自社の事務処理が間に合わないことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った」(飲食料品小売業)
・「自社の担当者が経理部門に請求書の回付を失念していたことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った」(総合工事業)
――といった事例があった。
「買いたたき」は、
・「物流事業者から、それまで無償で提供させていた附帯業務の料金が上乗せされた見積書を受け取ったにもかかわらず、理由を一切説明することなく、運賃を一方的に据え置いた」(機械器具卸売業)
・「物流事業者に対し、自社工場から自社が運営する飲食店舗までの食材等の運送を委託しているところ、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら、物流事業者から、運賃の引き上げを要請されなかったため、労務費等のコスト上昇分の反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく運賃を据え置いた」(飲食店)
――などの事案を報告した。
他にも、「不当な経済上の利益の影響要請」で、
・「物流事業者に対し、契約では、運送の委託しかしていないにもかかわらず、運送した荷物の荷卸し、検品及び棚入れを無償で行わせた」(その他の卸売業)
・「自社工場で用いる機械部品を海外事業者から購入するに当たり、当該部品の荷揚げ港から自社工場までの運送を委託しているところ、当該運送業務に附帯して輸入通関業務を委託する際の関税・消費税の納付を立て替えさせた」(生産用機械器具製造業)
―ーといった行為があった。
手形機関150日と非常に支払いサイトの長い約束手形を交付したり、自社の展示会の家具運送などを委託する代わりに製品を購入させたりするなどの事例も紹介。荷主に強く警告している。
(藤原秀行)