PwCアドバイザリーの国内調査、シナジー創出苦心が鮮明に
PwCアドバイザリーは7月10日、「M&A実態調査2019 クロスボーダーM&Aにおけるシナジーの発現に向けて」を発表した。
海外企業のM&Aを経験した国内企業のうち、買収先の業績が計画を下回って推移していると答えたのが36%に達するなど、シナジー創出に苦心していることが明らかになった。
調査は2018年9~11月に日本CFO協会の協力を得て、上場企業1000社以上を対象に実施。海外企業のM&Aを手掛けた経験のある174社から有効回答を得た。併せて、18年12月から19年2月にかけて、個別にインタビューした。
直近に買収した企業の業績に関し、「買収当時の計画を上回って推移している」は12%、「おおよそ買収当時の計画通りに推移している」は52%だった。
また、買収案件の「のれん」の減損を実行したか、実行する見込みとなっている企業は35%となった。
「想定通りに進まなかったシナジー施策」(複数回答)は、「クロスセルによる売り上げ拡大」が4割を超えて最も多く、「共同開発による新製品売り上げ拡大」、「営業・サービス拠点・人員の集約によるコスト削減」、「共同購買によるボリュームディスカウント」などと続いた。
計画と比べてどの程度シナジーを達成できたかについては、コスト削減は「80%程度は達成」と「50%程度は達成」がともに27%で最も多かったが、「ほぼシナジーなし、もしくはディスシナジーが生じた」も25%に上った。売り上げ増加は「50%程度達成」が31%で最も多く、「80%程度」も26%だが「ほぼシナジーなし、もしくはディスシナジーが生じた」が16%存在した。
海外企業M&Aの際に設定した買収価格に関しては28%が積極的なシナジーを織り込んだ水準としており、シナジーへの期待と実際の効果に乖離が生じるのが珍しくない現実が浮き彫りになった。
シナジーの達成度合い(PwCアドバイザリー資料より引用)※クリックで拡大
成功に必要な3つのポイント
PwCアドバイザリーは、企業へのインタビューを通じて、想定通りのシナジー効果を得る上で必要な共通事項が見られたと説明。具体的には、
①事業戦略を実現していく手段の一つとしてM&Aを組み込んでおり、当該事業責任者がM&Aの実行からPMI(買収後の統合作業)の推進まで深くコミットしている
②シナジーの定量化と価格への織り込みについて、買収検討時に客観的な検証プロセスを実行している
③買収後に一気に経営基盤を導入する仕組みが確立されており、PMI段階では、買収先企業の自主性を尊重しながらも放任しない最適なバランス感覚でガバナンスを効かせている
――を列挙した。
同社はこの3点に加え「案件検討時の段階から買収後の事業価値創造のアプローチを描き、それを実行していくことが重要になっている」との見解を示した。
(藤原秀行)
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