首都圏の大規模マルチ型物流施設、27年は工事費高騰で供給が15年ぶり低水準見込む

首都圏の大規模マルチ型物流施設、27年は工事費高騰で供給が15年ぶり低水準見込む

CBREリポート、「需要超過」想定

シービーアールイー(CBRE)は8月26日、首都圏の賃貸物流施設市場に関するリポートを公表した。

この中で、建設工事費の高騰が新規の物流施設開発の足かせになっていると指摘。2027年には大規模なマルチテナント型案件(LMT)の新規供給が26年までから急速にペースダウンし、約15年ぶりの低水準にとどめると予想している。



その上で27年は6年ぶりに需要が供給を上回る「需要超過」になり、市場が「転機を迎えることになりそうだ」と展望している。

リポートは冒頭、国土交通省の「建設総合統計」を引用。民間建築部門の非住居用の手持ち工事高(全国ベース)が今年5月には10.4兆円に達し、この3年で1.5倍程度に膨らんでいることに触れ、その背景には都市部で大型再開発が多く進められていることや工場の新設・増設など設備投資が旺盛なことを挙げている。

その一方で、建設分野の人手不足が響いて建設工事費が上昇していることにも言及。「新築工事に当たっては、デベロッパーが用地取得時に見込んだ工事金額を上回る見積もり提示が相次いでいるようだ」と解説している。

この状況は、賃料をなかなか大きく上げづらい物流施設を開発するのには逆風になっているとの見解を示し、「デベロッパーは賃料上昇が期待される立地や物件タイプを見極めて、物流施設開発を選別していくことになりそうだ」と予想している。

こうした状況を踏まえ、リポートは首都圏でLMTの新規供給にブレーキがかかると想定。具体的には、現状で25年が約46.5万坪、26年が約52.5万坪なのに対し、27年は約15.2万坪にとどまると見積もっている。過去最大の約90万坪の供給を記録した23年からは8割減となる。

ただ、新規需要も底堅く、24年の50.9万坪から25年は36.3万坪、26年は50.7万坪と続くと予測。27年は抑制気味だが27.9万坪とはじき出しており、新規需要が新規供給を上回ることになるとのシナリオを描いている。



12.7万坪の超過需要は空室率が急低下した19年の水準を上回っているという。

(藤原秀行)※いずれもCBREリポートより引用

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