変革最前線に立つ起業家や実務家が物流の未来像を展望
月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)編集部は6月27日、東京都内で初の読者交流イベント「LOGI-TECHサミット2019」を開催した。
物流業界を変革しようと立ち上がったスタートアップ企業の関係者らが一堂に介し、自らの取り組みを紹介。深刻な人手不足など環境の激変に見舞われる業界の将来像を熱く展望し合った。
ロジビズ・オンラインでは2回にわたり、イベントの模様を報告する(後編は7月22日配信予定)。なお、詳細はLOGI-BIZ8月号(8月1日発行)に掲載する。そちらもぜひご一読いただきたい。
約350人が詰め掛けたサミット会場「CROSS DOCK HARUMI」(東京・晴海)
躊躇なく挑戦しなければ日本は時代に取り残される
「LOGI-TECHサミット2019」では冒頭、物流ロボットの開発を手掛けるGROUNDの宮田啓友社長が登壇。「世界の物流に起こるパラダイムシフト」について講演した。
宮田氏は、海外で積極的に活動している物流企業家として、米クワイエット・ロジスティクスやローカス・ロボティクスを立ち上げたブルース・ウェルティ氏、カナダで3PL事業を手掛けるシンク・ロジスティクスを経営するロバート・ハシモト氏、米ソフト・ロボティクスを創業したカール・バーズ氏の3人を紹介した。
各自のロボット開発などの取り組みから刺激を受けつつ、GROUNDとしても自律型協働ロボットを3PL事業者らで共有できる「ロボットシェアリング」の実現を目指す考えをあらためて表明。「いろんなことに躊躇なくチャレンジしていきたい。そうしないと日本は時代に取り残されてしまう」と決意を語った。
トップバッターとして講演する宮田氏
デジタル化であらゆる物流のいざこざが消滅
続いて、Hacobu(ハコブ)の佐々木太郎社長CEO(最高経営責任者)が登場し、「米フレートブローカー市場の展開」にフォーカスしてプレゼンテーションを行った。
佐々木氏は、米国ではトラックと荷物をマッチングする「フレートブローカー」と呼ばれる仲介業者が昔から活躍しており、その市場規模は約5兆円にも上るとみられていることに言及。C.H.ロビンソンなどトップ3に次ぐ収益規模を誇るスタートアップ、コヨーテ創業者のジェフ・シルバーCEOらに“突撃取材”し、トラック版ウーバー(Uber)展開の可能性を探ったことを明らかにした。
その結果、「一般貨物にウーバーを適用するのは構造的に無理」との結論に至ったと回顧。その代わりとして、輸送に関する指示書などをデジタル化し、事業者間でデータを共有できる環境整備の必要性を確認した経緯を説明、「みんながデジタルにつながるプラットフォームが実現することであらゆる物流のいざこざがなくなる。そういう世界をわれわれはつくりたい」と力説した。
熱弁を振るう佐々木氏
「クロスボーダー在庫一元化」など3要素が不可欠
その次に、EC事業者向けのフルフィルメントサービスを担うアッカ・インターナショナルの加藤大和社長が「テクノロジーが物流業を革新する」と題して講演した。
加藤氏は、荷主企業から最近多く問い合わせが寄せられているリクエストとして「クロスボーダー在庫一元化」があることを明らかにした。「現地に倉庫を置かなくても、デジタルとテクノロジーの力を使うことで海外市場に直接アプローチできるようになった。それを実行する能力が物流業に求められている」と指摘した。
さらに、実体験を基に「オムニチャネル対応」や「オートメーション化」も対応が不可欠になっているとの見解を示し、「この3点は相互に連携しており、どれを欠くことなく3つ合わせてお客さまに提供することが今の物流業に求められている」との持論を展開した。
技術活用の持論を語る加藤氏
「人に寄り添った業界改革」の先に未来がある
続けて、軽トラックを対象としたドライバーと荷物のマッチングサイト「PickGo」を運営するCBcloudの松本隆一代表取締役CEOが「物流プラットフォームで宅配危機を乗り越える」をテーマに講演。配送先を紙の地図に書き込み人力で宅配経路を作成している事例を挙げ、まだまだ宅配現場にはアナログ的な要素が数多く残っていると懸念を示した。
そうした状況を改善していくため、自社のソリューションを引き合いに出し、ITを駆使したプラットフォームでベテランの宅配ドライバーが持つ業務のノウハウを継承、新人ドライバーでも高いパフォーマンスを実現できることなどを説明。「われわれの目的はマッチングサービスの展開ではなく、人に寄り添った業界改革。その先にこそ軽貨物運送を含む物流業界の未来があると信じている」と力を込めた。
宅配クライシス克服を語る松本氏
後編はコチラ:
ロジスティクスの世界に集え、スタートアップよ!【LOGI-TECHサミット2019開催報告(後編)】
(藤原秀行)