米C&Wが19年第2四半期リポート公表、物流施設需要は引き続き旺盛
米不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は7月23日、2019年第2四半期(4~6月)の国内物流施設市場動向に関するリポートを公表した。
首都圏の東京湾岸エリアに位置している先進物流施設の賃料は前年同期(18年4~6月)より6・3%、外環道沿線は5・0%、神奈川内陸エリアは2・1%それぞれ上昇。好立地の施設への需要が引き続き旺盛なことを示した。
リポートはまた、特徴ある動きとして、不動産オーナーにより冷凍・冷蔵倉庫が供給されていると指摘。「生鮮食料品配送の増加に加え、既存施設が更新時期に来ていることもあり、従来見られる冷蔵倉庫業者の自己保有型から、運営と所有を分ける動きが加速することも予想される」と分析した。
首都圏の募集賃料の推移(C&Wリポートより引用)※クリックで拡大
「人口集積地近くは雇用確保と配送効率の観点から賃料上昇継続へ」
リポートは前提となる経済動向に関し、米中両国の貿易摩擦による電子部品の需要低下のあおりで日本の今年1~3月の輸出額は前年同期から減少したものの、経済成長率は2・2%を記録したと説明。「日本経済は来期も引き続き成長を維持していくとみられる」と堅調な予想を示した。
物流施設市場を見ると、需要は引き続き健全に推移していると分析。需給バランスの崩れが続いていた大阪湾岸エリアも、昨年襲来した台風からの復旧・復興という偶発的需要が生まれた後も順調に空きスペースが消化された上、昨年3月の新東名道開通で東名阪道の渋滞が大幅に緩和されたと説明。「貨物車の約8割が新名神への経由利用に転換されるなど、関西エリアの交通環境に大きな改善が見られた」と解説した。
C&Wのロジスティクス&インダストリアルサービスの前田謙アソシエイト・ディレクターは「eコマース普及で最新スペックの倉庫需要が増加し、既築倉庫および新規供給スペースの消化が進んでおり、大手IT企業が数万坪の倉庫を全棟賃借するような動きが見られる」と指摘。
深刻な人手不足が続く中、ITによる業務効率化やロボットなどを使った自動化を目指す動きがスピードアップしており、「自動化が将来の標準スペックに与える影響に注目したい」と語った。
併せて、現状の自動化導入は物流業務全体の流れの中ではまだ部分的にとどまっており、人手を介したオペレーションが基本的に行われていると強調。雇用確保が今も物流施設開設に際しての大きな課題になっているとの見方を示した。
そのため、「人口集積エリアに近い立地では、雇用確保と配送効率の観点から賃料の上昇が見られ、今後も継続すると思われる」と展望した。
(藤原秀行)
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