国内初の天候考慮可能な機能も搭載
トクヤマとグリッドは11月20日、AIの技術を活用した配船計画最適化システム「ReNom VESSEL」(リノームベッセル)を共同で開発し、今年10月にトクヤマが国内で運航している内航船向けシステムとして運用を始めたと発表した。
グリッドが新たに開発した、米国の関係機関が提供している天候のデータを考慮した機能を搭載し、より最適な配船計画を立案できるようにした。両社は同機能を備えた内航船向けAI配船計画最適化システムの運用を開始したのは国内で初めてと説明している。

セメント専用船「徳継丸」(プレスリリースより引用)
トクヤマは全国40カ所以上で展開している各拠点へセメントを海上輸送する際、長期契約している10隻を活用しているが、在庫状況や天候、安全在庫の確保、港湾条件など、さまざまな制約を総合的に考慮して配船計画をまとめる必要に迫られている。従来は高度な専門性を要する配船計画を、熟練の担当者が立案してきたが、大きな負荷や属人性の解消が課題だった。
「ReNom VESSEL」はグリッドの配船計画最適化開発プラットフォーム「Simbase」(シムベース)を活用。船舶や拠点の複雑な制約条件と荷役時間、在庫量の計算を再現しながら、グリッドが独自に開発した「ルートファインダー」機能を生かし、最適な航路探索を可能にした。
さらに、航路上の波高や風速等といった気象予報を考慮し、天候リスクを踏まえた最適な配船計画を実現できるようにした。
「ReNom VESSEL」を使うことで、トクヤマは燃料費や港湾関連費用などを削減できると想定。運用開始前の配船実績とAI配船計画の比較で年間5%費用を低減できると試算している。計画作成の効率化で担当者の負荷も大幅に減らせると見積もっている。
併せて、海上輸送時のCO2排出量削減も見込んでいるほか、セメントの需要動向に応じて保有船舶の最適隻数を高精度にシミュレーションすることで船舶の維持コスト抑制にもつなげられるとみている。
両社は今後、トクヤマが手掛けている他の製品群にも最適化システムを適用していくことも視野に入れ、システムの高度化・DXを促進する考え。
オンラインで11月20日に記者会見したトクヤマ物流グループの藤原直樹氏は「化成品など他の製品にも有効活用できると考えている。セメントの内航船でしっかり問題なく運航できてメリットを検証できた段階で適用の拡大を進めていきたい」と説明。内航船をリプレースする際、天候などより精緻な情報を基に適切な船舶を選択できる効果にも期待していることを明らかにした。
グリッドのエンジニアリング第1部の津田浩希氏は「計画作成時間をおよそ半減することができているとうかがっている」と述べ、他の製品群への適用を強力にサポートしていくことに意欲を示した。
(藤原秀行)




