福利厚生拡充、人事労務部門の印刷・郵送など業務効率化効果も
セブン-イレブン・ジャパン系のセブン銀行が、企業や団体が発行する各種証明書を全国の2万以上のセブン-イレブン店舗に設置しているマルチコピー機で受け取ることができる「コンビニ証明書受取サービス」に注力している。
企業の従業員や団体の職員はさまざまな手続きに不可欠な就労証明書などを24時間・365日、好きなタイミングで手に入れられるのがメリットだ。急に書類が必要になった場合も速やかに対応することが可能。企業や団体にとっても書類の印刷や郵送といった人事労務部門の業務を大幅に効率化できるのが魅力だ。
既に全国展開している企業などが相次ぎサービスの利用を始めている。セブン銀行は同サービスで各地に支社や支店、営業所を構えている企業や団体の福利厚生を後押しすることを念頭に置いており、営業拠点が多い物流企業にも照準を合わせている。
7割超がコンビニ受け取りを選択
同サービスは2024年2月、セブン銀行の証明書発行システムを活用して提供を始めた。当初は同行の残高証明書や取引明細書といった各種証明書が対象。顧客からかなりの好評を得た。その後、企業や教育機関はまだまだ紙の証明書が主流だったため、さまざまなニーズが見込めると判断し、25年5月には学校の在学証明書や卒業証明書、企業の源泉徴収票や就労証明書、健保資格証明書、離職票などにカバー範囲を広げた。
企業や団体のシステムとセブン銀行の証明書発行システムを連携させ、従業員や職員が企業や団体に各種証明書の発行を依頼すると、証明書発行システムにデータを送信するとともに、従業員や社員にメールでQRコードを発行する。セブン-イレブンのマルチコピー機にスマートフォンなどに表示したQRコードをかざせばすぐに証明書を手に入れられる。PDFで証明書を送付することにも対応している。

サービスの利用イメージ(セブン銀行提供)
同サービスの立ち上げに携わったセブン銀行の臼井元輝ATM+企画部調査役は「自宅にプリンターを持っていない方もいるため、マルチコピー機を使うことで鮮明に印刷した書類を手に入れられるのはメリットが大きい」と分析する。
2025年5月に日本体育大学が同サービスの利用をスタート。それまでは卒業証明書や成績証明書などは郵送と窓口での手渡しのみ対応していたが、郵送の場合は受け取りまでに最短でも1週間程度を要していた。同サービスを使い始めてからは最短2日後まで短縮することができているという。
セブン銀行によれば、25年の7月には申請者全体の73%がコンビニ受け取りを利用したという。大学側にとってもペーパーレス化や人件費削減などの効果を得られた。同年10月には宮崎大学も同サービスの利用開始に踏み切った。
さらに、25年10月には企業として初めて、古着などを扱うリユースショップ「2nd STREET」(セカンドストリート、セカスト)や中古のスマートフォンの販売・レンタルなどを手掛ける「GEO」(ゲオ)を全国に展開しているゲオホールディングスが同サービスの利用を始めた。従業員は約1万5000人に上り、就労証明書などの発行業務が頻繁に発生している。
それまでは本部から各店舗宛てに郵送した書類を店長から従業員に手渡しするか、個人に直接郵送するかのいずれかを併用して実施してきた。しかし、個人情報を掲載している書類を各店舗に送ることのリスクに加え、やはり書類が実際に届くまで時間を要し、人事労務部門担当者の負荷も大きかった。
臼井氏は「証明書によっては、各種手続きのために提出する自治体ごとに求めている書式が異なるため、システム対応しにくく、本部で申請した人の勤務時間などを調べて確認しながら手作業で作成しなければならず、非常に手間だった。当社のシステムを活用できるため自社の大規模なシステム改修が不要ということを非常に評価いただいた」と説明する。
料金は1件当たり税別300円。会社負担にするか、申請した従業員や職員がそれぞれ負担するかのいずれかを選択できるようにしている。
セブン銀行が現在、有力なターゲットの1つとして意識しているのが、全国に拠点が多く設け、従業員数もボリュームがある小売業や物流業だ。物流企業からも既に問い合わせは寄せられているという。臼井氏は「たくさん拠点があるので絶対ニーズがあると期待している。積極的にサービスのメリットを告知していきたい」と意気込む。
セブン銀行は今後、証明書以外でも、例えば出先で業務に必要な書類を印刷、受け取るといった用途も期待できるとみており、同サービスのメリットを前面に打ち出しつつ、新たな需要の掘り起こしを図っていく構えだ。
(藤原秀行)








