生産ラインのレイアウト自由変更可能に、作業スタッフの動作データを収集・分析も
NTTドコモとノキアグループの日本法人ノキアソリューションズ&ネットワークス、オムロンは9月10日、製造現場で次世代高速通信規格「5G」の活用に関する実証実験を共同で行うと発表した。人手不足などの課題に立ち向かい、製造現場の生産性を高めていくのが狙い。
3社は生産設備を5Gの無線通信で接続し、部品を運ぶオムロンの自動搬送ロボット(AMR)と組み合わせることで製品の種類に応じて生産ラインのレイアウトを自由に変更できるようにしたり、センサーなどを通じて作業スタッフの動作に関するデータを収集、分析して作業の効率や習熟度を高めたりすることを想定。2019年中に詳細を詰め、滋賀県草津市のオムロン草津事業所で実験を始める方向で調整している。
5Gは高速・大容量の通信で、遅延が少なく、数百から数千の機器を同時に接続できるといった特性を持つ。
製造現場では生産設備の制御機器をケーブルで相互に接続しているケースが多く、生産ラインのレイアウトを迅速に変えるのは難しいのが実情。3社は5Gを生かしてより製造の効率を高められるかどうかを見極める。将来的には5Gを基にAGVを一度に大量に動かすことなども想定している。
東京都内で記者会見したオムロンの福井信二執行役員(インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー技術開発本部長)は「5Gを使ってこれまでに誰も見たことがない世界に入っていきたい」と述べ、新たな製造現場の構築に強い意欲をのぞかせた。
ノキアソリューションズ&ネットワークスの木田等理NTT事業本部長は「5Gの特性が(工場内で)どのような影響を受けるかを実証した上で、未来の工場を実現したい」と語った。NTTドコモの中村武宏執行役員5Gイノベーション推進室長は「人や物が激しく移動する製造現場内の実験は当社にとっても新たなチャレンジ。電波を反射する金属類やノイズを出す機器が数多く存在している環境への対処が課題になる」と解説した。
会見後の撮影に応じる(左から)NTTドコモ・中村氏、ノキアソリューションズ&ネットワークス・木田氏、オムロン・福井氏
(藤原秀行)