AI動態管理システム活用、ソフトバンクと連携し通信環境向上も
軽貨物とトラックドライバーのマッチングサービス「Pick Go」を展開しているスタートアップ企業のCBcloudは、一般貨物を手掛ける中小運送事業者らの経営基盤強化や効率化のサポートに注力している。自社のサービスを使って車両の動態管理に関する負荷軽減を後押しするほか、資本・業務提携しているソフトバンクと組み、業務のIT化を促進することも視野に入れている。
マッチングサービスはドライバーと荷主の双方にとって使い勝手を高めていることなどが評価され、着実に普及している。同社は「運送業界の構造改革やドライバーの労働環境改善と地位向上など、業界が抱えるさまざまな課題解決に取り組む」(松本隆一代表取締役CEO=最高経営責任者=)との理念実現に向け、マッチング以外の分野にもサポートを拡大していきたい考えだ。
ドライバー登録が1万5000人突破
PickGoは2016年にサービスを開始、17年に現在の名称となった。見積もりまで迅速に取ることができるほか、ドライバーの配送実績に関する評価を参考にして質の高いドライバーを選択可能としていることなどが歓迎され、登録ドライバーが全国で1万5000人を突破。物流業界でも存在感のあるマッチングのプラットフォームとなっている。
併せて、佐川急便と業務提携し、同社向けに専用のマッチングシステムを展開。佐川が宅配便以外にも多様な輸配送サービスを提供する「TMS(トランスポート・マネジメント・システム)」の規模拡大を支えるなど、荷主と運送事業者の双方の需要に応えようと新たな施策を矢継ぎ早に打ち出している。
宅配のラストワンマイルを効率化するための独自ソリューション「LAMS」も早期の実用化を目指し、大手物流事業者とテストを実施するなど取り組みを加速。過去の配達実績などのデータを基に、最適な配達ルートを自動作成することで不在宅への配達を回避する機能を持たせようとしている。
CBcloudは軽貨物に加え、18年には一般貨物の領域を対象とし、AI(人工知能)やブロックチェーン技術を活用した動態管理システム「ichimana(イチマナ)」をリリース。車両とドライバーの位置情報や作業情報をリアルタイムで確認できるのが強みだ。現在は運送事業者に初期費用無料でリリースしている。
このイチマナを柱に据え、利用をさらに呼び掛けていくことで、業務の効率化を支えていこうと考えている。同社は将来、イチマナで得たデータを生かして遠距離の配送依頼を最適な運送会社のトラックにマッチングさせる新たなシステムの構築を目指しており、実現すれば一般貨物の事業者サポートがさらに拡充しそうだ。
「ichimana」の専用ウェブサイト
悩みを踏まえた“ボトムアップ”のサービス提供
業務・資本提携しているソフトバンクは、事業者の通信環境整備などで協力していく予定だ。現状、携帯電話はいまだにガラケーの機種を使っていたり、電話やファクスでのやり取りが多く残っていたりと、運送業界は他の産業に比べてデジタル化で大きく後れを取っている感が否めない。
そこで、ソフトバンクグループのスマートフォンや通信サービスを積極的に提供、業務を効率的に進められる基盤を整備することを期待している。そこにイチマナなどのCBcloudのサービスを組み合わせることで、提携の効果をさらに大きくしていきたい構想だ。
松本CEOは「当社はもともと運送事業を営んでおり、ノウハウや知見を蓄積できているのが強み。そこから、ドライバーの方々のお悩みをきちんと踏まえた“ボトムアップ”のサービスを構築して業界を変えていきたいと考えている。軽貨物に加えて一般貨物の領域でも当社のそうしたスタンスを発揮していきたい」と意気込みを見せている。
(藤原秀行)