物流施設は「ネットワーク化」で付加価値向上可能に

物流施設は「ネットワーク化」で付加価値向上可能に

CBRE不動産フォーラムで市場展望(後編)

シービーアール―(CBRE)が6月7日、東京都内で開いた不動産フォーラムに関する記事の後編は、関係者によるパネルディスカッションに焦点を当てて紹介する。出席者は物流業界が抱える深刻な人手不足を乗り越え、持続的に発展していくためには、物流施設が相互に情報を共有し、庫内スタッフの融通なども可能になる「ネットワーク化」が1つのキーワードになるとの認識で一致した。


パネルディスカッションの様子

施設環境整備はスタンダード化、さらにプラスアルファ提供が必要

パネルディスカッションは「人手不足時代の物流戦略―勝機はどこに?」とのタイトルで行われ、プロロジスで開発本部副本部長と開発部統括部長を務める中村明夫シニアバイスプレジデント、EC向けフルフィルメントサービスなどを展開しているアッカ・インターナショナルの加藤大和代表取締役、人材派遣業を手掛けるSBSスタッフの小川和男執行役員営業本部長の3人が登壇。CBREインダストリアル営業本部の佐藤亘シニアディレクターが進行役を務めた。


パネルディスカッションに参加した(右から)小川氏、中村氏、加藤氏、佐藤氏

小川氏は、最近の物流業界向け人材派遣事業の展開に関し「従来は短期(の派遣)が中心だったが、ここ数年は常に忙しいため、長期でずっと同じ人に来てほしい、多くの人に来てほしいとのニーズが高まっている。非常に苦戦している」と説明。

中村氏はプロロジスが日本法人を開設して今年で20周年を迎えたことに触れ、共用部のカフェテリア整備や清潔感ある内装など物流施設の就労環境向上へ先駆的に取り組んできたと強調。その上で「今は施設が働きやすい環境になっていれば働き手が定着するかといえば、必ずしもそうではないのが実情。施設環境整備はスタンダードとなっており、そこからプラスアルファで何が提供できるかまで考えないと雇用の課題は解決できない」と指摘、物流施設ユーザーの求める水準が高度化していることを明かした。

加藤氏は主要顧客のeコマースについて「売り上げが伸びているが、それ以上に激変しているのがビジネスを支えるバックヤード機能。そして(物流施設の)労働力不足がさらに悪化しており(需給の)ギャップを埋めないと通販を展開されているメーカーや小売りの方々に加え、エンドの消費者の方々にもどんどん影響が出てきてしまう」と語った。

また、ロボットを物流施設に導入した際、人を減らされるのではないかという誤った噂が現場で広がってしまったことを振り返り、人間とロボットが共存してオペレーションのパフォーマンスを改善し雇用を守ることが目的と施設内の働き手に十分理解してもらうのが重要との認識をにじませた。


小川氏


中村氏

仕事で“個”を重視する傾向強く

最近の傾向として、小川氏は「仕事を選ぶというより、働く環境を選ぶ方が非常に増えている。あの施設のあの仕事ならいい、と言う人が多くいる。施設に関しては機能の充実はもちろん、1人きりの“個”になれる場所を要望されるのが多い。施設から最寄り駅までの送迎バスでも時間は長くなってもいいから1人で座っていたい、といった声が結構多い」と明かした。

さらに、法改正の影響で「派遣は使い勝手が非常に悪くなっているため、企業の直接雇用をサポートできるようなサービスに注力している」と説明。物流施設が稼働した際のオープニングスタッフの採用代行などを手掛けていることを明らかにした。

中村氏は独自策の一例として、千葉で開発中の「プロロジスパーク千葉1」「千葉2」を紹介。共用部の食堂に1人でリラックスできるスペースを作るなど、“個”を重視する従業員に配慮した設計を導入していることを説明した。他にも、人材派遣会社の担当者が常駐できるようなオフィススペースを整備し、派遣スタッフを施設内の複数のテナント企業間でシェアリングできるようにすることを検討したり、夏祭りのようなイベントを計画したりといったことも報告した。

今後の物流業界や物流施設の展望として、小川氏は「大きなものを動かすところには最近のテクロノジーを入れて効率化を図るだろうが、小ロット・多頻度出荷のように人の目や人の手を必要とする細かな作業を行っているところもある。資金の面でなかなか最近技術を入れられない企業もある」と推察。将来にわたって物流現場には人間が必要とされるため、先進技術と共存共栄を図っていくことが重要との見解を示した。

加藤氏は「ロボットは3年もすると陳腐化してしまうが、捨てるのではなく使い続けなければならない」と指摘。そこで物流施設をネットワーク化し、例えば高回転の商品を保管・出荷する「Tier1」、リザーブする商品の「Tier2」、季節商品の「Tier3」―といったように役割を明確に区分し、Tier1は常に生産性の高い最新ロボットを投入する一方で、他のTier2、Tier3は古いロボットを活用し続けていく、との活用方法が考えられるとの持論を展開した。

さらに物流施設をネットワーク化しておけば、ある荷主が急にスペースを拡大する必要に迫られても、空いている物流施設をすぐに手当てできるといった有効活用も可能になると強調した。

中村氏は、物流移設は平屋建てがメーンだった米国で、初めて多層階の施設をシアトルで開発した事例に触れ、「当社のリピートカスタマーとなっていただくことで当社からさまざまな付加価値を提供できる」と戦略を語った。


加藤氏


佐藤氏

(藤原秀行)

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