従量課金制の「RaaS」提供、初期投資軽減しハードル解消図る
三菱商事は、物流分野への取り組み強化の一環として、倉庫向けのロボットサービスを本格的に展開する。労働力不足が深刻化し、庫内作業の機械化・省人化が不可避となっている状況を踏まえ、グループで物流事業を手掛ける三菱商事ロジスティクス(MCLOGI)と連携。顧客企業に対し現場の業務に最適なロボットの選定などをサポートして、導入のハードル解消を手助けすることを想定している。
現状では倉庫でロボットを導入する際、巨額の初期投資を強いられることや具体的な業務効率化の成果がまだ十分蓄積されていないことなどがネックとなっており、二の足を踏む企業も多い。そのため、三菱商事がさまざまなロボットを保有し、ニーズに適した機種をその都度提供、顧客企業は使用した分だけ料金を支払う従量課金制の「RaaS(Robot as a Service)」と呼ばれるサービス形態を普及させ、3PL事業者や荷主企業が積極的にロボットを活用する道筋を付けていきたい考えだ。
同社は12月18~21日に東京・有明の東京ビッグサイトで開かれる「2019国際ロボット展」でも、出展者セミナーでロボット対応の戦略に関する情報を発信するなど、RaaSの意義を幅広く訴えていく予定だ。
「RaaS」の重要な役割を担うバトラー
ハードとソフト両方の保守やクラウド運用も担当
三菱商事は現在、コンビニや食品卸などを担当しているコンシューマー産業グループの物流事業本部が核となり、物流分野が抱える人手不足やデジタル化の遅れといった諸課題解決に貢献していこうと取り組みを加速。RaaSの展開もその1つと位置付けている。
同社がRaaSに利用するのが、インド発祥で物流ロボットシステム開発を手掛けるGreyOrange(グレイオレンジ)製の物流ロボット「Butler(バトラー)」だ。バトラーは商品を保管している棚の下に潜り込んで持ち上げ、ピッキング作業のエリア近くに搬送する仕組みで、三菱商事は「棚流動型ロボット」と称している。AI(人工知能)を駆使し、出荷頻度の高い棚は作業エリアの周辺に位置して速やかに動かせるようにするなど、在庫配置の効率化を図ることが可能なのが大きな特徴。
同社とMCLOGIはこのほど、横浜市のMCLOGI京浜事業所にバトラーを複数台導入。MCLOGIの顧客企業の庫内オペレーションに活用している。得られた知見や経験はRaaSにフィードバックしていく構想だ。現場で実際に使っていることが強みになると見込んでいる。
RaaSは月額制を採用し、顧客企業が自らの商品販売の繁閑差を考慮し、使いたい時に必要な分だけロボットを活用できる仕組みを構築。大きな物流センターを構えるEC事業者などから、当初は小規模で導入し事業の成長とともに台数を増やしたいと希望するスタートアップ企業まで、多様な要望に応えられるよう考慮している。
京浜事業所に導入したバトラー(三菱商事提供)
単にロボットを貸し出すだけではなく、ソフトウエアやクラウド運用、ロボットとソフトウエア両方の保守と一連の作業を全て三菱商事サイドがカバー。導入から運用に至るまでトータルで支援する姿勢を打ち出しており、どのロボットが自分の現場に合っているかを選んだり、複数のロボットを同時に運営していく手法をアドバイスしたりすることも計画している。同社サイドが包括的にサポートすることで、倉庫ロボットの恩恵を中小企業も受けられるよう配慮していく予定だ。
併せて、バトラー以外のロボットもラインアップに加える方向で選定を進めている。多様なロボットをそろえ、幅広い業種の自動化要求に応えられるようにしていくことを目指す。三菱商事が包括的に支援を手掛けることで、顧客企業が実際にロボットを導入するまで3カ月程度で済ませられるようにする方針だ。
(藤原秀行)