首都圏の大型物流施設、21年は新規供給が過去最高の65万坪と予測

首都圏の大型物流施設、21年は新規供給が過去最高の65万坪と予測

CBREが今後2年間対象の不動産市場リポート公開(前編)

シービーアールイー(CBRE)は1月21日、2021年までの国内不動産市場を展望した「不動産マーケットアウトルック2020」を公表した。

大規模な先進的物流施設に関しては、主要な借り手のECの成長が続くことなどから首都圏では現時点で21年に新規供給が65万坪に上ると予想。同社が04年に調査を開始して以降、年間ベースでは19年の60万坪(実績見込み)を上回って過去最高となる見通しを示した。近畿圏や中部圏についても好調な地合いが続くとの想定を明らかにした。

前編では、首都圏の市場動向に関する分析内容を紹介する。調査対象は延べ床面積が1万坪以上のマルチテナント型案件。

外環道エリアの実質賃料は5%超上昇と推測

「アウトルック2020」によると、首都圏の大規模な先進的物流施設の新規供給は現時点で20年が43万坪と、19年から3割程度減る見込み。ペースはいったん落ち着くが、21年には再び加速するとのシナリオを描いている。

このため、空室率は20年中、2%前後で推移するものの、供給が集中している21年後半にはやや上昇し、第4四半期(10~12月)時点で5%程度になるとみている。実質賃料は21年第4四半期までに2・1%上がると予想。上昇基調は続くものの、そのペースは緩やかになると見積もっている。

主要4エリア別の予測では、東京湾岸の「東京ベイエリア」は20、21年にそれぞれ1棟ずつ完成する予定となっているが、エリアで空きスペース自体が非常に限られているため、空室率は1~3%程度の低水準で引き続き推移すると説明。賃料は21年第4四半期時点で、19年第4四半期から3・4%アップすると試算している。

「外環道エリア」は今後2年間で5棟の完成が計画されており、このうち3棟は21年第4四半期に集中しているため、21年半ばごろまでは空室率が低い水準をキープするとの見解を表明。21年第4四半期の実質賃料は19年第4四半期から5・3%の上昇と、4エリアの中で最も高い率になると予想している。


首都圏の大規模物流施設の需給バランス(CBRE資料より引用)※クリックで拡大

圏央道周辺の賃料上昇は小幅か

「国道16号エリア」は20年の新規供給が22万坪と、19年の34万坪からは落ち着くため「需給が引き締まった状態が続くとみている」と強調。ただ、21年には42万坪と再び増勢に転じ、空室率が21年第4四半期には5%台に達するとの見通しを明らかにしている。

リーシングに時間を要する場所が出てくる可能性があるが、「これまで首都圏の約半分の需要を吸収してきた実績から、実質賃料は全体的には堅調な上昇を示す」と前向きな展望を示しており、21年第4四半期時点で19年第4四半期から2・4%アップすると伝えている。

「圏央道エリア」は供給が絞られたことなどが追い風となり、空室率が18年第3四半期(7~9月)の21・2%から直近の19年第4四半期は2%程度まで改善されるとの見通しに言及。他のエリアで空きスペースが少ないこともあって、向こう2年間も3~6%のレンジで推移する可能性を指摘している。

ただ、隣接する国道16号エリアで21年に大量供給が予定されていることから、実質賃料は弱含む展開も想定され、21年第4四半期の時点で19年第4四半期から0・9%のアップと、主要4エリアの中で最も小幅にとどまると見積もっている。

(藤原秀行)

物流施設/不動産カテゴリの最新記事