【独自取材】「先進的施設を物流の存在意義伝えるメディアとして活用」

【独自取材】「先進的施設を物流の存在意義伝えるメディアとして活用」

日本GLP・帖佐社長独占インタビュー(前編①)

「先進的施設を物流の存在意義伝えるメディアとして活用」(前編①)

「アルファリンクのコンセプトはより進化・成長させる」(前編②)

「大量供給続いても需給は逼迫、物流施設開発を抑制せず」(後編①)

「トランコムや三井物産との協力関係は順調に進捗」(後編②)

日本GLPの帖佐義之社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの独占インタビューに応じた。

帖佐社長は昨年公表した、より高い付加価値を生み出す大型物流施設の独自ブランド「ALFALINK(アルファリンク)」が物流企業や荷主企業から好評を博していると説明。コンセプトで打ち出した「施設の『見せる化』」の具体的な方向性に関し、庫内で展開されている高品質な物流サービスや良好な職場環境、物流自体の存在意義の大きさを社会へ発信していくメディア(媒体)として先進的な物流施設を活用していきたいと強調、物流業界のイメージアップに一層貢献していく考えを示した。

ロジビズ・オンラインでは帖佐社長の発言内容を前後編に分けて紹介する。


インタビューに応える帖佐社長(中島祐撮影)※クリックで拡大

関連記事:日本GLPが物流施設新ブランド「ALFALINK」創設、神奈川・相模原の大型施設が第1号に

物流の枠を超え幅広い用途を備えた施設に

――2019年の御社の事業活動を振り返ると、大型物流施設の独自ブランド「ALFALINK(アルファリンク)」を発表されたことが最大のイベントだったように思えます。
「物流不動産ビジネスに関わって20年弱くらいになりますが、いわゆる先進的物流施設はこれまでにいくつかのフェーズを経てきていると感じています。第1フェーズがいわゆる汎用型です。倉庫はメーカーや小売事業者が自分たちの商品を扱うのに適した形にカスタマイズされたものから汎用型に変わっていきました。第2フェーズは地震の影響がすごく大きいと思いますが、災害が起きても物流を寸断させない物流施設にすべく、免震構造を採用したり、さまざまなBCP対策を講じたりしてきました。第3フェーズが労働環境の変化です。アメニティー設備を充実させるなど快適性を追求することで労働生産性を上げたり、事故やミスを減らしたりしていきました」
「そして第4フェーズがほぼ現在に相当すると思いますが、自動化、ロボット化。オートメーションやテクロノジーを用いた物流施設です。いつも私たちが申し上げているように、もう物流施設という言葉の枠組みに収まらない段階まで来ています。その中で昨年発表したアルファリンクは、今申し上げた4つのフェーズを全て網羅した上で、さらに次のフェーズの先進的物流施設の在り方を定義できたと自負しています。すなわち、物流の枠を超えた、地域貢献や公共性、災害対応などの幅広い用途と機能を兼ね備えた施設です。そうした新たなコンセプトを打ち出せたということで、非常に昨年は手応えのある1年になったと感じていますね」

――アルファリンクのコンセプトへの反応はいかがですか。
「アルファリンクを発表した昨年の11月25日、関係者をお招きしたパーティーで、ブランドのデザインを担当したクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんと私で対談させていただいた後、お客さまのテーブルを回りましたが、皆さまからはすごくよかったと仰っていただけました。アルファリンクは『Open Hub(オープンハブ)』『Shared Solution(シェアードソリューション)』『Integrated Chain(インテグレーテッドチェーン)』の3点が軸になりますが、特にオープンハブの考え方は極めて反応が良かったですね」
「オープンハブは従来見せることのなかった倉庫をあえてオープンにすることで、高い物流品質や優れた職場環境を訴求する『見せる化』の考えを打ち出しています。物流企業の方々にとってみれば、自分たちの手掛けるクオリティーの高い物流サービスを顧客に売り込むため、あえて作業している場所を見せるということで宣伝効果が期待できます。荷主企業の方々にしてみれば、自分たちの製品がいかに大切に扱われ、いかに安全安心に留意した物流プロセスを経てお店の陳列棚に並んだり消費者の手元に届いたりしているかを見せることは製品の広告宣伝の場にもなります。荷主企業と実際に作業をする物流企業の双方にとって利益を生み出すプロフィットセンターになり得るという性質を、今の時代の物流施設は持っているのではないかと訴えたのがオープンハブの考え方です」
「つまり、物流施設自体をメディア(媒体)化して情報を積極的に発信することをお手伝いし、施設をお使いになる企業が展開されている事業をよりプラスの方向に持っていこうということなのです。その部分に関してはほぼ全ての来客、来賓の方々が賛同してくれました。自分たちもすごくそういうところには意識を持っているとか、必要性を感じているとか、ぜひ当社と組んでそういったものを造り上げていきたいといった声を多数いただきました」

――メディアとして具体的にどのように物流を見せる化するのでしょうか。
「ただ単に高い技術力を見せるだけではなくて、何のために見せるのかという部分が重要です。例えば物流業そのものがいかに人々の暮らしに役立っているのかといったような、もっと本当の、内部の核心的なところを見せる化するのがオープンハブの狙いです。物流はバックヤードではなく前面に出すべきものであり、コストセンターではなくプロフィットセンターだということを発信していくということなのです」
「ですから、どう見せるかは人それぞれだと思います。施設の見学コースを設ける場合もあれば、スマートフォン用アプリを介してカメラで庫内を撮影した写真や動画を遠隔で見せるというやり方でもよいかもしれません。先ほど申し上げた原点がしっかりしていれば、見せる手法自体はどんな形であってもいいと思います」


「GLP ALFALINK相模原」の完成イメージ。大型施設が5棟立ち並ぶ計画。右は共用施設「リング」(いずれも日本GLP提供)※クリックで拡大

不動産業界から思いを代弁

――アルファリンクの第1号となる神奈川県相模原市の「GLP ALFALINK 相模原Ⅰ」では見せる化の具体的な内容は決まっていますか。
「オープンハブの大事な意味は公共性だと思っています。先ほどお話しした先進的物流施設の変遷の中の第2フェーズで安全安心、災害に強いということがありましたが、その当時からわれわれは立地する自治体と災害時の協力に関する協定を締結したり、地域住民の方々に休憩施設を開放したりといった取り組みを進めてきました。災害時だけではなく、日ごろから人々が集う場所としての物流施設もあっていいのではないかと考えたのです」
「先ほども申し上げた通り、一般市民の皆さまにとって物流はまだまだ身近なものとは言えませんが、施設を開放させていただくことで住民の皆さまに施設をより身近に感じてもらったり、物流に関わる職業に興味を持ってもらったりするような機会を作り出せるのではないか。GLP ALFALINK相模原に関しても、新しい開放的な物流施設を造ることにより、お子さんが社会見学に来ることもあるかもしれないし、芝生広場で遊んでいるうちに、物流という業務に興味を持つこともあるかもしれません。パートタイマーの皆さんも、こんなにきれいな施設でぜひ働いてみたいと思ってくださるかもしれない。物流が身近に存在していない人でも興味を持ち、親しみを感じてもらえるような役割を物流施設が果たせるのではないでしょうか」
「さらにそうやって日ごろからお使いいただき、親しんでもらえれば、災害時はここが避難所だということが頭に入るでしょうし、災害の際は家族でここに集まろうという使い方も可能になります。館内で働かれている方々や物流業界だけでなく、地域の方々にとっても開かれているという意味でのオープンハブなのです。この点に関しては、例えば相模原市長とお話しをしていても、ものすごく喜んでくださり、共感していただけます。ぜひ官民一体となってやっていきましょうというお言葉を頂戴しています」

――メディア化するのは他の物流施設も同様でしょうか。
「その通りです。相模原に限定する必要は全くありませんし、当社の物流施設だけに限ることでもないでしょう。アルファリンクをきっかけにいろいろな方が啓発され、動きが広がっていくのが望ましいと思います。アルファリンクを売り込みたいという狭小な思いだけでメディア化を提唱しているわけではありません。より物流業界が盛り上がり、物流に携わっている方々が誇りを持って業務に従事したり、お子さんが将来働く場所として物流業界に興味を持たれたりして、物流業そのものが発展していく1つの手助けになれば、という思いが基本にあります」

「先進的施設を物流の存在意義伝えるメディアとして活用」(前編①)

「アルファリンクのコンセプトはより進化・成長させる」(前編②)

「大量供給続いても需給は逼迫、物流施設開発を抑制せず」(後編①)

「トランコムや三井物産との協力関係は順調に進捗」(後編②)

(藤原秀行、中島祐)

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