都市部の空路配送実現貢献へ、上空利用権仲介サービス拡大
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ドローン(無人飛行機)の安全飛行支援を手掛けるスタートアップ企業トルビズオン(福岡市)の増本衛社長CEO(最高経営責任者)は2月20日、茨城県つくば市で、同市などと連携して実施した国内初の住宅地上空を飛ぶドローン配送実験の後、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。
増本氏は、土地所有者とドローンユーザーが上空の利用権を取引できるようインターネットで仲介する同社の独自サービス「sora:share(ソラシェア)」に関し、ドローン物流を早期に実現していく上で積極的に利用を広めていく姿勢を強調。
政府がドローンに関し、操縦者から見えない遠距離を飛ばす「目視外飛行」を都市部など有人地帯で実現する目標として2022年度をめどとする方針を打ち出していることにも触れ、ソラシェアも活用しながら26年ごろに都市部でドローン物流を本格的に展開できるよう取り組む考えを示した。その前提として、26年までに全国でドローン専用空路を1万本程度整備していきたいとの目標を明らかにした。
つくば市の実験後、報道各社の取材に応じる増本氏
各地で実証実験展開に意欲
同社は14年設立。民法は土地の所有権が上空にも及ぶと規定しているため、第三者が所有している土地の上空をドローンが飛ぶ際には事前の承諾が求められている。ソラシェアは土地所有者とドローン利用者の双方にサイトへ登録してもらい、利用権を有償で貸し借りすることで支障なく飛行できるようにするのが狙いだ。
これまでにドローン物流の早期実現へさまざまな自治体などと実証実験を重ねており、つくば市の実験では、トルビズオンがドローン飛行ルートの下に位置する住宅の住民らから事前に承諾を得るなど、実験の実務的な準備の中心を担った。
増本氏はドローン物流に関し「過疎地の“買い物弱者”を助けるのは非常に重要なことであり、当社としてもぜひサポートしていきたいが、そこだけにフォーカスしているとビジネスにならない」と指摘。トラックドライバー不足が解消される見通しが立っていないことも踏まえ、「ソラシェアというモデルを作ることで地権者の方々の許可をしっかりと取得し、土地の上を飛ばせるようにする仕組みを整えたい」と語った。
また、19年にセイノーホールディングス傘下の九州西濃運輸、農業事業を手掛けるモエ・アグリファームの2社と連携したことに触れ「いろんな町ごとにドローン物流を実現するモデルは異なってくるので引き続き実証していきたい」と物流事業者との協力にも関心を見せた。併せて、「スマートシティの先進モデルに取り組まれているつくば市さんとコラボレーションすることは非常に重要」と語り、同市で実施した実験の成果を今後のドローン物流実現へ生かしていきたいと意欲をのぞかせた。
ドローン専用空路の設定については「めったやたらといろんなところに作るのではなく、ちゃんと需要があるところに作っていきたい」と述べ、採算や需要の度合いを重視しながら選定していく考えを示した。
つくば市の実証実験で住宅地を飛ぶドローン
(藤原秀行)