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LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編⑤冷蔵倉庫が直面する課題

LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編⑤冷蔵倉庫が直面する課題

老朽化や冷媒フロンへの対応急務

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2015年3月号で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は雑誌発刊当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

冷蔵倉庫は国内の食のコールドチェーンを支える重要なインフラだ。しかし、老朽化やフロン規制への対応など数々の課題を抱えており、官民挙げた取り組みが急がれる。国内の冷蔵倉庫が置かれている状況を俯瞰した。

東京は6割が築40年超

業界団体の日本冷蔵倉庫協会によると、全国47都道府県が所管している同協会会員の営業用冷蔵倉庫の容積は2014年6月末現在、1194事業所で計2581万4269立方メートル(設備能力1032万5708トン)に上る。所管容積は流通の近代化や冷凍食品の普及などを背景に拡大してきた後、1990年代の末ごろからはほぼ横ばいの状況が続いている。

2万5000立方メートル(1万トン)以上の大規模な施設は事業所数の27・9%なのに対し、設備能力では68・6%を占める。冷蔵倉庫の大型化が進んでいることをうかがわせる。

平均の商品在庫量は全国合計で約300万トンに上り、冷蔵倉庫が国内のコールドチェーンを支える重要な存在であることに疑問を挟む余地はない。しかし、その基幹インフラは多くの課題を抱えているのが実情だ。

最も顕在化しているのが施設の老朽化だ。少し古いデータだが、国土交通省が09年にまとめた「国際競争力強化のための物流施設整備に関するビジョン」によれば、営業冷蔵倉庫のうち、庫齢が30年以上のものは全国平均が42%だったのに対し、東京都内は59%に上った。データは08年7月現在の数字だが、現在も状況は大きく改善してはいないとみられる。

農水産品が数多く輸入される東京港を抱え、一大消費地も控えて冷凍・冷蔵需要が大きい東京都のこうした状況は、食のコールドチェーンを維持・発展させていく上で大きな不安材料だ。


冷蔵倉庫に関するデータ※クリックで拡大

15年1月には東京湾岸で大型の冷蔵倉庫を運営している東京団地冷蔵が、350億円程度を投じて冷蔵倉庫設備を全面的に建て替える計画を発表した。収容面積は現状より2割超アップの17万7800トンにすることを計画している(編集部注・建て替え工事は18年2月に完了、同3月に稼働開始)

同社は高度経済成長に伴い拡大した冷蔵倉庫需要に対応するため、冷蔵倉庫業者などが共同出資して設立。現在は17社がテナントとして入居している。首都圏の食品物流をサポートする主要拠点としてフル稼働してきたが、最も古い第1期棟は完成から15年3月で44年を迎えるなど、老朽化が目立ってきた。耐震性能なども踏まえ、同社は「現状では重要な社会インフラとしての食品の冷蔵保管機能が果たせなくなる恐れがある」と強調する。

荷主サイドからは物流効率化の観点から、今後も新たな施設へのリニューアル要望が強いと思われる。ただ、特に都心部はオフィスビルやマンションの開発が進み、用地確保が難しい上、建築費が高止まりしていることもマイナスとなっている。冷蔵設備刷新に当たっては、施設の集約や住居とうまく組み合わせた土地利用が求められそうだ。


約360億円を投じて建て替えた東京団地冷蔵の新冷蔵倉庫(いずれも同社提供)。省エネ型自然冷媒機器を導入し、カードキーや顔認証システム、録画機能付き監視カメラなどセキュリティーに万全を期している

フロン規制で古い倉庫の破棄促進?

冷媒フロンの問題も見逃せない難題だ。オゾン層破壊物質の取り扱いに関する「モントリオール議定書」は、国内の冷蔵倉庫の多くで冷媒として使われているとみられるHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)を2020年時点で補充用を除いて生産が全廃、30年には完全に生産廃止と定めている。20年以降はHCFCの使用は事実上不可能となるため、冷蔵倉庫業者はアンモニアなどの自然冷媒や代替フロンへの転換を迫られている。

しかし、多大なコストが掛かるだけに中小業者にとっては大きな負担で、切り替えは容易ではない。環境省は14年度、冷蔵倉庫に省エネ型自然冷媒機器を導入する際の費用を半分補助する制度を開始するなど、サポートに努めている。日本政策投資銀行は13年に発表したレポートの中で「投資対効果や企業体力の観点から、設立後40年以上経過している冷蔵倉庫の多くが一斉に廃棄される」と予測、冷蔵倉庫の供給不足が生じると想定している。

他にも、東日本大震災後は電気代の上昇が冷蔵倉庫業者の重しになるなど、逆風が強い。ある冷蔵倉庫業者の幹部は「大手、準大手以下の業者にとっては非常に厳しい環境が続く。しかし、そうした業者が経営統合して生き残りを図るのも難しい。官民一体で取り組みを図らないと窮状を打開する見通しは立てづらい」と話している。

識者インタビュー
「今後は冷凍・冷蔵倉庫の建て替えが進む」
CBRE 鈴木公二 シニアコンサルタント

※役職名や記事中のデータは記事掲載当時のものです

確かに冷凍・冷蔵倉庫は老朽化が進んでいる。冷蔵倉庫の7割が老朽化しているという統計や、築40年以上の冷凍・冷蔵倉庫が全体の2割、30年以上まで含めると半分に達するといった話をよく耳にする。関係業界では、冷凍・冷蔵倉庫は築50年になるとメンテナンス費用などがかさむので40年ぐらいでスクラップ・アンド・ビルドしていくという意識が強いようだ。先日発表された東京湾岸の平和島にある築40年前後の「東京団地冷蔵」の建て替えは規模が大きいので物流業界では注目されている。

最近は特にチルドの温度帯で配送効率や品質を高めようという動きが強く、物流会社や食品メーカーが新たに配送効率の良い場所にある倉庫を賃借したり、自社で高スペックのものを開発したりしている。全般的には需給が逼迫している感じだ。2020年には特定フロンのHCFCの冷媒使用が実質的に全廃されることなどもあって、今後は新しい施設への建て替えが進むと思う。

ただ、建て替えに際して逆風となるのが、用地と建設コストの問題だ。首都圏や近畿圏では用地が不足している。建設コストも高止まりが続いている。一般の倉庫より関連設備の負担が大きいだけに、資金確保の問題もある。電気代の値上げもネックだ。それだけに、潜在的な冷凍・冷蔵倉庫の需要は見込まれるものの、今後建て替えの数がどんどん増えていくかどうかは不透明だ。まずは大きな施設から順次進んでいくという感じではないか。

物流不動産は中長期的に安定したリターンを得られる投資対象としても国内外から注目されているが、冷凍・冷蔵倉庫に限ると投資対象となるような物件が少ないのが実情だ。今、全国で投資物件となっている物流施設が300〜400棟あるが、その中で冷凍・冷蔵倉庫は1割にも満たない。賃貸物件があまりないためだ。賃料自体も一般の物流施設の相場からはかけ離れており、冷凍倉庫では1・5倍から2倍のものもあったりする。賃料相場のデータがないので、一般の投資家もなかなか手を出せない状況にあるといえる。(談)

(藤原秀行)

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