【独自取材】人手不足の物流を救う「フィジカルインターネット」とは如何に?

【独自取材】人手不足の物流を救う「フィジカルインターネット」とは如何に?

soucoが海外の研究動向など解説したリポートを無償提供

倉庫の空きスペースと保管を希望する荷物のマッチングサービスを展開しているsouco(東京)はこのほど、人手不足など物流業界が抱える課題の解決につながる理念として国内外で研究が進められている「フィジカルインターネット」の概要と動向を解説したホワイトペーパー(リポート)の無償提供を同社ホームページ上で開始した。3月25日に正式発表した。

フィジカルインターネットは、世界を大きく変えたインターネットの在り方を物流の世界でも実現することを目指す考え方。インターネットが各地の通信設備や回線を利用者間で共有することにより情報を瞬時にやり取りできるようになったのにならい、トラックや倉庫、パレットといった物流のフィジカル(物理的)な要素をあらゆる事業者や利用者が共有、その都度最適なアセットを使えるようにし、輸送・保管効率向上などにつなげることを目指している。

日本でもヤマトホールディングスグループのヤマトグループ総合研究所が2019年に米ジョージア工科大とフィジカルインターネットを通じた日本における革新的な物流システムの構築に関する覚書を締結、研究に着手するなど、フィジカルインターネットの可能性に着目する動きが出ている。soucoは情報を幅広く提供することでフィジカルインターネットの意義を物流業界関係者らに理解してもらい、業務の標準化加速につなげていきたい考えだ。


ホワイトペーパー(souco提供)※クリックで拡大

既存のレガシーインフラ置き換えが重要

soucoのホワイトペーパーは全12ページに上る。フィジカルインターネットという考え方が生じた背景として、ロジスティクスに関する無駄の存在に言及。米国におけるトレーラー走行距離の2割は完全に荷台が空のままとなっていることなどを挙げ、こうした問題を解消するためフィジカルインターネットを取り入れるとの方向性を示している。

また、インターネットが大量の情報を「パケット」と呼ぶ細かい単位に分割して送信することでスムーズに通信できるようにしている点に着目。フィジカルインターネットも荷物を小口に分け、寸法や機能が標準化されたコンテナに入れて送ることを想定している点に言及している。

併せて、海外の研究者がフィジカルインターネットを採用した場合のシミュレーションを行った結果を報告。トラックドライバーが1日以内で走行可能な、より管理しやすいパケット(区間)にルートを分解することで輸送が迅速化し、納期短縮になると見積もっていることなどを取り上げている。

実現に向けた課題として、「フィジカルインターネットのシステムを意図する通りに機能させるには、有形資産やソフトウエア、設備、法的枠組み、トレーニングその他の技術仕様を丸ごと置き換え、統一しなければならない。従って、フィジカルインターネットを完全に実現するには、長期にわたり莫大な資本投資をして、既存のレガシーインフラを置き換える必要がある」と指摘。企業や市場ごとに異なる仕様となっているものが依然残る物流インフラの標準化が進むことに期待を示している。

その上で「フィジカルインターネットは、世界全体に経済・環境上の多大なメリットをもたらすと期待される。フィジカルインターネットと関連するイノベーションが今後10年間のロジスティクスの在り方に影響を及ぼすことは避けられない」と締めくくっている。

(藤原秀行)

ホワイトペーパーのダウンロードはコチラから(メールアドレスなどの登録が必要)
過去のホワイトペーパーの閲覧はコチラから

データ/調査カテゴリの最新記事