専門部署開設、東京の基幹拠点で対象商品の完全自動化も検討
ドイツポストDHLグループで3PL事業などを手掛けるDHLサプライチェーンは、グローバル規模で物流現場のデジタル化を進めている。日本と韓国を統括している日本法人も2019年8月に専門部署「デジタル推進室」を開設。日本国内で100余り展開している各拠点の現場オペレーションの自動化・省力化を推し進めている。
その一環として、東京・品川区の「東京物流センター」に19年、統合自動倉庫管理システムを導入。商品を収めた棚を持ち上げ、入出荷作業を担当するスタッフが待つエリアまで運ぶGTP(Goods to Person)型ロボットを13台投入し、ピッキングなどの作業を大幅に効率化することに成功した。
同センターでは次の段階として、対象とする商品に関しては庫内搬送などの業務までも含めて完全な自動化を図ることを視野に入れている。同センターの成功事例を他の国内拠点へ横展開し、人手不足が深刻化する日本の物流を持続可能なものにしていく上で大きく貢献していきたい考えだ。
「東京物流センター」で活躍するGTP型ロボット(DHLサプライチェーン提供)
作業効率が30%改善
ドイツポストDHLグループは19年10月、新たな事業戦略「ストラテジー2025-デジタル世界で卓越性を提供する」を発表。柱の1つに業務のデジタル化を据え、25年までに物流業務のデジタル化へ20億ユーロ(約2400億円)程度を投じることなどを打ち出した。庫内作業の自動化や輸配送経路最適化などにより、デジタル化投資は年間15億ユーロ(約1800億円)の利益をもたらすとの見方を示している。
「ストラテジー2025」を発表するドイツポストDHLグループのフランク・アペルCEO(最高経営責任者)(DHLプレスリリースより引用)
DHLサプライチェーンは日本でも同戦略に沿ってデジタル推進室を設置。現場業務をどのように機械化・省人化していくかの検討を進めている。東京物流センターは多様な顧客の中の1つとして大手パソコンメーカーのパーツセンターを運営。顧客のPCにトラブルが発生した場合、迅速に必要とされる保守部品を供給するなど重要な機能を担っているが、生産性向上を目指し、日本国内で先進的な取り組みを進めていくためのモデルケースとしてロボット導入を決断した。
同社サービスロジスティクス事業本部で同センターの吉田清和ジェネラルマネージャーは「ロボット導入で効率的かつ(ピッキングミスなどの)エラーが発生しにくいソリューションを実現している」とデジタル化に手ごたえを感じている。実際、庫内をスタッフが歩き回る必要がなくなったため、作業効率は30%程度高まっているという。
同センターは同時に、これまで製品に同梱していた納品書と返却案内書のペーパーレスを実現するなどの効果も生み出している。DHLサプライチェーンの本間乾一朗執行役員サービスロジスティクス事業本部長は「東京物流センターはデジタル化の一例であり、他の拠点でもダイナミックなオートメーション化を進めていきたい。グローバルに事業を展開していることから、グローバル規模でさまざまな事例を積み重ねているので、他の国の取り組み例を日本でどの程度生かしていけるのかといったことも検証していきたい」と語る。東京物流センターもロボット導入台数を増やすことなどを検討している。
(藤原秀行)