改正特措法で規定も、大混乱に至らず
政府が新型コロナウイルスの感染拡大阻止へ、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき首都圏の1都4県と北海道を対象に発令していた緊急事態宣言は、新規の感染者が大きく減っていることなどから、5月25日に5都道県そろって解除が決まった。
物流業界で注目されていた、緊急事態宣言の対象地域となっている都道府県知事が特措法に沿って、緊急物資の運送を「指定公共機関」と定めている物流関連事業者に要請・指示できる規定は、1回も発動されることなく終わろうとしている。
指定公共機関は貨物運送大手5社、JR貨物、フェリーやタンカーを航行している水運17社など。主要な物流関連企業が緊急時に重要な物資の輸送を担う役割を明確に示し、医療など重要分野のロジスティクスに支障を来さないようにするのが狙いだ。指定公共機関の物流関連事業者も対策本部を社内に設けるなど、国内初となる事態への準備を進めてきた。
新型コロナウイルスは日本でも感染が拡大し、これまでに累計で1万6000人以上が感染。工場の一部稼働停止や小売店舗の営業自粛など経済にも打撃を及ぼしている。ただ、既に1万3000人以上が回復し、欧米のように長期間の都市封鎖(ロックアウト)に追い込まれるほどの物流の大混乱には至らなかったことなどから、実際に要請や指示を強いられるまでの局面は生じなかったようだ。
しかし、外出自粛によるインターネット通販の利用急増で宅配現場が混乱するなど、異常事態で物流に大きなしわ寄せが来ているのも事実だけに、持続可能な物流体制を構築しておくBCP(事業継続計画)の重要性がさらに高まっている。官民で連携して対応を進めることが急務だ。
(藤原秀行)