JILSが会員企業対象のコロナ影響調査、商慣習変化や自動化・ロボット化加速の予想目立つ
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は6月30日、会員企業向けに新型コロナウイルスの感染拡大の影響を聞いたアンケート調査結果を公表した。
3月に実施した前回調査に比べ、荷主企業の間で国内外からの原材料や部品、商品の調達・仕入れに遅れが生じていると答えた割合が高まるなど、サプライチェーンの混乱が拡大していることをうかがわせる内容となった。また、業績へのマイナスを懸念する向きも荷主企業、物流企業の双方で3月から割合が上がった。
同時に、納品時間指定の緩和といった商慣習の変化や自動化・ロボット化の加速を予想する人も目立ち、物流業界が抱える非効率の改善へ機運が高まる可能性があることを示唆した。
今回の調査はJILS会員の荷主企業と物流企業の計678人に調査を依頼、21・53%の146人から有効回答を得た。内訳は荷主企業69人、物流企業77人だった。
7割が「業績へマイナスの影響」
荷主企業に緊急事態宣言後、原材料や部品、商品の調達・仕入れに影響があるかどうかを尋ねたところ(複数回答可)、国内の取引先が相手の場合は「遅れが生じている」が3月時点の25・00%から45・76%に、海外の取引先でも36・25%から50・85%に割合が上昇した。
調達・仕入れが「できなくなったものがある」や「変更となったものがある」、「条件に変更・制約などが生じている」、「在庫の多寡・偏りが生じている」の各項目も総じて3月から選択する割合が拡大した。
具体的な回答でも「中国品から日本、東南アジアの品へ購入先をシフトした」(製造業)、「中国の仕入れ先の生産が遅れたことでラインへ影響(遅れが発生)」(流通業)などの声が聞かれた。
荷主企業の国内取引先への影響(以下、JILS調査結果資料より引用・クリックで拡大)
業績への影響に関する質問では、「ややマイナスの影響があると思う」と「大きなマイナスの影響があると思う」を合計した割合が荷主企業は3月の52・63%から75・00%、物流企業が64・78%から78・58%へそれぞれ拡大した。
今回新たに確認した項目では、トラック輸送の状況に関し(複数回答可)、「コロナ禍の前と比べ、トラックが確保しやすくなっている」と答えた割合が荷主と物流企業を合わせた全体の38・46%に上り、最も多かった。経済情勢悪化でBtoBの荷物が減っていることが影響しているとみられる。
「輸送量の制限や輸送先・頻度などに変更が生じている」が15・38%、「輸送条件の変更・制約などが生じている」が13・85%、「おおむねコストが下降している」が13・08%、「輸送に遅れが生じている」が7・69%、「おおむねコストが上昇している」が6・15%、「トラックを確保できない事態が発生している」が3・85%だった。「特に影響はない」は36・15%に上った。
作業人員では(複数回答可)、「特に影響はない」が49・23%でほぼ半数に達した。「作業員の余剰が生じている」は30・00%、「おおむね人件費単価が上昇している」が10・00%、「必要な作業人員を確保できない事態が発生している」は3・85%、「おおむね人件費単価が下降している」が1・54%などと続いた。
検品・伝票レス化など「商習慣変化あり」の見方が圧倒
一方、新型コロナウイルスの感染拡大と「新しい生活様式」への対応が検品・伝票レス化や納品時間指定の緩和、ドライバーの付帯作業の業務化といった商習慣の変化などをもたらすと考えるかとの問いには、荷主企業の69・23%、物流企業の72・86%が「そう思う」と認め、「そうは思わない」(荷主企業19・23%、物流企業11・43%)を圧倒した。
自動化・ロボット化が加速すると考えるかどうかについては、荷主企業の40・38%、物流企業の42・86%が「そう思う」と賛同。「そうは思わない」は荷主企業が30・77%、物流企業が28・57%で、商慣習の変化ほどではないにせよ、自動化・ロボット化の進展を予想する向きが多いことをうかがわせた。
(藤原秀行)
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