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動き出せるか?「物流MaaS」

動き出せるか?「物流MaaS」

経産省が民間の取り組み支援も、そもそも定義不明確で恩恵も不透明

経済産業省は7月21日、トラックドライバー不足などの課題解決に向け、物流分野における新しいモビリティーサービス「物流MaaS(Mobility As A Service=モビリティー・アズ・ア・サービス)」を広めるための民間企業の取り組みを公募、6事業者を選定したと発表した。

経産省はトラックメーカーや物流事業者など多岐にわたる関係者を結び付け、物流MaaSを実現したい考え。ただ、そもそも物流MaaSとは何かという定義が分かりづらく、物流MaaSを実現すれば具体的にどのような恩恵を受けられるのかも不透明。円滑に取り組みを推進していく上で課題が山積している。

経産省が民間企業と議論した「物流MaaS勉強会」(座長・石田東生筑波大名誉教授)は今年4月、意見の取りまとめを公表した。物流MaaSに関しては「荷主・運送事業者・車両の物流・商流データ連携と部分的な物流機能の自動化の合わせ技で最適物流を実現し社会課題の解決および物流の付加価値向上を目指す」と説明。ダブル連結トラックの運行、倉庫の荷役自動化、生産・販売予測情報を基にした最適輸配送などをつなげていくイメージを示している。

しかし、経産省が示している勉強会の概要などの資料を見ても、あまりに広範囲に、仔細に取り組みを盛り込み過ぎて「最適物流」や「物流の付加価値向上」が具体的に何をイメージしているのか、すぐには分かりづらい。「そもそも物流MaaSでトラックドライバー不足はいつごろカバーできるようになるのか?」といった根本的な疑問にも十分に答えているとは言いがたく、「物流MaaS」という手段が目的化しているような印象も受ける。

「荷主・運送事業者などのプレーヤーが進める物流効率化に対し、商用車OEM(メーカー)は共に“共通の物流MaaS実現像”を描きながら、デジタル技術を活用し、共同輸送や混載配送・輸配送ルート最適化などを共同で実現していく事が必要」といった問題意識自体は非常に共感できるだけに、物流事業者が物流MaaSの恩恵を理解し、どのように協力できるかをイメージしやすいよう、より分かりやすい説明を重ねていくことが不可欠だ。多岐にわたる物流MaaSの取り組みを調整、推進できる司令塔的な組織の在り方も早急に検討、確立すべきと思われる。


研究会の取りまとめ資料。情報量が多過ぎる印象だ(経産省提供)※クリックで拡大

経産省が産業技術総合研究所を通じて公募、選定した6事業者の概要は以下の通り。

①「トラックデータ連携の仕組み確立」=豊田通商
荷主・運送事業者等が抱える課題に対し、日本版FMS標準の活用が期待できるユースケースを検討し、複数商用車メーカーのトラックデータを連携する仕組みを検討。また、運行管理データ項目の特定や形式などの標準API仕様の検討などを行う。

②「見える化・混載による輸配送効率化」=アイシン・エィ・ダブリュ、三菱ロジスネクスト
アイシン・エィ・ダブリュ=深度センサーで庫内の荷物量や空きスペースを見える化し、配送計画ルート上の積載効率変化も可視化することで、輸配送効率化の検討を行う。
三菱ロジスネクスト=車両と積荷の位置情報等の連携により積載効率向上を図るとともに、保険会社などと連携し、整備・運行記録などを用いた運行品質評価モデルの策定および検証を行う。

③「電動商用車活用・エネルギーマネジメントに係る検証」=ミツバ、東京電力ホールディングス、みちのりホールディングス
ミツバ=軽貨物EV(電気自動車)に求められる性能検討、経済性を高めるために必要となるエネルギーマネジメントやオペレーションのモデル構築のため、シミュレーションおよび実車での検証を行う。
東京電力ホールディングス=業務用車両の電動化に向け、充電ステーションの配置の在り方の検討(共同利用)、EVの運用や充電オペレーションの実証実験を行い、電動化に向けた課題の洗い出し、経済性検証、効率的な充電方法の検討を行う。
みちのりホールディングス=ディーゼルバスとEVバスの相違点(給油/充電時間、臨時便などの運行管理など)を踏まえ、バスの運行管理とエネルギー管理を一体化したエネルギーマネジメントシステムのシミュレーションと技術検証を行い、EVバス導入の地方版モデルの構築を目指す。

(藤原秀行)

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