近畿圏の大型物流施設空室率、4~6月は国内最大級案件が空室残して完成の影響で4・8%に上昇

近畿圏の大型物流施設空室率、4~6月は国内最大級案件が空室残して完成の影響で4・8%に上昇

「むしろ需給はさらに逼迫」と指摘・CBREリポート(後編)

シービーアールイー(CBRE)は8月13日、全国の賃貸物流施設市場の動向に関するリポートを公表した。後編では近畿圏と中部圏の内容を紹介する。

2020年第2四半期(4~6月)の大規模なマルチテナント型物流施設の平均空室率は近畿圏が4・8%で、前期(20年1~3月)から1・1ポイント上昇した。前期の水準を上回るのは9四半期ぶり。

ESRが開発していた延べ床面積10万坪超の日本最大級の施設が空室を残して竣工したのが主因。リポートは同物件の竣工時の契約・内定率が70%に達したとみられることや、もう1棟は満床で竣工したことを踏まえ、需要は堅調と判断。「むしろ需給はさらに逼迫してきたといえる」と分析した。

その背景として、5000坪以上の空室を抱えた物件は今期竣工分を含めても湾岸部の3棟のみにとどまることや、築1年以上の物件の空室率は2・8%で17年第2四半期(1・8%)に次ぐ水準に下がっていることなどに言及。「少なくともテナントの動きを見る限りでは、マーケットは平常時の動きを取り戻している。通販や生活必需品に対する需要が増加していることを背景に、全国規模の企業の新規開設や集約などの動きが顕在化している」と前向きな見方を示した。

坪当たりの実質賃料は、横ばいだった前期から一転して3・1%上昇し3930円となった。大阪府内陸部で来年竣工予定の複数物件で大型テナントが内定したことで選択肢が狭まっているため、賃料の上昇圧力が強く、大阪府湾岸部でも、空室物件が減少する中で割安だった賃料が引き上げられたという。湾岸部の開発計画が全くないことも上昇要因の一つと解説している。


近畿圏の需給バランスの推移(CBREリポートより引用)※クリックで拡大

中部圏「解約や賃料減額などの事案なくマーケットは安定」

中部圏の20年第2四半期(4~6月)の空室率は前期比0・6ポイント低下し7・3%だった。今期の新規竣工はなく、築浅の既存物件で空室が消化されたことが要因。新型コロナウイルス感染拡大の影響下で今後の見通しを立てにくいタイミングのため、足元のテナントニーズは面積規模の小さいものが中心で、新たな動きは少なかったが、「解約や賃料の減額などの事案はなく、マーケットは安定している」(CBRE)という。

坪当たりの実質賃料は3590円で前期から横ばい。20~21年の開発計画はそれぞれ1棟ずつと少ないため、水面下では22年以降の開発案件が検討されていると指摘。今期は愛知県豊田市で初となる大型開発計画(22年竣工予定)が発表されたことに触れている。

(藤原秀行)

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