三菱倉庫や乾汽船、買収防衛策廃止などに関心
主要な上場物流企業が今年4~6月に開催した直近の株主総会で、株主提案に一部の機関投資家が賛成していたことが明らかになった。会社議案の取締役選任などに対しても、ノーを突き付けるケースが相次いでいる。投資家がESG(環境・社会・企業統治)を重視した経営を行う求める動きが広がる中、物流業界も投資家への理解を得る努力を一段と迫られそうだ。
株主提案を受けた物流企業を見ると、三菱倉庫は6月の定時株主総会で、香港の投資ファンド、投資ファンド、オアシス・インベストメンツⅡ・マスター・ファンドが5議案を提案した。オアシス側が推す人物2人を社外取締役に選任することや、相談役と顧問を廃止することなどを打ち出していた。
ロジビズ・オンラインが国内の主要な13の機関投資家の投資先企業の株主総会での議決権行使状況を調べた結果、野村アセットマネジメントと三井住友トラスト・アセットマネジメントの2社が、ともに5議案のうち取締役選任と相談役・顧問などの廃止の計3議案に賛成票を投じていた。三菱倉庫の集計によると、この3議案にはいずれも2割前後の賛成が集まった。
また、乾汽船が筆頭株主の投資会社アルファレオホールディングス(HD)の招集を受けて5月に開催した臨時株主総会は、アルファレオが提案した買収防衛策の廃止について、みずほ信託銀行、野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信、アセットマネジメントOne、三井住友トラスト・アセットマネジメントの7社が賛成していた。アルファレオによれば、賛成は議決権全体の約47%に及び、アルファレオの持ち分を除くと2割弱の賛成があったとみられる。
乾汽船が6月に開いた定時株主総会でも、アルファレオは乾汽船の政策保有株式(持ち合い株)の全売却、巨額の損失が生じた場合に役員報酬を会社へ返還させることが可能となる「クローバック条項」の採用、監査役3人の解任、第三者割当増資を行う際は事前に株主総会の普通決議を経ることを条件化の4議案を提案。いずれも否決されたものの、3~4割の賛成票が入った。機関投資家13社では大和アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメントの2社がクローバック条項の採用に賛成していた。
上場企業が4~6月に開いた定時株主総会では、約50社で株主提案があり、2割以上の賛成票を集めた議案も少なくなかった。もちろん株主提案も会社側の提案と同様、企業価値向上に資するかどうかを慎重に検討すべきものではあるが、物流業界もこうした潮流が今後強まることも予想されるだけに、各社にはより慎重な経営判断を求められる可能性がある。
(藤原秀行)