【独自取材】大型物流施設開発の「ALFALINK」、関西も複数箇所で展開へ

【独自取材】大型物流施設開発の「ALFALINK」、関西も複数箇所で展開へ

日本GLP・帖佐社長独占インタビュー(中編)

日本GLPの帖佐義之社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

帖佐社長は、大規模な物流施設を1つのエリアで集中して建設するプロジェクト「ALFALINK(アルファリンク)」に関し、引き合いが好調なことを踏まえ、既に着手している首都圏の案件で開発のスピードを前倒しする意向を表明。関西でも複数箇所で展開していくことを明らかにした。

また、都市部に加えて地方エリアも需要が十分見込めると分析、開発適地を厳選してプロジェクトを興していきたいとの考えを示した。インタビューの中編を掲載する。


帖佐社長(2020年2月、中島祐撮影)※クリックで拡大

施設の“見せる化”が大きな共感を獲得

――これまでにない新たな大型物流施設開発のプロジェクト「ALFALINK(アルファリンク)」が非常に注目されている要因をどう分析しますか。
「開発のコンセプトだと思います。神奈川県相模原市のALFALINKでは施設の“見せる化”を図る『Open Hub(オープンハブ)』、サプライチェーン全体を1カ所で統合・運営する『Integrated Chain(インテグレーテッドチェーン)』、自動化を支援する『Shared Solution(シェアードソリューション)』という3点を掲げています。当社としても相当作り込んだコンセプトですが、お客さまがこの3点のそれぞれの内容に共感していただけたのが、旺盛な需要につながっているのではないでしょうか」
「特に『Open Hub』は皆さんよくわれわれの思いを受け止めてくださっていると感謝しています。物流業務は従来、裏方であまり目立たず、厳しいコスト競争にさらされている一方で、物流事業者が手掛けている業務のクオリティーや付加価値の高さにはなかなか光が当てられていませんでした。荷主企業にとっては、その部分はあって当たり前な存在になっていて、それよりもコスト削減だ、という話になりがちでした」
「『Open Hub』でそうした裏方の物流施設、物流業務をあえて全面に出しましょうと訴えました。物流は今や、ECなどでは差別化の大きな武器になり得ます。いかに物流サービスが素晴らしいか、具体的には荷物の取り扱いの丁寧さ、サービスのクオリティーの高さをアピールし、決してバックヤードのコストセンターではなく、収益につながるプロフィットセンターというメッセージを込めて『Open Hub』のコンセプトを打ち出しました。その点に関してはすごく勇気付けられたとか、物流業界に対する日本GLPからのエールだというふうに、前向きに受け止めてくださった方が多かったのが非常にうれしいですね」
「そこから物流施設に入居される側と提供する側の信頼関係が生まれ、共同でより優れた物流品質を作り上げていこうという、まさに共創のマインドセットが醸成される世界があると思います。そうしたことで共感してくださって、相模原の物流施設の利用を検討しようとなったケースもあります。あとは一般的な単体の物流施設では成し得ないスケールでのいろいろな付帯サービス、例えば共用部のアメニティー施設の充実もそうですし、『Shared Solution』もこれだけの規模の物流施設であれば確かに自動化などの技術の経済合理性も出てくるよね、と感じていただいています」

――大きくフロアを使おうという需要が旺盛ということも言えそうです。
「必ずしもそういう狙いを付けてプロジェクトを進めてきたわけではなく、マルチテナント型でワンフロア6分割可能といったように、小割りの対応も念頭に置いて計画は作成しています。ただ、これまでの結果を見ると、確かに大型の引き合いが相次いで決まるケースが目立ちますね」
「物流施設が大型化するのはデメリットにもなり得ます。それだけのスペースを埋めなければならないわけですから、どうしても投資に対して消極的になる面もありますが、われわれは投資した以上、そのスケールを生かしたサービスを打ち出そうと努めています。そうしたものが非常に今、うまくお客さまのニーズやウオンツに合致しているとの実感はありますね」


千葉県流山市で4棟目となる「GLP ALFALINK 流山8」の完成イメージ。2021年8月末の竣工を見込む(日本GLPプレスリリースより引用)

日本での事業展開10年の集大成がALFALINK

――関西や中部のALFALINKも事業は順調に進んでいますか。
「そうですね。関西は今のところ2カ所でそれぞれ手掛ける計画です。中部も、首都圏や関西に比べれば遅れていますが、計画に沿って順調に進んでいます」

――今後の展開は?
「まだちょっとはっきりしたことは申し上げられないですね。計画を進めながら随時、何が最適かを検討していきます。相模原だけでなく、千葉の流山で手掛けている『ALFALINK流山』も既存の3棟に加えて、あと5棟開発する計画ですが、そちらについても、半年ないし1年くらいは前倒しするようなペースになってきています。開発スケジュールが従来のままの施設でも引き合いは大変多く寄せられていて、もう成約しているケースもありますから、相当スピード感を持ってプロジェクトを展開していく必要はあるだろうと感じています」
「ALFALINKに関しては、もともとは事業計画を立てる時に、スケジュールを大きく2つの点から見ています。1つは工事の面、もう1つは需要の面です。このうち需要に関しては、床が埋まるスピードをもう少し長い期間で見ていました。流山で総延べ床面積が90万平方メートル、相模原で60万平方メートルという国内では類を見ない大きさの物流施設開発になりますから、一定の時間をかけながら埋めていくということを考えていました。もう1つの工事の面でも、これだけ大規模な開設ですからいっぺんに全ての棟を建設するのは無理ということで余裕を見ていました。そこで需要の方が、想定よりすごく早いスピードで決まってきているので、あとは物理的に工事が可能な最短のスピードに今事業計画を書き直しているところです」

――お話があった流山の8棟のうち、完成したものを除く残り5棟もかなり早期にスペースは埋まりそうですか。
「大型の引き合いの話で、だいぶ中身が詰まってきているところも複数あるので、これが決まれば想定より相当早いペースということになりますね」

――「ALFALINK」の3つのコンセプトは今後も継続しますか。
「当社が今まで10年間、日本で続けてきたことの集大成が今のALFALINKですが、コンセプトに関しては決して完成形はありません。ずっと進化し続けるものですし、時代とともに変化するものだと思います。進化版を常に更新していくのがわれわれのやるべきことだと確信しています。未来永劫変えないということではないですし、逆に言えばプロジェクトごとに変えることが目的になっているわけでもありません。時代に合致したものに進化させていくことが目的ですから」

――クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏は今後もコンセプト作成の面で携わっていきますか。
「佐藤可士和さんにお願いしているのは、どちらかというと表現の部分ですね。コンセプトは当然当社の中でこうやりたいんだというものをまとめた上で、その内容をキャッチーで物流施設をお使いになる方々に突き刺さるような言葉にぎゅっと煮詰めていってもらうのが可士和さんにやっていただいていることです。可士和さんとは今後も継続して、コンセプトづくり、プロジェクトブランディングへのご協力をお願いしていきたいと思っています」


19年11月開催の関係者向けイベントでALFALINKについて対談する佐藤氏と帖佐社長

関西も高速道開通で物流適地が拡大

――物流施設需要が旺盛なのは首都圏だけではなく、関西も同様とお感じになりますか。
「そう思います。関西も18年ごろは盛んに供給過剰と言われ、特に大阪湾岸エリアでは竣工から2年が経過してもまだ稼働率が1桁、といった事例が見られました。それだけに、物流施設のスペースはそう簡単には埋まらないと言われた時期もありましたが、今は稼働率が低調だった物件も埋まりました」

――関西エリアの開発は今後も内陸部がメーンになるでしょうか。
「そうでしょうね。首都圏と同様に、今までは物流施設用地としては必ずしも注目されていなかった地域が、高速道路や幹線道路が開通することで中心部への距離がぐっと近づくため、活発に開発されています。リースアップもデベロッパー各社で順調に進んでいるようですし、いわゆる物流適地が道路整備の進展によって広がってきているということなんじゃないかと思っています」

――3大都市圏以外のエリアはいかがですか。
「今後、福岡や岡山でも開発していきます。考え方は以前からあまり変わっておらず、東京と大阪、地方で開発の割合がそれぞれおおよそ6:3:1という比率だとずっと申し上げてきました。その範囲の中では、地方でも有望なエリアはあると思います。例えば岡山は総社市で開発を手掛け、1棟目も2棟目も100%稼働できていますから、そろそろ3棟目を手掛けても十分需要は取り込めるだろうなとみています。規模がそんなに大きくなることはないと思いますが、地方エリアも確実に需要が存在するマーケットですから、場所を厳選して開発の可能性を探っていきたいですね」


岡山県総社市で3棟目となる「GLP岡山総社Ⅲ」の完成イメージ。22年3月の竣工を想定している(日本GLPプレスリリースより引用)

(藤原秀行)

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