【独自取材】腕時計型のウエアラブル血圧計、トラックドライバーの健康管理に有用

【独自取材】腕時計型のウエアラブル血圧計、トラックドライバーの健康管理に有用

大原記念労働科学研究所が検証結果踏まえ指摘、活用呼び掛け

労働現場の安全確保などに関する研究を続けている大原記念労働科学研究所(本部・東京都渋谷区千駄ヶ谷)はこのほど、腕時計型のウエアラブル血圧計をトラックドライバーらの健康管理に活用できるかどうかを探るフィージビリティー(実現可能性)の検証を実施した。

配送業務に就いている男性ドライバー2人に、2週間にわたってウエアラブル血圧計を装着してもらった結果、毎日複数回にわたって業務の合間に血圧を測定、データを収集することができた。

研究を担っている同研究所の北島洋樹副所長は「従来の据え置き型の血圧計と組み合わせて、従業員の健康管理に有益なツールとしての活用が見込まれる」と指摘。引き続き研究を重ねてエビデンスを蓄積し、作業現場などに導入してもらいやすい利用形態を探るとともに、運送業界などにウエアラブル血圧計の有効活用をアピールしていきたい考えだ。

なお、フィージビリティー実証の概要は、同研究所が発行している『労働の科学』2020年10月号にも掲載している。


北島氏

1日の変化をスマホアプリで確認可能

同研究所で検証に投入したのはオムロンヘルスケアが開発したウエアラブル血圧計「HeartGuide(ハートガイド)」。日本では2019年12月に発売された。価格が税別で約8万円と高額だが、重さが115グラムと装着しても苦にならないレベルに抑えていることなどが評価され、注目を集めている。医療機器認証も取得済みだ。測定した血圧のデータはスマートフォンのアプリに蓄積し、変動を把握することが可能だ。


「HeartGuide」(オムロンヘルスケアウェブサイトより引用・クリックで拡大)


血圧測定の結果が表示される(クリックで拡大)

同研究所のフィージビリティー検証はオムロンヘルスケアの委託研究として実施。血圧測定には埼玉県を地盤とする吉川自動車運送(同県越谷市)の30代と40代のトラックドライバーが協力した。同研究所からは就業中も含めて1日になるべく多く血圧を測定するよう依頼。作業が一段落したタイミングなどに、ドライバー自身にウエアラブル血圧計で測ってもらった。

その結果、起床時と夕方の時間帯に血圧が高く推移する傾向が見られるなど、1日の血圧変化の特徴が浮かび上がってきたという。夕方は荷物の積み込みを行っている時間帯のため、北島氏は「荷扱いによる身体負荷が血圧上昇に寄与している可能性が示唆される」と分析している。

ウエアラブル血圧計では睡眠時間も測ることができる。フィージビリティー検証では、睡眠時間が短いと血圧が高くなりやすい関係が推察される結果になったという。また、ドライバーの事後評価を聞いたところ、2人とも荷扱いの際にウエアラブル血圧計を壊さないかどうかが気になると回答した。

北島氏は、今回は短期間で少人数の検証だったことに言及し「引き続き検証を重ね、ウエアラブル血圧計の有用性などについて、学術的にもきちんとした裏付けが得られるようにしたい」と強調。

その上で「例えば、荷降ろしまでの待ち時間が長い時に血圧が上がるといったことが分かれば、荷主さんと協議して待ち時間を短縮する対策を考えるきっかけにもなると思う。ウエアラブル血圧計を使うことで運送業界の方々の健康意識が高まり、具体的な行動に至るよう後押ししていきたい」と語った。

同じく研究に参加している同研究所の石井賢治研究員は「運送業界では既に事業所で血圧を測定する取り組みをされているが、今回のようなデバイスを用いることで、1日の変化を踏まえて、血圧が上がりやすい時間帯や作業時には脱水状態にならないよう水分をこまめに取るなどの方策をより具体的に考えられる。起床時や就寝前にも測定しやすくなる」と期待。長距離ドライバーの健康管理にも生かせるとみている。


石井氏

(藤原秀行)

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