第1弾は秋田、官民協議会と連携し農産物の幹線輸送長時間労働など改善目指す
Hacobuは、自社が持つ物流施設のトラック予約受付サービスなどの技術を活用し、地方の物流効率化支援に乗り出している。地方で基幹産業となっている農業に関し、農産物を都市部へ運ぶ長距離トラックドライバーの人手不足など課題が山積している点に着目。輸配送効率化などに協力することを目指している。
第1弾の試みとして、秋田県で官民が連携して物流の課題解決策を検討する協議会の会合に参加。現地の物流事情も視察しており、秋田県などと連携して幹線輸送のトラックドライバーの長時間労働といった問題に取り組んでいく構えだ。
「本当に必要あれば新サービス開発も」
Hacobuは物流施設や工場で使えるトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボバース)」、車両の動態管理サービス「MOVO Fleet(ムーボフリート)」、配送案件管理サービス「MOVO Vista(ムーボビスタ)」など、MOVOブランドで先進技術を活用した物流業務効率化の各種サービスを展開。MOVO Berthは今年11月時点で予約者側のユーザーも含めて3200以上の拠点で導入されるなど、利用が広がっている。
Hacobuは個々の顧客への業務効率化ソリューションに注力するのと併せ、地方でも物流が逼迫しているとの問題意識を持ち、ソリューションを提供しようと取り組みをスタート。2019年に秋田県や秋田県トラック協会、全国農業協同組合連合会(JA全農)秋田県本部、地元運送会社などが参加して発足した「秋田の未来の物流を考える協議会」と連携することとなった。
同協議会は秋田県の農産物に関連した物流でかねて課題と指摘されているパレット化や変動が大きい出荷見込み量の事前把握、首都圏などとの幹線輸送を担うトラックドライバーの長時間労働といった点について、ワーキンググループ(WG)を設置。関係者が議論を進めている。
Hacobuは10月に開かれた農林水産物流検討WGに同席し、MOVOブランドで展開している各種サービスやソリューションを紹介するとともに、出荷見込み量の事前把握の手法を報告した。併せて、JA全農あきたの物流関係施設や地元の羽後運輸などを訪問、協議会でも取り上げられている課題の現状を視察した。
WG会合の様子(以下、いずれもHacobu提供・クリックで拡大)
アクセンチュアなどを経て現在はHacobuのCSO(最高戦略責任者)を務める佐藤健次執行役員は「幹線輸送の労働時間が長くなっていることが人手不足にもつながっている。農産物に関する物流の持続可能性を考える上でも早急に取り組まなければいけない」と指摘。地方から都心部へ送られる物量に比べて都心部から地方へ向かう荷物が少ない点にも言及し、中継輸送や共同配送などの手法を活用できるとの見解を示した上で「例えば温度管理などの面でも当社の技術をお使いいただける余地はあると思う。さらに、本当に必要な技術があれば新たに開発していくこともわれわれの使命」と強調した。
協議会に関しては、議論の結論を出す時期など今後の展開はまだ明確には定まっていないもようだ。佐藤氏は「われわれのサービスを押し売りするつもりはなく、あくまで地元の方々の議論を踏まえた上でニーズをつかみ、しっかりとした成功事例を作って全体が変わる流れにつなげていきたい」と同協議会の議論に並走する姿勢を見せている。
Hacobuは農産物をめぐる物流の課題は全国各地で顕在化していると推測しており、秋田と併せて他の自治体や業界団体などにも協力を打診していく方向。既に複数の自治体などに働き掛けているという。佐藤氏は「現状は各地でどの程度、物流変革のニーズがあるのか、深さを図っている段階だが、1つの大きなテーマとして取り組んでいきたい」と意気込みを見せている。
(藤原秀行)