対処方針も最低限の事業継続要請、バックアップには特段言及なし
政府は1月22日の閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状を踏まえ、対策を強化するため、新型インフルエンザ等対策特別措置法と感染症法、検疫法の改正案を決定した。外出抑制へより強い措置を講じられるよう踏み込んでおり、国会で与野党の論戦となりそうだ。
ただ、既にインフラ的存在となったインターネット通販の商品配送を支えるなど、社会生活に欠かせない物流に対しては、政府や自治体が物流事業者に対する行政手続きの特例措置を講じるなどしているが、目配りの弱さを感じざるを得ない。コロナ禍は沈静化まで長引きそうだけに、政府には緊急時の物流維持へあらためて強い決意を示すことが求められそうだ。
緊急事態宣言時の「指定公共機関」対応は変わらず
3法の改正案は感染抑制へ外出を抑制するため、政府が緊急事態宣言を発令した都道府県の知事が営業時間短縮や休業の要請に応じない飲食店に対し、より強い「命令」を出すことを可能にし、従わなければ前科とはならない行政罰として50万円以下の罰金を科せるようにすることなどが柱。併せて、入院を拒否したり、保健所の調査協力を拒否したりした場合の罰則導入なども盛り込んでいる。
一方、物流に関しては、緊急事態宣言の対象地域となっている都道府県知事が緊急物資の運送を「指定公共機関」と定めている物流関連事業者に要請・指示できるとした特措法の規定は基本的に変わっていない。指定公共機関となっている物流関連事業者はあらかじめ要請・指示があった場合に備え、社内の指揮体制を整えることなどが求められるのもこれまで通りだ。
ただ、物流関連事業者の感染防止については、政府が明確にバックアップしていくことは特措法などに特段明記はされておらず、義務の大きさだけが目立つ内容となっている。政府の対策本部が1月13日の対策本部で改定した対処方針でも、物流・運送サービスなどの事業者には従来通り、「社会の安定の維持の観点から、緊急事態宣言の期間中にも、企業の活動を維持するために不可欠なサービスを提供する関係事業者の最低限の事業継続を要請する」とあるものの、継続を支援するスタンスは明確に盛り込まれていない。
政府は物流事業者を社会生活の維持に欠かせない“エッセンシャルワーカー”の1つとして認め、かねて「現場の感染防止と安心して仕事ができる環境を作らなければならない」(赤羽一嘉国土交通相)と明言している。
これまでにも物流センター1カ所で100人以上の感染者が確認されるなど、多くの人と接触する機会があり、在宅勤務に移行しづらい物流業界は感染リスクが決して低くないことが示されている。もちろん各事業者や個々人の自発的対策が前提にはなるものの、指定公共機関となっている物流関連事業者を含め、政府や地方自治体の物流領域全体への細かな目配りを担保するためにも、特措法で物流維持への配慮を明記するなどの対応を検討することも今後求められそうだ。その際には、日本物流団体連合会などの業界団体が積極的に意見を発出することが期待される。
(藤原秀行)