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【独自取材】自動化神話に踊らされていないか??

【独自取材】自動化神話に踊らされていないか??

RFIDやピッキングロボットの投資対効果に厳しい見方

 「人手が足りない」――。どんな物流現場に行っても絶対といっていいほど耳にする言葉だ。今後も労働力不足が劇的に改善することは望みづらい中、現場を担う物流企業にとってはロボット導入など自動化・省力化が急務となっている。

 ロジビズ・オンラインの姉妹誌、月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ、以下ロジビズ)は今年9月号の「3PL白書 2018」で、3PL分野の主要物流企業が自動化・省人化をどのように進めようとしているのかを探るため、初のアンケート調査を実施。その結果、過半数の企業が物流ロボットや自動搬送車といった最新設備、先端技術の導入に意欲を示していることが分かった。

 去る9月に日本ロジスティクスシステム協会(JILS)がまとめた「2017年度 物流システム機器生産出荷統計」の結果を見ても、総じてマテハン設備へのニーズが高まっている状況が示されている。

 ただ、ロジビズ・オンラインで物流業界関係者らを対象にヒアリングを重ねたところ、各種機器の費用対効果や汎用性を疑問視する向きが少なからず存在するなど、ロジビズアンケートが捉え切れていない側面が見えてきた。導入意欲はあるがまだまだ高い初期費用に最初の一歩を踏み出せない悩める姿もうかがえる。物流分野の自動化投資が一足飛びで進むと捉えるのはまだまだ性急といえそうだ。

自動倉庫「8割近くが関心」は割り引いて考える必要あり?

 アンケートでは自動搬送車、自動倉庫、ピッキングロボット、自動仕分け機、RFIDなど合計13の製品・技術について、導入実績および導入計画の有無、関心度合いを尋ね、38社から回答を得た。

 その結果、「導入済み」の割合は自動倉庫(56.8%)と自動仕分け機(51.4%)が突出しており、「新たに導入する計画がある」「導入を検討している」も加えるといずれの機器も8割近くの企業が関心を示していることが浮き彫りとなった。

 JILS統計でも17年度における自動倉庫の売上高は1143億円と前年度から14.8%増加している。こうした数字からは一見すると、既に自動倉庫は荷主企業、機器メーカーも含めて物流業界に浸透してきているように感じられる。

 しかし、ある物流業界関係者は「ロジビズのアンケート対象は資金力のある大手物流企業が中心だった故に高い数値が出たと考えている。実際には荷主企業、物流企業ともまだまだ普及しているとは言い難い。数字については割り引いて見る必要があるだろう」と指摘する。

 この関係者自身も自動倉庫の導入コストが高いことに二の足を踏んでいると胸の内を明かした。逆に言えば、今後さらに導入が進むだけの伸びしろが大きいとも考えられるだけに、メーカーには初期投資額の圧縮などが求められそうだ。

クラウド型物流システムは中小企業への浸透がポイント

 次いで導入済みの比率が高かったのはクラウド型物流システム(39.5%)だった。JILS統計ではコンピューターと区分されておりハード、ソフト合計の売上高は23.7%増の279億円と右肩上がりで推移している。

 大手システムベンダーの営業担当者は「産業セクターで最もIT化が進んでいないのが物流業界といっても過言ではない。今後は実務を担う中小系物流企業でどれだけ浸透するか」をポイントに挙げている。

 それだけに、この担当者は初期費用や管理負荷を抑えられるクラウド型は、中小企業の背中を押す可能性があると期待を込める。

RFID「投資回収が可能なレベル」には疑問続出

 ロジビズアンケートの対象となった各種機器・デバイスの中でも、関係者によって見方が最も明確に分かれたのがRFIDだ。アンケートでは27.0%が「導入済み」と答えたほか、計画・検討中も含めると全体の7割が関心を持っている格好だ。

 RFIDを含むICタグに関しては国土交通省、経済産業省がサプライチェーンの最適化や製品のトレーサビリティー確保などの観点から、小売業界などにも声を掛け推進・普及を目指している。独自に取り組んでいる一部企業からは「投資回収が可能なレベルに運用成熟」「1枚当たりの製造コストを数銭レベル(1円未満)に抑制」などといった成果が伝えられる。

 しかし、先ごろコンシューマー向け著名ブランドの物流センターを視察してきた業界関係者によると、圧倒的な物量を誇る同センターでもRFIDの単価は10~20円と割高感が強く、導入に伴う庫内オペレーションの変更やシステムの入れ替えなどで付帯コストが発生しているという。

 この関係者は「1製品当たりの価格がよほど高額なアイテムでなければペイできない。現状ではRFIDが投資回収できるステージにあるとは考えにくい」と断言。その上で「ICタグはハンディースキャナーとワンセット。システムのリニューアル、インターフェースなど導入に向けたコストや手間も十分考慮した上で投資計画を検討すべき」と警告する。

 また主に素材、機械など大型貨物を取り扱う物流企業の担当者も「アイテムにもよると思うが、少なくとも荷姿の大きい貨物でRFIDの付加価値は見いだせない。単価が数銭レベルに下がったというのも信じ難い話」と否定的だ。

 別の物流企業の現場責任者は在庫管理にRFIDを取り入れているが、「先行投資と位置付けており、ある程度のキャッシュアウトはやむを得ないとの前提だ。費用対効果も長い目で見ないといけない」との覚悟を示す。

 こうした証言を踏まえるとRFIDは特定の貨物・数量・場所など限定された要件での成果ではなく、サプライチェーン全体における費用対効果をより深く検証していく必要があると推察される。もちろん導入によるさまざまな効果は期待できるが、少なくとも現時点で成果が出たとする評価を額面通り受け取るのは禁物のようだ。

ピッキング作業の安易な自動化に警鐘

 ピッキング作業の自動化に関しては「導入済み」「導入計画中」がともに2.7%、「導入検討」が29.7%と投資に意欲を示したのは3割強にとどまった。JILS統計でも仕分け・ピッキング系機器の売上高は314億円と18.6%減少している。

 単純作業ながらスピードと正確性を求められるピッキングは人への依存・負荷が高いため、作業過程をロボットに置き換えることによって省人化につなげようとする見方も少なくない。だがピッキングロボットを作業負担の軽減だけで導入しようとする風潮を疑問視する声も上がっている。

 ロボット運用に詳しい金融業界関係者は「例えばアパレルなどは店舗によって販売量や売れ筋商品が大きく異なることもある。こうした特性を考えずにピッキングロボットでオペレーションを標準化してしまうと、日々複雑に変動するオーダーへ機動的に対応できなくなる。これにより作業ラインがオーバーフローを起こし、結果として人力に頼らざるを得ないケースも出てくるだろう。ロボットの機能だけにフォーカスするのではなく、需要動向などマーケティング面も加味した上でメリット、デメリットを精査すべき」と技術先行論に警鐘を鳴らす。

 意外なところでは自動搬送車の導入企業が予想以上に低かったことが特筆される。「導入済み」と答えたのは棚搬送型5.4%、台車型18.9%、追従型13.5%。むしろ「当面導入する予定がない・関心がない」と答えた企業の割合が3~5割に上った。

 前出の金融業界関係者は「初期コスト、運用面から見れば最も初歩的なアイテムだが本格導入には至っていない。現状では人が手で動かす従来タイプの方が使い勝手は良いのかもしれない。今は過渡期なのではないか」と分析している。

(鳥羽俊一)

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