ニチレイロジグループで総力挙げる業務革新の全容(前編)

ニチレイロジグループで総力挙げる業務革新の全容(前編)

労働力不足でも「持続可能な低温物流」実現目指す

 ニチレイロジグループ本社は11月15日、東京都内で「第7回ロジスティクス・ソリューションセミナー」を開催した。

 同社の北川倫太郎業務革新推進部長が登壇し、人手不足など厳しい経営環境の中、低温物流を維持・発展させるためにグループを挙げて展開している業務革新を詳しく紹介。会場に集まった顧客企業の現場担当者らに理解と協力を求めた。

 北川部長が言及した改革の全容をロジビズ・オンラインでは3回にわたってリポートする。1回目は業務革新を始めるに至った理由と、具体的な施策の中からまずペーパーレス化など2項目に焦点を当てる。


約250人が参加したセミナー会場

敬遠される冷凍の庫内作業やリーファーコンテナのドレージ

 北川部長はセミナーで、業務改革を進める狙いとして、労働力が減少していく中、「熟練でなくてもできる、ストレスフリーな仕事」と「効率的(省力化)な運営」に移行し、顧客企業のサプライチェーンを支え続ける「持続可能な物流」を実現することを目的に掲げていると説明。

 その背景に、協力運送会社や作業会社の間で冷凍環境下の庫内作業やリーファーコンテナのドレージ、商品のばら積み業務が敬遠され、値上げや業務からの撤退要請も寄せられるなどの厳しい現実があることを紹介した。

 そのため、2016年度より

  • 10年後の革新モデルを策定し、具体的な取り組みを指揮するコントロールタワー的存在の「業務革新推進部」
  • 必要な要素技術の適用・導入などをリードする「技術情報企画部」
  • 具体策を現場で実行し、情報をフィードバックする「事業会社」

――の3者が連携する体制で業務革新を進めていると解説した。

1日で22万5千枚を出力、「紙に仕事をさせられている」環境を打破

 具体策のカテゴリーとして

  • ①ペーパーレス化
  • ②「誰でもできる化」
  • ③無人・省人化
  • ④トラックの待機問題
  • ⑤事務効率化
  • ⑥実験中

――を列挙。併せて、業務革新以外の部分で行っている「持続可能な物流」実現のための施策についても触れた。


セミナー会場で示された改革の全体像

 この中で、①「ペーパーレス化」に関しては、庫内作業でのタブレット端末活用を紹介。北川部長によれば、グループで運営しているWMS(庫内管理システム)「Lixxi(リクシー)」から、旧来は検数表やピッキングリストなどを日々大量にプリントアウトしていた。その量を調べてみたところ、全国で1日当たりA4用紙に換算すると約22万5千枚にも及んでいることが明らかになった。1週間分を積み上げると高さは142メートルになるという。

 北川部長はプリントアウトした書類の整理などに多大なる労力を要したことから「紙代がもったいないという以上に、従業員が紙に仕事をさせられている状況が問題だった」と指摘。そうした状況を打破するため、既存拠点の庫内作業をフルデジタル化するとの目標を掲げて取り組むようになったと経緯を語った。

 17年6月にはタブレット端末による入荷検品のシステムをグループの北海道・石狩DCでスタート。18年には全国で300台を一斉に導入し、現在は29カ所のDCで稼働しているという。
タブレット端末で検数すればすぐに入庫用タグがポータブルのプリンターから出力される。さらに段ボール箱のへこみなどイレギュラーな事態を発見すれば、その現場をタブレット端末で撮影、写真をすぐに事務所へ送信、報告できる仕組みだ。導入効果として、現場の検品作業時間が約3割、事務所でのチェック作業時間は5割以上減らせたという。

 今年5月には新たに庫内のトータルピッキング機能を持たせたシステムをグループの千葉・船橋DCで始めた。18年度中にDCの庫内基本作業を全てタブレット端末から行えるようにする計画だ。

AIが配車担当者の特徴を学んだ“弟子”に

 ②の「誰でもできる化」は、AI(人工知能)を活用した自動配車を取り上げた。これまで利用してきた自動配車のシステムは対象となる車両の台数や走行距離、運転時間で“全体最適”を重視しているため、個々の車両ベースで見ると、遠隔地を行き来させるルートをはじき出すなど、現場のドライバーに受け入れてもらいにくい提案が出ることがあったという。

 そこで、ロジスティクス分野向けの先進技術開発などを手掛けるシーオス(東京)と連携し、AIを活用した自動配車に着手した。配車担当者の過去の配車結果をAIに学習させ、それぞれの担当者の特徴を分析。その結果を基にAIが自動配車をするとの段取りだ。

 北川部長は「配車担当者にとってはいわばAIが自分の弟子のような存在になるので、あまり違和感がない配車となる。それは乗務員にとっても同じ」と効果を説明。現在は10拠点ほどで試験的に導入しているという。

 AIが配車業務を属人的なものから“誰でもできる”作業へ移行させることで、「今まで業務を担ってきたベテランの配車担当者がより付加価値の高い、例えば協力運送会社さんとのコミュニケーション緊密化による車両の安定調達確保といった仕事にシフトできる」(北川部長)と期待されている。

 併せて、IoT(モノのインターネット)を使った運送業務効率化にも挑んでいる。トラックドライバーが持つスマートフォンを介して走行や荷降ろし作業などの時間に関するビッグデータをAIに読み取らせ、より高度な配車につなげる実験を進めている。北川部長らはシステムがうまく稼働すれば、より拘束時間規制を順守できると見込む。

(藤原秀行)

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