「物流を良くするアイデアを新会社に投げつけてほしい」

「物流を良くするアイデアを新会社に投げつけてほしい」

トヨタ・日野・いすゞ共同記者会見詳報(その4・完)

――オールジャパンで取り組むことになるのはとてもいいことだと思うが、具体的なことが少なかった。これからやるということだと思うが、例えば小口配送の効率を上げていくということを考えると、配送業者も巻き込まないといけない。どれくらいの業者が取り組みに関心を持っているのか。一般ユーザーが面白いと思うような具体的なものはあるか。
トヨタ・豊田社長
今日、各社の取締役会で3社が協力して新会社を設立しようということを決めて、こうやって適時開示をしているので、そういう中では今後、具体的なプロジェクトを介して、今おっしゃったような具体的なことを提示していきたいと思う。ぜひともアイデアを新会社にも投げつけていただきたいし、今日は物流関係のメディアの方もおられるので、ぜひとも物流関係の方々が、皆様の記事を介して、このニュースが伝わっていくことにより、ああ自分たちも550万人のうちの1人なんだ、ぜひともこれに参画しよう、ぜひともこのプロジェクトのオーナーシップを実際に使っていただくユーザーの方が(そういう気持ちを)持っていただくような流れに持っていきたいと思っている。われわれ3社、そしてこの合弁会社の動きが遅ければ、これもまた皆さん方が叱咤激励していただいて、もっと早くやれよとか、具体的にやれよというようなコミュニケーションを今後やらせていただくということで、ぜひとも回答に代えさせていただきたい。

――乗用車のトヨタと商業車のいすゞ、日野が組むことによるシナジーを産むのはどれくらい難しいのか。どういう点が難しいのか。商業車のEVについて、トヨタは長年、特に大型車はFCVが一番適していると話していたが、今回その戦略を変えたのか。自動運転トラックが生まれるのはいつごろか。
トヨタ・豊田社長
まずパッセンジャーカー(乗用車)と商業車を、車単体で見ると非常にシナジー効果は難しいというのが、私と日野さんが長年議論をし尽くしてきたところだと思う。ただ、それは車づくりというメーカー目線の話であって、今後やはりCASEというものに立ち向かうとなると、特にオートノマス(自律運転)の分野でもその乗用、商業が混在する中で、どう安全・安心な交通流を作るかということは、やはりインフラと共に考えていかないと、難しいというところに現在はあ突き当たっていると思う。

私どもの例えば、ウーブン・シティは、そういう意味では更地の上に道というものの原単位も決めて、そこに走る車を作るという方法を一つ選んだ。今回この3社でやろうとしているのは、先ほどちょっとお話も出たが、水素をバリューチェーンとか、いろいろ、全国で水素を使ったプロジェクトがあるが、残念ながら今は実証実験レベルが多い。それを今回、この3社が具体的なプロジェクトに落とし込む時はできる限り実証ではなく、実装レベルに持っていく。実際の道で、いかにプラクティカルか、いかにサステナブルかというのをCASE技術に与えて考えていくことができれば、非常にシナジー効果は出てくるんじゃないのかなと思っている。

FCVがベストと言っているのではなくて、われわれトヨタは電動化フルラインアップメーカーだと申し上げている。なぜ電動化フルラインアップメーカーがいいかというふうに申し上げると、まずそれをできる体力があること、そして規制がいろいろと市場の動向を変革させてはいくが、大事なのはやはり市場とお客様がどの電動化メニューを選ぶかということになると思う。なので、どの電動化メニューであっても、やはり、よりプラクティカルで、よりサステナブルに、いろんな補助金が出ているから今はいいですよね、補助金がなくなったらどうなりますかというのは決してサステナブルではないので、実際に使われるユーザーがサステナブルかつ現実的にどのメニューを選ばれるかというのを具体的なプロジェクトを通じて、このメンバーできっかけが作れたら幸いだなと思っている。

社会を良くするエネルギーがものすごく大きい

――3社の連携が社会課題を解決していく中で、どう実装していくか。なぜ競争していた2社が一緒にならなければいけないのか。火がついた形になっている。
いすゞ・片山社長
今ご質問いただいた通りであって、この3社でやっていることが、お客様の目線から、そして社会の目線から見た時に必ず今から乗り越えていかなきゃいけない、自動車会社で言えばCASE、その一方でお客様の産業大改革、例えばDXと言った時に、これを乗り越えていかなきゃいけないわけであって、それをまさに実現できる、商業車としての受けられる器ができるというふうに自分として思っている。

先ほどシナジーの話があったが、まさに今までの、従来の流通、物流、それから商業車メーカーと考えた時に、なかなか乗用車との関係で言った時に、シナジーが難しいというのは先ほどお話があった通りだが、そういったCASEの時代になってDXが本格化した時に、そこに壁があるか?という、もうそういう時代だ。だからまさにシナジーを作ることが目的であって、それだけの、社会を良くするエネルギーはものすごいものがあると思う。実際にトヨタさんで既にイーパレットというものも作られているし、そういうヒントはもう既にいくつも出てきている。それを社会実装していくことによって、さらに最終的には量産していくが、その手前としての社会実装の価値はものすごくある。それがまた、出てくれば新たな、いろんなお客様から、これもやってくれないかとか、これもできるんじゃないかという仲間がどんどん増えてくるというイメージを持っている。

日野・下社長
やはり今リアルな現場で起きているお客様の課題を、今回の3社は大きな一歩を踏み出したと思う。ただ、じゃあ3社が一緒になって全ての課題が解決できるか、もっと言うとわれわれがお客様の持たれている課題を全部知っているかというと、決してそんなことはない。そういう意味では、この1つ動き出したチームに、本当に困られている、いろんな課題を投げていただいて、そしてわれわれも一緒になって考えて解決していく。そのためにはオープンでさまざまな方に共通の課題認識を持って、取り組むチームになっていきたい。

トヨタ・豊田社長
550万人として、私たちは動くという宣言をしたからだと思う。コロナでちょうど昨年の今頃、全てのものが止まり、自粛生活になり、そしてその前から海外はどんどんどんどんロックダウンしていったという世界があった。街を見ても全く人の流れ、車の流れがない。世の中こんなに今までは物流というか、流れていたんだと、それがないだけでこんなに元気を失ってしまうんだというところがあったと思う。

そこで自動車業界が何とか基準を出し、そして何とか復興の原動力になろうと、そして本当に現場の皆さん頑張っていただいた、お客様も好意的にオンラインを介して車を買っていただいた。何とか復興の原動力にはなってきたと思う。そんな中でもやはり、乗用系は乗用だけ、2輪は2輪系、そして大型トラックは大型だけど、そこに550万人、そしてカーボンニュートラルと言った時にOEM(相手先ブランドによる製造)だけでなく、仕入れ先さんも含んだ形でこの国をどうにかしようよ、550万人の自動車業界に関わっている人たちの幸せを考えようと、青臭いようだがそういうことを素直に考えることができた自工会があったと思う。

そんな中でそれぞれの会社が強みを出し合って、何とか今後のグリーンエネルギー政策でも自動車業界を真ん中に入れてくださいと申し上げているのは、自動車という、今回けん引役になった自動車業界をあてにして、そこをベースにいろいろ産業政策なり、言わばグリーンエネルギーの活用も考えていく上でわれわれがモビリティとしてどんどんどんどん提言もしていきたいということなので、そういう意味合いがあり、今ここでコンペティターとか、競争はすればいい、黙っていても競争はするから、競争はすればいい。ただ、協調しながら、その協調もどこかの都合によってらっしゃいじゃなくて、お互いユーザーというもの、そしてその物流が、今この負のスパイラルと言ってしまうのは申し訳ないが、その負のスパイラルが何とか、元気なスパイラルになるように、決してソリューションは、今はないが、何かこのテクノロジー、イノベーション、そしてみんなが得意分野を出すことで、何かできるんじゃないかというふうに思っている。ぜひ応援いただきたい。

(藤原秀行)

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