JLLがリポートで指摘、ファンドが償却負担などの課題解決と推察も
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は4月5日、冷凍・冷蔵倉庫の投資市場に関するリポートを公表した。
国内外の投資家から注目を集めている背景として、海外では一般的なドライ倉庫より2倍近い賃料を収受できるため、潤沢なキャッシュフローを実現し、比較的高い利回りを確保することが可能なことなどがあると分析。日本ではまだ冷凍・冷蔵倉庫への投資が一般的ではないが「逆に言えば今後の伸びしろは極めて大きいと考える投資家がほとんど」と指摘、国内の冷凍・冷蔵倉庫への投資が今後拡大することに期待感をあらわにした。
リポートは冷凍・冷蔵倉庫市場の全容に関し「詳細な調査がないため不明確のところもあるが、首都圏(1都3県)だけで220を超える冷凍・冷蔵倉庫が確認されている」と解説。国内の冷凍・冷蔵倉庫の倉庫面積は欧米・アジアの国々と比較しても極めて限定的との見解を示し、その一例として、国内最大手のニチレイロジグループの持つキャパシティーは500万立方メートルに上るが世界最大手のアメリコールドの18%にすぎないことを挙げた。
また、国内の既存の冷凍・冷蔵倉庫は築年数が経過したものが多い上に、2030年までに現在冷媒として一般的に使われているフロンガスの一種、ハイドロフルオロカーボン(HFC)をほぼ全廃させるよう求められており、建て替えの需要が極めて大きいと考えられていることにも言及した。
「一部の国内投資家においては既に冷凍・冷蔵倉庫の開発に投資するファンドを組成し、マルチテナント型の倉庫として運用を計画している例もある」と明言。冷凍・冷蔵倉庫は温度管理用設備に関し、所有者が投資・運営をしていく必要があり、どうしても償却負担が重くなる点や、マルチテナント型にした場合の所有と利用の分離が一般的なドライ型倉庫のように進むのかどうか不透明との難点・疑問点が存在していると整理した。
その上で「今後増加する冷凍・冷蔵倉庫を頼る荷物の増加や建て替えが進むことで不動産ファンドが開発から入って、こうした諸問題を解決していくという形も考えられる」と推察。「思うように物流施設に投資ができない環境下、国内においては『ブルーオーシャン』ともいえる冷凍・冷蔵倉庫が投資家の耳目を集めるのは必然であり、今後の動向に注目が集まる」と総括した。
(藤原秀行)