CBcloud・松本CEOインタビュー(前編)
荷物とトラックのマッチングサービス「PickGo」を展開するCBcloudの松本隆一代表取締役CEO(最高経営責任者)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。
松本氏はマッチングサービスに登録している軽貨物ドライバーが2万人を超えるなど、配送を担うプラットフォームとしての存在意義が着実に高まっていると強調。平常時に加えて災害発生時も食料を被災地に届けたり、不通になっている道路区間を迂回して荷物を運んだりできる点が評価され、利用が伸びていることを明らかにした。
併せて、マッチングサービスが備えているメリットは災害時に緊急物資の輸送に携わる地方自治体にも訴えていきたいとの姿勢を示した。インタビュー内容を2回に分けて紹介する。
松本氏(2019年撮影)
サイズを限定せず全国各地へ届けられるインフラに成長
――新型コロナウイルスの感染拡大で物流業界も事業環境は決して楽観視できない状況が続いています。御社の事業については2020年からの過去1年間を振り返っていかがでしたか。
「軽貨物で2万人を超えるドライバーの方々が登録いただくなど、運送事業者の方々のご協力のおかげで、BtoBに加えてラストワンマイル配送の中でも最も距離が短いフードデリバリーの部分でも、われわれのマッチングプラットフォームというインフラが貢献できた1年だったと感じています」
――コロナ禍でもドライバーの登録は減らなかった?
「その通りです。昨年の3月以降、4~6月にかけて予想を超える人数のドライバーが登録してくださるなど、規模は拡大し続けています。主たる仕事をお持ちの中で、そのすき間を埋めたいということで登録されている方も多くいらっしゃいますね」
――今後も登録ドライバーは増えそうですか。
「そう思います」
――昨年9月にはマッチングサービスに関し、ドライバーの仕事ぶりに関する評価をより多面的に可視化できる制度「PickGoスコア」に刷新しています。こうした地道な取り組みもマッチングの件数が増えている要因なのでしょうか。
「私たちのサービスが備えている大きな特徴の1つとして、ドライバーさんの運行の正確さや安全さ、顧客対応などの仕事ぶりを荷主の方々に評価していただき、公表している点です。登録している個々のドライバーさんの努力を可視化できるような評価の軸を設け、仕事ぶりがフェアに評価される環境を整備していったことが、ドライバーのサービス品質向上にもつながっていると思います。当社はこうした評価制度を通じて世の中の『届ける』仕事の価値が再認識されれば、ドライバーの地位向上や環境改善にも結び付くと考えています」
PickGoスコアの概要とアプリの評価表示画面イメージ(CBcloud提供)
――コロナ禍でマッチングサービスのメーンとなっているBtoBの荷物に関しては、動きが鈍化したといった声も聞きますが、御社ではいかがですか。
「BtoBはプラットフォームサービスの主軸になっていますので、これまでと同様に利用を伸ばしていきたいと思います。確かに昨年は最初の緊急事態宣言が出た際には荷物量が落ち込みましたが、その後は回復してきています。冒頭にもお話ししたように、20年の成果として軽貨物に限らず、一般貨物もカバーし、荷物のサイズを限定せず全国各地へ届けられるインフラに育ってきたと自負しています。そこで今まで以上に荷主企業の方々に幅広い車両のラインアップを提供できるようになりました。取り扱う荷物はより増えていくのではないかと期待しています」
――BtoBで最近取り扱いが増えている荷物はありますか。
「現時点で突出しているものはありませんが、やはりコロナ禍の影響で今後は医療関連、ワクチンなどでマッチングの需要が高まるのではないかと予想しています」
――医薬品やワクチンなどが増えてくるとなると、低温倉庫など、運送事業者に求められる設備投資を御社がある程度サポートしていくことが必要になるのでは?
「現時点でわれわれが倉庫を構えるといった計画はありませんが、われわれのマッチングプラットフォームの中では当然、冷凍・冷蔵車両も多く存在していますので、運送事業者の方々の協力得ながら低温配送を実現していきたい。現状でも食品関連の配送は結構多く取り扱っています」
――御社のマッチングサービスはどうしてもスポットや緊急の案件が多いというイメージが強いのですが、そこが入り口になって荷主側がずっと定期的にサービスを使うようになるパターンもあるのでしょうか。
「おっしゃる通り、マッチングプラットフォームはスポット利用の印象が強いですが、実際には最初に使っていただいたユーザーがリピートされるケースが結構多いんです。荷主サイドとしても運送事業者1社だけが定常的な物流を担うのはBCP(事業継続計画)の観点からリスクがありますから、そうしたリスクをヘッジする観点でも、定常的な配送を当社のプラットフォームにお願いされるケースもあります」
サービス開始当初からの24時間体制が災害時にもフィット
――BCPの観点で言えば、災害時に緊急物資などを運んでほしいというニーズが増えるのでは?
「確かにそうですね。台風などの被害が発生した時、以前はカップラーメンなどの非常食を一般貨物で運ばせていただいたりしました。企業の皆様は当社が緊急時に車両を多く手配できるということをご存じですし、災害時に当社のプラットフォームが一定程度活躍できているとは思いますが、特に地方自治体の間ではまだまだ認知が進んでいないと感じることはありますね」
――地方自治体にそうした緊急時の利用を働き掛けていきますか。
「そこは私たちも取り組んでいきたいところです。災害時にお役に立てるということは、先ほどもお話ししたように、私たちが目指している、ドライバーの価値がより広く認知されることにつながります」
「当社のマッチングプラットフォームはそもそも、サービス開始からずっとオペレーションを担うスタッフが交代で任務に当たっています。荷主からは夜間にも配送してほしいとの連絡が、特に食品などの領域では寄せられますから24時間体制で臨んでいます。そうした体制の特徴が災害時にもうまくフィットしているのではないでしょうか」
――災害対応の面で新たに取り組まれていることはありますか。
「災害対応を強く意識しているというわけではないのですが、JAL(日本航空)さんやANA(全日本空輸)さんと連携し、空陸一貫輸送サービスを展開できている点は有効だと思います。災害時は緊急度が高いので、より早く届けられるインフラは価値が高いでしょうね」
(後編に続く・4月9日配信予定)
(藤原秀行)