コロナ禍で供給網混乱受け物流施設の最適配置など支援、アジアや欧米の拠点とも連携
不動産関連サービス大手のJLL(ジョーンズ ラング ラサール)は、物流施設(ロジスティクス)部門への対応を強化している。日本法人では売買仲介部門でロジスティクスの資産専門チームを立ち上げるなど、優良な物流施設に投資したいニーズにより的確かつ迅速に応えられるよう努めている。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で製造業の原材料調達が混乱するなど影響を受けていることを踏まえ、物流施設の最適な配置など効率的なサプライチェーン構築を支援する「サプライチェーンコンサルティング」に注力。JLLがアジアや欧米で展開している他の拠点とも連携し、グローバル規模で日系企業や外資系企業の要望に対応できるよう事業基盤を拡充している。
JLLは物流施設に関し、コロナ禍に伴うeコマースの利用増加などで今後も需要が見込めると判断。オフィスビルやマンション、商業施設といった伝統的なアセットと並ぶ位置付けで、物流施設のリーシングや売買仲介の経験を持つ人材の積極的な採用などを継続する構えだ。
ネット通販開始にも対応
JLLの日本法人は近年、物流施設の開発適地紹介やリーシング、不動産鑑定などの領域で人員を拡充。開発案件のプロジェクトマネジメント(PM)もロジスティクスの専門担当を配置、受託資産規模を順調に伸ばしているという。
また、賃貸物流施設の市場調査にも力を入れており、これまで手掛けてきている東京圏や関西圏に加え、新たに中京圏のカバーを本格的に始めた。大規模なマルチテナント型物流施設の空室率や賃料の動向をよりきめ細かくフォローし、事業機会を捉えられるよう目配りしている。
JLL日本法人では20年に大阪市の関西支社で物流の専門家を配置するなど、関西の大阪湾岸部と内陸部の双方で需要が高まっている先進的物流施設の情報を迅速に顧客へ提供可能な体制を構築。今年4月には福岡オフィスを「福岡支社」に格上げし、不動産関連サービスをより広範に提供できるようにしている。九州エリアでも福岡を中心に物流施設のニーズが伸びていることに対応する狙いもある。
JLL日本法人の河西利信社長は「ロジスティクスの不動産マーケットは継続的に成長している。当社でもリーシングや売買仲介といったコアな領域に加え、他の事業部門でもロジスティクスに関係する分野でより体制を整備していきたい」と意気込む。
数多くのサービスメニューの中で注目度が高まっているサプライチェーンコンサルティングに関しては「コロナ禍でサプライチェーンの再構築をお考えのお客様が多い。例えば実店舗を中心にサプライチェーンを展開されてきたのが、並行してインターネット販売を広げられる中で当社にご相談いただくケースも増えている」と指摘。日本国内にとどまらずアジアなど海外で物流施設をどのように配置するかといった点でも実践的なアドバイスが可能と自信を見せている。
JLLではシンガポールにアジア全体の事業を統括する本部機能を配置しており、日本など各国のロジスティクス担当チームが連携する体制の整備がここ1年ほどで進んだ。河西社長は「他のアセットクラスと同じような組織体制が実現している」と強調。日本に進出する外資系企業に最適な物流施設を提案するなど、各国のチームが連携してサプライチェーン強化をアドバイス、成果を挙げているという。今後はJLL以外の物流コンサルティング企業との連携拡大も視野に入ってきそうだ。
(藤原秀行)