CBREテナント企業意識調査、荷主も5割に到達
シービーアールイー(CBRE)は6月15日、物流施設利用に関するテナント企業の意識調査結果を公表した。
今後3年間の事業環境は新型コロナウイルスの感染拡大による経済情勢悪化から一定の好転を予想する企業が過半を占めた。こうした状況もあってか、今後3年間に倉庫の総面積が増えると計画している物流企業は8割、荷主企業は5割に到達。物流拠点の拡張意欲が行き続き強いことが浮き彫りになった。
調査は今年3月16~26日、自社・賃貸を問わず国内で物流施設を利用している企業を対象に実施、全国の239社から有効回答を得た。内訳は物流企業170社、荷主企業69社。
EC利用拡大やオムニチャネル化が需要押し上げか
今後3年間の事業環境を尋ねたところ、「大幅に改善する」が8%、「ある程度改善する」が56%で合わせて64%に上った。「変わらない」は19%、「ある程度悪化する」は15%、「著しく悪化する」は1%だった。
今後3年間の物流拠点の計画については、倉庫の総面積は拡大と答えたのが物流企業で計82%、荷主企業は55%。拠点数も物流企業が69%、荷主企業が40%になった。特に物流企業は、倉庫の総面積が減少するとみる向きはゼロ、拠点数も計4%にとどまり、旺盛な拡張意欲が見てとれた。
(CBREリポートより引用)
倉庫の総面積や拠点数が拡大すると予想した各企業に理由を確認した結果では(複数回答)、「荷物量の拡大(見込み含む)」が62%でダントツのトップ。「新設備やシステムの導入・見直し」(38%)、「建物・設備の老朽化、使いにくさ」(31%)、「コストの削減」(23%)などと続いた。CBREはEC利用の拡大に加え、オムニチャネル化が進んでいることも物流拠点の需要の背景にあるとみている。
拠点戦略でどのようなエリアやタイプの倉庫を想定しているか聞くと、「大都市圏に隣接する衛星都市の物流センター」が23%で最多となり、「出荷側の仕分け倉庫」(21%)や「都心型物流センター」(20%)を上回った。CBREは大都市圏の外型いも一定のニーズがあるとの見解を示している。
今後の倉庫の仕様に関する要件の変化を予想してもらったところ、ニーズや必要性が大きくなる・増えると想定している比率が最も大きかったのが「空調付き施設の需要」で66%となった。他には「非常用電源」(65%)、「持続可能な施設(環境性能、グリーンビルディング)」(49%)、「冷凍冷蔵スペースの需要」(42%)などが目立った。就労環境改善やBCP(事業継続計画)、環境対策がより重視されていくとみる企業が多いことを示唆した。
(CBREリポートより引用)
今後3年間の物流コストの見通しをめぐっては、「建物(不動産)コスト」が今よりも上がると予想する企業が60%で、昨年の調査時の47%から13ポイント上昇。「輸送・配送費」が昨年から10ポイント下がって78%、「人件費」も8ポイント下がって87%となったのとは対照的な動きを見せた。
今後3年間で優先・重視する施策としては、「機械化・自動化設備の導入」、「新規の物流拠点開設、面積の拡大・拡張」が多かった。CBREは「面積を拡張しながらも効率化投資も緩めないという物流業界の需要の背景にある2つの潮流がうかがえる」と指摘している。
テクノロジーの利用では、AGV(無人搬送ロボット)やIoT(RFIDタグ、各種センサー)、配送プロセス追跡のブロックチェーンなどが現状より3年後に導入が進んでいると展望する企業が多かった。
(藤原秀行)