有機半導体フィルムデバイス活用、データはクラウド上で共有
三井不動産は7月1日、東京大発で有機半導体技術の商用化に取り組むベンチャーのパイクリスタルと、日本初の技術である「有機半導体フィルムデバイス」を用いた長距離物流過程の温度・振動を継続的に観測する実証実験を、今年4、5月に千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」で実施したと発表した。
実験で輸送したのは三崎漁港(神奈川県三浦市)~柏市公設市場~柏の葉スマートシティ内飲食店の計約120キロメートル。魚の切り身の真空パック内へ温度トレースタグを封入、魚自体の温度を計測した。複数の情報を1つの薄型・軽量なフィルムデバイスに搭載しデータを継続的に取得するとともに、集まったデータをクラウド上で共有できるトレースシステムの開発に成功した。
トレースシステムを活用することで、コロナウイルスワクチンをはじめとする医療分野や薬品輸送の適正な流通に関する国際的基準GDPへの対応、鮮魚など生鮮食品のHACCP・ISO22000対応など、今後さらに強化が必要となる物流品質の保証や品質改善の提案に向け、有益なデータの供給が可能になると見込む。化学品や海外物流といった様々な分野において安心・安全な物流サービスの実現を図る。
過去の実証実験(2020年6月~2021年2月)では、柏の魚市場から柏の葉スマートシティ内のレストランやスーパーマーケットまでの生鮮食品の物流過程に加え、一般冷蔵品と医薬品物流を対象に、長距離輸送時の実証実験を実施した。今回は三崎漁港(神奈川県三浦市)から柏の葉スマートシティまでの約120キロメートルに及ぶ長距離で、鮮魚輸送の温度計測を行ったことにより、三井不動産とパイクリスタルは物流チェーン全体の温度管理が可能になったとみている。
物流トレースシステムのイメージ(三井不動産提供)
(藤原秀行)