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【独自取材】サントリーロジスティクス、今秋からフォークリフトの安全運転評価にAIを本格導入へ

【独自取材】サントリーロジスティクス、今秋からフォークリフトの安全運転評価にAIを本格導入へ

ドライブレコーダーの画像分析に活用し作業時間大幅短縮、内容均一化も

サントリーグループで物流機能を担うサントリーロジスティクスは、今年秋から物流拠点内でフォークリフトのオペレーターが安全に運転できているかどうかを判定、指導する業務でAIを本格的に活用する方針だ。

同社はフォークリフトに取り付けたドライブレコーダーで撮影した画像を定期的にチェックし、走行中に荷物を乗せた爪を上下させるなどの危険な運転を確実に検知。オペレーターにフィードバックして安全運転の技術向上を図っている。

これまでは物流現場の安全向上策を担当する社長直轄の専任部署「安全推進部」の担当者が、約200台のフォークリフトのドライブレコーダー画像を全て肉眼でチェックしていたため、作業が長時間に及び負荷が非常に大きかった。AIを使うことで確認時間を大幅に短縮できる見通しだ。安全評価を均一化できる効果も見込まれ、同社は安全運転をより徹底していけると期待を込めている。


サントリーロジスティクスの現場で稼働しているフォークリフト(埼玉県三郷市のサントリー三郷配送センター)


フォークリフトに取り付けているドライブレコーダー

危険運転の箇所はゆっくり再生し注意喚起

ドライブレコーダーは運転席の上部から360度周辺を撮影できるタイプで、スピードを出し過ぎていないかどうかなどをチェックできるようにしている。同社は2019年から春と秋の2回、全てのフォークリフトの運転内容をドライブレコーダーの映像から分析・確認し、オペレーター全員分の安全性を評価。問題点を改善するよう指導している。

サントリーロジスティクスの武藤多賀志社長は「当初は従業員から常に監視されているような気がする、といったネガティブな意見も聞かれたが、徐々に受け入れられてきた。われわれが何を求めているのか、オペレーターの皆さんに理解してもらえるようになり、拠点内の安全に対する意識も変わってきた」と語る。21年春には評価が相対的に低いC、Dランクのオペレーターがゼロになるなど、取り組みの成果は着実に挙がっている。

ただ、全ての動画を人の目でチェックしているため、1回当たり延べ500時間程度を要していた。長時間作業を続けていると疲れが蓄積してどうしても集中力の低下が避けられず、危険な運転を見落とすリスクがあった。担当者間で安全評価にばらつきが出ないようにする工夫も不可欠だった。

そこで、同社は富士通グループで企業向けにAIを使ったソリューションの開発などを手掛けている富士通クラウドテクノロジーズと連携。同社がAIでドライブレコーダー映像を解析、危険運転の有無を自動判定するシステムを開発した。

新システムはAIがドライブレコーダーの映像から「①フォークリフトの走行状態(走行中、旋回中、停止中)」「②オペレーターの乗車状態(乗車中、下車中)」「③爪の昇降位置の状態(操作中、停止中)」――の3つの状態を把握。

それぞれの組み合わせから、特に気を付けるべき項目として走行中に荷物を乗せた爪を上下させるなどの「ながら操作」、爪に乗せた荷物が止まっているかどうかを十分見極めていない「静止確認不足」、一時停止すべき場所で順守していない「一時停止確認不足」の3点を自動的に検知できるよう設定している。

AIが解析した後の映像を再生すると、ながら操作などが起きる数秒前に、画面上に危険運転の種類を表示し、見ている人に注意を促す。また、安全運転している部分は早く、危険運転とみなされる部分はゆっくり、というように再生スピードを自動的に変え、より効率的に確認できるよう配慮している。

さらに、画面上部にはオペレーターが運転している総時間のうち、安全運転している時間の割合を示す「安全係数」を表示。各オペレーターがどの程度安全運転できているかを視覚的にすぐ理解できるよう工夫している。


危険運転検知の方法


AIで解析後の画像イメージ(いずれも富士通プレスリリースより引用)

日常的な活用を視野に

今年4月以降、技術検証を進めた結果、フォークリフトの安全運転評価に要する時間を約50%短縮できる見通しとなった。今年秋の評価に新システムを本格的に使う方向で準備を進めている。各オペレーターの最終的な評価は引き続き安全推進部の担当者が映像から判断し、AIはその補助的な位置付けとする予定。

サントリーロジスティクスの小玉光志安全推進部長は「動画を最初から最後まで凝視し続ける必要がなくなり、担当者の精神的、身体的な負荷がかなり軽減される。オペレーターの皆さんに対しても、AIによる第三者的評価を活用して指導できるので、より説得力があるのではないか」と指摘する。

新システムはクラウドベースで運用し、解析したい動画をアップロードすると、元の動画の約4倍の時間で解析が完了する。将来はその時間を2倍程度まで縮められるよう、富士通側とも引き続きシステムの機能向上で連携する方針だ。

今後は春と秋だけでなく、各物流拠点で日ごろから安全運転指導に使えるようにすることを視野に入れている。ドライブレコーダーの映像を基に、フォークリフトを運転している際、リアルタイムで危険運転を検知するとアラームでオペレーターに通知する機能の追加なども検討しているという。

サントリーロジスティクスと連携して現場の安全性向上を手掛けているサントリーMONOZUKURIエキスパートSCM本部の中村繁物流部長は「物流パートナー企業の方々からもシステムに関して問い合わせを頂戴している。ぜひお使いいただき、安全性をさらに高めていけるようにしたい」と強調している。


(左から)小玉部長、武藤社長、中村部長

(藤原秀行)

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